陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

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プロローグ 勇者召喚

第十七話 一ヶ月と成長と

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 結局あの後、また颯太が横槍を入れなければ、綾乃とエリザベスは夜が明けるまで話し続けていたであろう。
 それ程二人は夢中になって話をしていたのだ。
 その間置いてけぼりの男達はただの空気の如く、その場に佇むことしか出来ず、颯太が進言した事でやっと金縛り状態から解放されたのだが、イヴァンとエリザベスに別れを告げて部屋に戻る際、周りの人達にバレないように行動するなど、今日一日で色々気を遣うことが多く、それぞの部屋に帰り着いた時にはもうヘトヘトだった。
 こんな感じで異世界生活は、一日でとても大変なものになった。




~~

 そんな日々が続き、気付いた時にはもう一ヶ月が経っていた。
 その間に颯太の魔法は凄まじい成長を遂げ、今ではイヴァンにも引けを取らないものとなった。
 しかも、魔力をある程度操作出来るようになってから分かった事だが、颯太は基本十二属性全てを扱えるのだ。
 それぞれに得意も不得意もなく、全てだ。
 これを知った時のイヴァンの反応といったら、いい歳した大人が柄にもなく本人以上に興奮してしまい、颯太に物理的ツッコみを貰っていた。

「あの時の師匠は、正直気持ち悪かったですよ」
「いやぁ…今思い出してもお恥ずかしい…」

 今日も颯太は、イヴァンの研究室で魔力制御の修行を行っていた。
 もう完璧と言っても過言ではない程の出来栄えだが本人は現状では満足せず、ほとんどの属性で上級魔法どころか神級しんきゅう魔法を扱えるようになった今でもずっと続けている。

 この一ヶ月で色々な出来事があった。
 戦闘訓練が始まった三日後には、宮廷魔術師長であるイヴァンの魔法の授業が始まったり、その裏で国の重鎮達が画作していたり、それを聞いていた颯太がそのまた裏で暗躍したりと、ここまで濃厚な一ヶ月間は普通に高校生をしているだけでは、なかなか味わえないだろうと言えるものだ。
 他のクラスメイト達も颯太程ではないが、初級魔法、早いものでは中級魔法を扱える者が増えてきた。
 颯太は目立たないように、クラスメイト達の前では風属性の初級魔法しか使わなかった。
 政人は魔法が苦手なようで、いつも授業が終わると颯太に教えを乞うてくる。
 今日も例に漏れない日だったが、先にイヴァンの研究室で修行をする予定だったので、どうにか振り切ってきたのだった。
 イヴァンは政人が一緒でも構わないと言っていたが、人が多いと目立つ為、イヴァンに教わった事を颯太が政人に教えるようにしている。
 異世界人同士の方が伝えやすいのだ。

「ソウタ君、今どのくらいまで出来るんだい?」

 これはそれぞれの属性の扱える階級を訊ねているのだ。
 颯太はその意図を素早く読み取って答える。

「折角全属性を扱えるから、偏らないように均等に練習してます。だから光属性と闇属性以外なら神級ですね」
「…さ、流石だね…では光と闇は上級までかい?」
「今の所は。でも後少しで習得すると思います」
「……私の弟子がどんどん人外への道を突っ走ってる……」
「失礼な」

 とは言ったものの、颯太自身も自分がこの世界ではありえない方向に突き進んでいることを自覚していた。
 修行を終えて部屋に戻ってから、確認も含めて久々にステータスを開く事にした。
 周りには誰も居ないが、念の為人に見られないように所有者だけが見られる【ステータス】を使う。

「【ステータス】」

 現在の颯太のステータスは次の通りである。


***************************************

【ソウタ・タチバナ】 Lv.1

種族:人族
職業:剣士Lv.2(剣聖Lv.35 大賢者Lv.29 武神Lv.41 神子Lv.18)

魔力量:300(35000)
魔力強度:150(10000)

スキル

 剣術 体術 鑑定 (槍術 棒術 弓術 隠密 投擲 生命術 全属性魔法 手加減 物理攻撃耐性 魔法攻撃耐性 気配感知 魔力感知 見切 隠蔽 裁縫 薬草調合 神託 世界辞書 世界地図)

ユニークスキル

 退魔の光 (神の剣)

加護

 なし (七大神の加護)

称号

 異世界人 (大賢者 創造神の友 神々に愛されし者 人類最強)

***************************************


 スキルと称号がいくつか増えている。
 以前ステータスを確認した時、前から気になっていたものとそれらを纏めて鑑定してみると、


***************************************

【全属性魔法】

 火、水、木、風、土、雷、毒、氷、聖、光、闇、無の全ての属性を神級魔法まで扱える。

【魔法攻撃耐性】

 魔法による攻撃で受けるダメージを減らす。物理攻撃耐性と同じく、所有者のレベルが上がるごとに減らされるダメージも増える。

【神託】

 神々の声を聞くことが出来る。神々の方から話しかけてもらう事が多いが、教会へ行き祈りを捧げれば時々答えて頂ける。

世界辞書ワールドディクショナリ

 世界に存在する全てのものを調べる事が出来る。所有者のレベルによっては調べられないものもある。進化するスキル。

世界地図ワールドマップ

 世界の地図。所有者の現在位置の表示や目的地までのナビなどが出来る優れ物。進化するスキル。

【大賢者】

 十種類以上の属性の神級魔法を習得した者に与えられる称号。神級魔法使用時の消費魔力量を大幅に減らす。

【創造神の友】

 創造神ゼノスから直々に認められた者に贈られる称号。教会で祈りを捧げ、〈神託〉スキルを使用した時に創造神が答えてくれる可能性大。

【神々に愛されし者】

 多くの神から加護を頂いた者に贈られる称号。この称号を贈られた者はいつも神々から見守られている。

【人類最強】

 人類の中で最も力を持つ者に贈られる称号。現在の所有者以上に力を持つ者が現れた場合はこの称号は消える。

***************************************


 鑑定してみて思ったことは唯一ただひとつ

(ヤバいわ)

 思わず口調が関西弁っぽくなってしまう程だった。
 だが颯太はすぐに冷静さを取り戻して、改めて鑑定内容を読み返す。

(ゼノスに言われてたからショックはそれ程ないけど…ヤバいよな?これは)

 見れば見る程自分が規格外である事を思い知らされる。
 レベルは上がらないのにスキルや称号が増えていく。
 ちょっと怖い。
 イヴァン曰く、レベルは魔物を倒したりしない限り上がらないらしい。
 こういう所は元の世界のゲームと同じなんだな、と思った。
 しかし不安なのは、現状で【人類最強】の称号を得てしまっている自分がレベルを上げて大丈夫なのか、という点だった。
 ゼノス曰く、ステータスじゃなく純粋な戦闘能力重視で優劣を決めた結果、颯太が現在の人類最強格であるとの事だ。
 つまりはステータスでは自分を上回る者が存在しているが、そればかりに固執するあまり戦闘能力ではレベル1の颯太に劣ってしまっている。
 それがこの世界の現状だそうだ。
 この状態でレベルでも颯太がこの世界の人間を上回ると、いよいよ彼に敵う相手なぞ存在しないことになる。
 そんな事ではこの世界のパワーバランスを崩してしまうのでは?と颯太は考えたのだ。
 しかしゼノスはそんな颯太の心配を笑い飛ばした。

『大丈夫大丈夫。それは仕方ない事だから、ソウタ君が気にする必要はないよ。寧ろ君に触発されて、この世界のレベルが上がっていくと私は思うけど?』

 是非そうであって欲しい。
 颯太は心の片隅で密かに願った。

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