陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

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第一章 冒険者

第四話 町と出来事と①

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 数時間後、颯太とシエルは漸くレイドナルク王国の王都であるクレイドルの町に到着した。
 颯太は携えていた二本の刀を【アイテムボックス】に仕舞い込んだ。
 ついでに勇者と関連付けられないように、魔法を使って髪を白銀色に瞳を翡翠色に変更した。
 正門前には人が列を作って並んでおり、何かを待っている。
 ここは二人にとって最初の難所になりそうだ。
 なにせ颯太はダンジョンに向かう時、ここを通らず城の裏門からクラスメイト達や騎士達と一斉に外に出た。
 シエルは生活環境が悪すぎた為、王都に遊びに来ることもなかった。
 故に二人共、ここで何が行われているのかサッパリ分からないのだ。
 しかし、ここでいつまでも立ち尽くしているわけにはいかないので、颯太は列の一番後ろの商人らしき人物に話しかけた。

「あの、すみません。少しお尋ねしたいことがあるのですが…」
「はいはい。何ですかな?」

 人当たりの良さそうな太り気味な中年の男性は、汗を拭きながら颯太達の方へ振り返った。
 話しかけてきた颯太を見、その背中におぶられているシエルを見て、驚いたように目を丸くして逆に颯太に尋ねてきた。

「後ろのお嬢さんはどうしたのですかな?随分とボロボロのようですが…」
「ああ…僕達田舎から出てきたばかりで、ここに向かっている途中に魔物に遭遇しましてね。僕が得意の火属性魔法で追い払おうとしたら、突然風向きが変わって火と煙が僕達の方に…それで見ての通りです」

 それが真実であるかのように、颯太の口からスラスラと嘘の経緯が出てきたのでシエルは驚いた。
 だが初対面の人間に、必要以上に根掘り葉掘り事情を訊かれるのは彼女も良い気分ではなかったので、驚きを顔に出さないように努めながら颯太と男性の会話に耳を傾けていた。
 男性は納得してくれたようで会話は続く。

「そいつは災難でしたなぁ。それにしても田舎からですか…じゃあお兄さん、成人したのですかな?」
「はい、つい数ヶ月前に」
「良いですなぁ、兄妹二人旅!」

 男性にそう言われて、思わず二人は顔を見合わせた。
 自分達は、周りから見たら兄妹に見えるらしい。
 ならば敢えて、と颯太は目配せでその設定を使うことをシエルに伝えた。
 シエルにも意図は伝わったらしく、小さく頷き返してくれた。
 余談だが、そのやり取りは兄妹二人が仲良く微笑み合っているように見えたのか、目の前の男性だけでなく周囲に居た人々もほっこりした顔をしていた。

「あ、私はこの町でしがない商人をしております、ワット・ブロッグという者です」
「僕は颯太と申します。こっちは妹のシエル」
「……」

 やはりまだ人と喋ることに抵抗があるのか、シエルは頭を下げるだけで精一杯だった。
 それでも、ワットと名乗った男性は気を悪くすることなく会釈を返してくれたので、シエルはほっと胸を撫で下ろす。

「すみません。この子人見知りで」
「いえいえ、気にしないで」

 一応颯太が弁解するが、ワットは特に気にしていないようだ。
 そんなやり取りをいる間に列はどんどん進み、颯太達の前には後五人もいなかった。
 颯太は慌てて会話を本題に戻す。

「あの、そろそろお聞きしたいですが…」
「ああ!すみません、長々と。それで何ですかな?」
「この列に並んでいる人達は何を待っているんですか?」
「王都は初めてですかな?」
「ええ、まあ」
「王都に入るには、東西南北のいずれかの門で身分の提示をする必要があるんですよ。初めてのかたは身分証を持っていない人の方が多いので、そういった人達はまず、善悪の水晶を使って犯罪歴を調べ、水晶が青色に光ったら銀貨六枚を払って入れますよ。ほら、今の人のように」

 ワットが指さした方を見遣ると、丁度一人の男性が左の門兵が持っている大きな水晶に触れていた。
 それが青色に発光したのを確認した右の門兵は、男性の持っていた銀貨の枚数を確認して、町の中に通した。
 “善悪の水晶”というのは、おそらく魔道具なのだろう。
 颯太には、元の世界でもこの世界に来てからも犯罪を犯した覚えなどない。
 念の為シエルにも視線を向けるが、シエルも首を振って身の潔白を訴えた。
 犯罪行為をしたことはないので大丈夫だ、とワットに伝えると、ワットは頷いて自分の番が回ってくる直前に教えてくれた。

「身分証は、町の役所で発行してくれますよ。あと、どこかの冒険者ギルドで冒険者登録した時に貰えるギルドカードも、身分証の代わりになります。ではまた、どこかでお会いしましょう」

