陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

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閑話

閑話 俺は勇者②

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 俺の名前は有本ありもと良輔りょうすけ
 少し前までは何の力も持たないただの高校生だったが、今やレイドナルク王国に召喚された勇者だ。
 そんな俺はこの世界に来てから初めての訓練で、どういうわけか同じ勇者仲間である一宮さんと江川にフルボッコにされた。
 二人共それぞれ剣道部と空手部のエースで、運動神経良いから強いだろうなぁとは思ってたけど強すぎた。
 一宮さんと手合わせ出来ると思ったら嬉しすぎて、自分が何を言ったかなんて覚えてないけど、とにかく怒らせてしまったらしい。
 目が覚めたのは、城の医務室のベッドの上だった。

「お前、何やったの?」

 目が覚めた時、英二に聞かれた。
 俺が首を傾げて「分からん」と答えたら、英二も康生も呆れたように溜息をついた。

「分からんじゃないだろ。明らかにあの二人怒ってぞ」
「え」
「大激怒だったな」
「えっ」
「止めてくれたのジョンさんだけど、止めるって言うより、二人を気絶させて強制的に戦闘不能にしてたし」
「あの人居なかったらお前死んでたな」
「……」

 口々に事実を述べ、ちゃんと思い出すように促してくる二人。
 ウンウン唸って漸く思い出したのは、「立花」について何か言った、という事だけだった。
 すると二人はつきものが落ちたような顔で良輔を暫く凝視して、顔を見合わせたかと思うとまた同時に溜息をついた。

「な、何だ?その反応」
「立花って、もしかしなくてもさっきのあいつだろ?」
「うちのクラス、他に立花って名字の奴いないしな」

 俺の事そっちのけで話を進めていく。
 疎外感がハンパなく、俺は話に置いていかれないよう、慌てて二人に説明を求める。

「何だよ?どういう事だよ?」
「立花は、一宮さん達の幼馴染みで親友らしいぞ。あの二人と同中のA組の遠藤に聞いた」
「俺も空手部に聞いたけど、あの三人めっちゃ仲良しで、武道系の部活が練習してる武道場に立花来た時の二人の反応は、一種の名物になってるって」

 一宮さんと江川を怒らせてボコボコにされたので、それなりに酷い事を言ったんだろうと想像は出来た。
 けど…

「…俺、何言ったんだろ…」

 肝心な部分がさっぱり思い出せない。
 どうしよう。

「「いや、それを思い出せっての」」

 二人から同時にツッコまれる。
 思い出せって言われても、マジで出来ないから困ってんのに!
 俺は思い切ってベッドから抜け出した。

「お?思い出したのか?」

 康生が俺の顔を覗き込んでくる。
 そのニヤニヤ顔がウザったくて、思わず押し退けてドアノブに手をかけてから振り向きざまに言った。

「取り敢えず、分かんないけど謝ってくる。こういうのは早めの方が良いんだろ?」
「…お前分かってない事謝んのか?」

 英二が驚いて目を丸くし訊いてきた。
 何に驚いてるのかさっぱり分からないが、軽く頷いて医務室を後にした。

「よく分かんないけど取り敢えずごめんっていうの…更に悪い気がするのは俺だけか?」
「いや、俺も……生きて帰ってこられるかな、良輔」

 ___その後二人の間でこんな会話がされ、無事を祈って静かに敬礼されていたことは、勿論良輔の知るところではなかった。




「一宮さん!」

 医務室を出た後、俺は二人に謝罪する為に城中を駆け回って、漸く中庭近くの廊下を通って自室へ戻ろうとしていた一宮さんと江川を見つけた。
 楽しそうに談笑していた二人は振り返って、明らかに顔を曇らせた。

 やっぱりまだ怒ってるよな…。

「…何?」

 ひどく冷たい言葉を浴びせてくる一宮さん。
 江川も黙っているが、俺に対する怒りは伝わってくる。

「えっ、と…模擬戦の時、何か気に触ること言ったみたいで…その…ごめん!」

 勢いよく頭を下げる。

 取り敢えず謝れたし、これで良かったよな?
 …何か言われる前に頭を上げるのもなんだし、声がかかるまで待っているけど、長すぎない?
 そろそろこの体制キツくなって…

「何が?」
「えっ?」

 予想外の返答に、俺は思わず顔を上げ間抜けな声を出してしまった。
 目の前には未だ怒気を含んだ視線をぶつける二人の顔。
 もう気にしていないって感じじゃない。
 訳が分からなくて固まっていると、一宮さんは興味をなくしたように俺から視線を外すと、江川の肩を叩いて先へ行こうと促す。
 江川も軽く頷いて俺から視線を外した。
 先を急ごうとする二人を止めようとした俺の言葉は、誰かが後ろから江川を呼ぶ声に遮られた。

「待っ「大輝!」?」

 驚いて振り返ると、廊下の奥から小走りで走ってくる人影が見えた。

 俺達と同じ日本人特有の黒髪に黒く大きい瞳、俺より少し低めで一宮さんと同じ位の身長、華奢な体躯、さっき聞こえた少し高めの中性的な声…こんな女子、うちのクラスに居たっけ?

 その子は俺の脇を素通りして、江川の側へ駆け寄った。

「これ、俺の部屋に忘れてたぞ。気をつけろよな」

 そう言って水色のハンカチを江川に差し出す。

 この子、江川の彼女か?
 羨まし……ん?「俺」?
 よく見るとズボン履いてるし…えっ?男?

「あ!悪ぃ颯太、サンキュ」
「次忘れても届けねぇからな?」
「気をつける」

 傍目には美男と美少女のイチャつきにしか見えねぇけど……もしかして僕っ子ならぬ「俺っ子」なのか?

 俺は混乱していて、「そうた」と呼ばれた目の前の美少女(?)の登場で一宮さんが顔を輝かせていた事に気が付かなかった。

「ねえ颯太、良かったらこのまま私の部屋に遊びに来ない?」
「「え?」」

 つい俺も反応してしまった。

 女の子の…一宮さんの部屋、だと?
 そんな秘密の花園への招待なんて、羨ましすぎるだろ!

 この子もオーケーするのかな、と思ったらさっきまでの俺の疑問を解決してくれる一言が飛んだ。

「いや、行くとしても大輝の部屋な。お前、俺が男だって事忘れんなよ」
「!?」
「そんな事分かってるよ!……ていうか誰よりも、颯太が男の子だって言える自信あるし……」
「!!??」

 最後の方の言葉は俺と江川でギリギリ届く声量で呟かれたので、多分本人には聞こえていない。
 でも俺の心を抉り取るには、二つの意味で十分すぎる破壊力を持っていた。
 これで“彼女”は“彼”だった事が分かって、同時に一宮さんが想いを寄せている相手もこの彼である事を理解する羽目になったのだ。
 一宮さんは呆然とする俺を押しやって、その「そうた」君の腕をとって歩き出す。

「でも、行かないとは言ってないよね?大輝、貴方の部屋行きましょう!」
「お、おお!」
「ちょっ、おい!確かに行かないとは言ってないけど、今すぐに行くとも言ってねぇぞ!」
「良いじゃない別に」
「おい!大輝も止めろよ!」
「いやぁ…俺も颯太に遊びに来てほしいし…」
「使えねぇー!」

 そんな会話をしながら三人は去って行った。
 …俺一人を取り残して。

 俺、完璧空気だったよね?
 会話に入れてないよね?
 てか謝罪、受け取ってもらえてない、よね?
 許されては…ないよね?

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