【R18】復讐の魔王は転生を重ね、女勇者に挑む。第1章~女騎士の誇りは濡れて~

異常那鬼

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第38話~闘技~

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 蒼魔族の里のほぼ中央に位置する広場。そこを囲むように、老若男女を問わず、全てのミスリル族が集っていた。
 その広場の中央には、二人の影があった。一人は、この村の長であり、蒼魔族全てを統べる立場にいるミスラだ。対峙するのは、同じ蒼魔族の中でも、最も力が強いと言われるアダマン族の長、アダモンだった。薄緑の肌をした屈強な身体は、ミスラよりも頭三つ分は高く。その厚みは三倍はあった。その男の手には巨大なハンマー握られていた。対するミスラの手にあるのは、仄かに輝く小ぶりのナイフだった。

 北の大地に住む魔族にとって、強い者が上に立つのは当たり前のことだ。長の強さこそが、その種族の地位を表した。そこで、魔族達の中にできた習慣が闘技だ。一対一の闘いで、どちらかが死ぬ、もしくは降参するまで続けられる。

「ハッハーッ! ミスラ。魔王の後ろ盾を失ったお前を叩きのめすのは忍びねえが、これも全ては蒼魔四種族の為だ。怪我しねえうちに、降参しな。お前の綺麗な肌に傷はつけたくねえからな」
「相変わらず、口だけは達者だね。言っておくけど、あんたはこれまで、一度も私に勝っちゃいないんだよ」
「う、うるせー。女相手だから、手加減してやってたんだ。俺はな、美人には弱いんだよ! いいか、この勝負に俺が勝ったら、お前も魔王の事なんか忘れやがれ、そして、その、俺の配下になるんだ」
「御託はいいから、さっさとかかってきな!」

 広場を見下ろせる高い場所に、アンジェと魔王蛇、そしてタルスはいた。人間である二人が、近くで闘いを見ることはできないからだ。アンジェの唱えた《遠視》の魔法により、闘いの様子が空間に映し出されている。

「気のせいですかね。アダマン族の族長って、もしかして……」
「ああ、気づいたか。あいつは昔からミスラの事が好きなのだ」
「こんな事言うのって、変かもしれませんけど。なんか、可愛い」
「蒼魔族は、わりとこんな感じだ」

 アンジェはほんの短い時間だが、この蒼魔の里に来て、接した魔族が皆、素直で真っすぐな性格だと感じていた。中央教会やメリダ法国の中での権力闘争の一端を見たことがあるアンジェだが、人間よりも魔族のほうが、よほど人間らしいのではないかと思い始めていた。

 それは、タルスも同様だった。ピエタの村では、リスタルト王国の求めで、早く大量に武器を作ることを強いられていた。鍛冶屋として、少しでも良いモノを作るのは当然だ。しかし、傲慢な騎士達は、お礼も言わず当たり前のようにタルスの作ったものを持ち去った。それに比べると、魔族達は違った。

 最初こそ、殺されるほどの敵意を向けられたが、自分が作ったものを与えると、彼らの表情は一変し、尊敬の眼差しに変わった。何というか、人間と違い偏見が少なく、根が素直なのだ。それは、始めてミスティに会った時に感じた気持ちと一緒だった。

「だ、大丈夫ですかね。あんなに体格の差もあるのに」

 不安そうにタルスが尋ねる。タルスにとっては、ミスラはミスティの姉なのだ。

「始まるぞ」

 闘技場では、アダモンがハンマーを後ろに構え、力を溜めていた。

「アダマン族の強さ、思い知らせてやるよ!」

 見た目に反する敏捷さで、アダモンが跳ねた。ミスラの頭上に巨大なハンマー打ち下ろす。轟音と共に土煙が立ち、地面がへこんだ。その窪みの真横に、ミスラは整然と立っていた。

「どうした? 本気で狙ってこい」
「う、うるせえ! 挨拶代わりだ」

 地面にくいこんだハンマーを軽々と抜くと、そのまま横に払う。ミスラが跳躍してそれを躱し、距離を取る。その動き一つで、アダマンはミスラが失った力を何らかの方法で取り戻していることにきづいた。

「魔法は使わせねえぞ!」

 アダモンはハンマーを振りながら距離を詰める。絶え間ない攻撃で、魔法を使う隙を与えさせない為だ。

「速い!」
「遅いな」

 アンジェの驚きと魔王の呟きが重なる。アダモンが近づく前に、ミスラは既に魔法を唱え終っていた。ナイフが輝きを帯びる。豪快なハンマーの一撃に向かってミスラはナイフを突き出した。

「なっ、なんだと!」

 アダモンが驚くのも無理はない。巨大なハンマーの一撃が小さなナイフの先端で受け止められていた。

「なんですかあれ!」

 映像を見ていたアンジェが魔王蛇に問う。
「高位魔法の一つ《高振動》だ」

 《高振動》は魔王も得意とする《振動》の魔法の高位バージョンだ。その振動は空気さえ振動させ、力場を発生させる。だが、その威力の強さゆえ、普通の武器では耐えられずに壊れてしまう。堅さと柔軟さを合わせもつミスリル銀のナイフだからこそ、使える魔法だった。

 振動を帯びたミスリル製のナイフが、アダモンのハンマーを弾き返す。

「さすがだな、ミスラ。だが、この武器と鎧は、蒼魔四氏族の中でも最もかてえアダマンタイト製だ。魔法耐性も半端ねえ。そんなちっぽけなナイフの攻撃が効くと思うか!」

 アダモンは再度飛びかかる。その攻撃を躱したミスラのナイフが、鎧の隙間を突く。

「だから、効かね……はぎゃっ! ぬわぁぁぁ!」

 アダモンの身体が震え、ハンマーがその手から落ちる。

「いくら鎧が堅くても、この振動は直接中身に届くんだよ!」

 アダモンは身体をビクビクと痙攣させると、口から泡を吹いて倒れた。


                   
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