 そう言ってワットは、門兵に手早く自身の身分証を見せ、町の人混みの中に消えて行った。
 ワットの次は颯太達だ。
 シエルは、ワットの時はにこやかに対応していた門兵達が、さっきとは違う少し威圧的な雰囲気を纏って自分達を見ているのを敏感に感じ取り、身体を縮こませた。
 颯太にとってもその変化は少し不快だったが、並んでいる時にチラッと見えた二人の門兵の手際から、ここの守備を務めている期間がそれなりに長いことを察していた。
 多分、よくこの門を通る人達の顔ぐらいは覚えているのだろう。
 初めて町に来る人は、どんな人物なのか、どこから来たのかなど、分からないことだらけで警戒するのも当たり前だ。
 暫くの間観察しているかのような視線を浴びせてくる。
 真っ直ぐに門兵達に視線を返すと、漸く右の門兵が口を開いた。

「身分証の提示を」

 堅い声で発された言葉にも、警戒が滲み出ている。
 颯太は内心で「警戒を表に出すべきではないだろう」と門兵に忠告しながら、人当たりの良さそうな微笑みを浮かべて答えた。

「すみません。僕達田舎から出て来たばかりで、身分証を持っていないんです。先程、この門を通ったワットさんに教えていただいたので、これから作りに行こうと思っているのですが…」

 門兵達は丁寧でしっかりとした受け答えに面を食らったようで、顔を見合わせてすぐにいつも通りの業務を全うしようと、例の水晶を持ってきた。

「では、これに手を置いてください。一人ずつお願いしますね。まずは坊…オホン、お兄さんの方から」
「はい」

 颯太の容姿を見て、坊やと言おうとした門兵は慌てて二人称をお兄さんに変換する。
 幼く見える容姿について、当の本人が気にしているかもしれないと配慮してくれたようだった。
 なので颯太も敢えてスルーし、言われた通り水晶に手を置く。
 水晶は颯太が手を触れてから半泊程して、綺麗な青色に発光した。
 次に背中に乗っているシエルも、後ろから手を伸ばして水晶に手を置く。
 こちらも青色に発光したので、二人共大丈夫だったようだ。

「…大丈夫ですね。では二人分の入場料として、銀貨十二枚を」
「シエル、お願いできるか?」
「…ん…」

 シエルは、予め渡しておいた財布から銀貨十二枚を取り出して、震える手で恐る恐る門兵に渡した。
 門兵はそれらを、落とさないようにしっかりと両手で包み込むようにして受け取り、枚数を確認して二人の前を開けた。

「ようこそ、クレイドルへ」

 門兵達は、最初よりも柔らかい表情になっていた。
 颯太達に対する警戒は、緩んだようだった。
 颯太も門兵に会釈を返して、町の中に入り数歩進み、そっとシエルを地面に降ろした。
 その時だった。

 ドンッ!

「っ!待て!」
「誰か、そいつを捕まえてくれ!不法侵入者だ!」

 走り込んできた小柄な男が、颯太達を落とした後を再び塞ぐ前に門兵達を押し退け、無理矢理門を通ってきたのだ。
 突然の事で一瞬反応が遅れた門兵達は、必死に男の服の一部だけでも捉えようとしたが、男の足は思ったよりも速く、彼らの手は空を掴むだけだった。
 男は真っ直ぐ人混みの方へ走り込んで彼らに紛れようとしているが、その先には先程門を通ったばかりの兄妹らしき少年少女がいた。
 門兵達の顔に焦りが浮かぶ。

「「危ない!逃げろ‼」」

 門兵達の声が届いたのか、シエルはハッとして振り向き、颯太も遅れて、ひどくゆっくりとした動作で振り返る。
 男は颯太を見、自分よりも小柄で女の子と見紛う程の容姿の少年を見て、ニヤリと口の端を歪めた。
 腰に携えていたタガーを抜き、脅すように振り回しながら突っ込んできた。

「どけぇ!」

 普通の子どもなら、それだけで竦み上がって動けなくなっていただろう。
 実際誰もがそうなると思っていた。
 だがこの男の場合、相手が悪かったとしか言いようがない。
 何を思ったのか、颯太はスッと身体を前屈みに倒して、逃げるどころか逆に男の懐へ突っ込んだのだ。
 男は仰天して一瞬動きが止まり、突進の威力が弱まる。
 これは男にとって、致命的な隙だった。
 颯太はスピードを全く緩めず、タガーを持った男の手首を掴んだ。
 男は突然視界がぐるりと回り、突っ込んできた少年の姿が消えたかと思うと…次の瞬間には真っ青な空を見ていた。
 本人も周りも何が起こったのか分からず、呆然となる。

「こんな物、町中で振り回したら危ないですよ。それに町に入る為の手続きはきちんとしましょうね、?」

 男の頭のすぐ上で、“お兄さん”という単語を強調する、その場の空気に不似合いな軽い口調と笑顔で話しかけてくるのは、子どもだと思って完全に舐めていたあの少年だった。


_________________

 最初の部分で、先に進めていくと矛盾となる所があったので修正します。
 刀を仕舞わないと剣士である事が分かりますからね。
 魔術師で通したい颯太にとっては大事な事です。
 ちなみに髪や瞳の色を変える時、彼が思い浮かべたのはイヴァン師匠です。
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