陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

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第一章 冒険者

第十一話 訓練と遊びと③

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ダンジョン「黒龍の迷宮」 地下四十九層

 クレイドルの宿屋にて、颯太はこっそりミーナとシエルの親交が深まる様子を見届けている頃、再び例のダンジョンに潜った大輝・綾乃達一行は順調にその奥へと歩みを進めていた。

 名目上勇者としての力を更に高めるため、引いては各々のレベルアップのためにダンジョンに潜り、彼らは数時間足らずで既に五十層近くを制覇している。
 これはかなり快挙なことだが、実際の目的としている颯太の捜索はかなり難航しているため、本人達の中では目的達成率は五割程と言えよう。

「っ、はぁ!」

 迫り来る魔物を切り払いながら、綾乃は周囲に目を配る。

 敵の増援は?
 残りはいくらだ?
 足元や壁にトラップは?

 この世界に複数存在する“ダンジョン”は、その創設者によってそれぞれ特徴があるのだが、共通点として奥に進むにつれ、敵として現れる魔物も仕掛けられているトラップも更に凶悪なものになってくる。

 しかし不思議なことに、綾乃達は二度目の攻略に入ってから一度たりともトラップが発動していなかった。
 最初の方はラッキーぐらいに思っていたが、ここまで何事もないとなると逆に不気味に思えてきて、パーティー全体にも異様な緊張感が漂ってくる。
 最初の攻略の時は三十層ぐらいまでしか来ていないため、そこを越えてからは彼らにとって完全に未知の世界だ。

「なぁ綾乃、ここらでそろそろ帰還しよう」

 先ほど襲いかかってきたオークの群れを殲滅し終え、増援が来ないことを十分に確認した大輝が言った言葉に綾乃は少し瞠目した。

 何故?倒したのだから先に進みましょうよ

 とでも言いたげな目に、大輝は彼女の肩を強めに掴んで言葉を続ける。

「ダンジョンに入ってから結構経ってる。そろそろ皆限界が近そうだし、いくらイヴァンさんやジョンさんが居てくれるからって、これ以上先に進むのは危険だ」

 事実、途中に何度が休憩は挟んでいるが、政人達パーティーは既に消耗しきって息が上がっている。
 特に二人と共にずっと前線で戦い続けている政人・猛・朱莉は消耗が激しく、辛うじて膝に手をついて立ってはいるが疲労困憊といった様子だ。

 仮に自分達勇者や経験のある年長者達は大丈夫でも、これ以上は彼らが持たない。

「……そうね。今日はここら辺で戻りましょう」

 俯いて謝罪する綾乃に、大輝は苦笑して肩を叩く。

「ま、気持ちは分かるよ。早く追い付きたいのは俺も一緒だし」
「…焦って事を急くのは、愚か者のすることだ…よね?」
「近道なぞないからこそ、一歩一歩確実に進むべし…師範の口癖だな」

 よく言われたなぁと、笑いながら大輝はまだ少し緊張が残る面持ちでこちらの様子を伺っていたジョンとイヴァンに、ここらで攻略を切り上げ帰還する旨を報告しに言った。
 慌てて綾乃は、無茶を強いてしまっていた仲間達に全力で謝りに行く。

「ごめん皆!私全然気づかなくて…」
「い、いやいや気にしないで!おかげで結構良いとこまで来れたしな」
「そうやで~。うちらは大丈夫やから、そない気にせんどいて」
「……」

 前衛組は笑って返す。
 …一人は喋ることもままならず、親指を立てて大丈夫という意思を伝えていたが。

「……さ、流石に、これ以上は、進めない、かも…」
「も、もう、魔力も、体力も、限界…」

 後衛の二人は魔力回復用のポーションを少しずつ口に含みながら、帰還ということに安堵した様子だった。
 大輝の報告を聞いた年長者二人も漸くかと言った感じで肩の力を抜いた。

(本当に、全然周り、見れてなかったな…)

 仲間がこんなにも疲れきっていることに、今初めて気がついた。

(なんて…不甲斐ない…)
「今から帰還するんだろう?」
「!」

 気持ちが沈みかけた時突然肩を叩かれ驚いて振り返ると、少し疲れた様子のジョンと優しい微笑みを浮かべたイヴァンがいた。

「同じ異世界人でも、勇者である君達と彼らでは体力に差があるのかな?それともレベルによる違い?」
「どうなんでしょう?元の世界でも私達は武術を通して己を鍛えてましたし、皆それぞれのレベルを全て把握してるわけじゃないので…」
「そうか…レベルによる違いも否定できないけど、個人の基礎身体能力、若しくは基礎体力によるものなのかな?」
「かもしれないですね。もしかしたらそれぞれの才能…潜在能力にも左右されてるのかも」
「なるほど。では…「おいおい、ちょっと待ってくれプライス卿」…おっと、何です?騎士団長殿」

 彼にとってはとても有意義な話を遮られたようなもので、口調は柔らかいままだが少し返事の声音が固かった。
 しかしジョンは(疲れのせいもあるのだろうが)そんなイヴァンの様子には気にも留めない。

「頼むからここで議論に入らないでくれ。それについては、城に戻ってからでも可能でしょう?」
「……それもそうですね。分かりました」
「イヴァンさーん!皆準備オッケーだそうです!」

 タイミング良く、大輝が声を上げた。
 政人達パーティーがダンジョン脱出の準備を終えたら、声を掛けてほしいと言っておいたのだ。

「今行くよ!ではアヤノさん、今度はダイキ君も含めてじっくりと話そう」
「はい!」
「ハァ……ん?ちょっと待て!“四人”って俺も入ってないか!?」
「はい?」

 何を今更、とでも言いたげな目で見てくるイヴァンに、ジョンはまだ何か言いたげな、納得しきれていない様子だったが、喉まで出掛かった言葉を気合いで飲み込む。

 言ってもどうせ聞きやしない。
 このイヴァン・プライスという御仁は昔からこういう人だ。
 言い出したら梃子でも動かない。

 冒険者時代の彼を思い出して、こちらにも事前にその意図を伝えるだけ当時のアレよりはマシかと思った。
 …思うことにした。

 かなりの長い期間、腐れ縁のような形で付き合いが続くが振り回されっぱなしだなと、ジョンは大きな溜め息をつく。

 ジョンが内心でそんな葛藤をしているうちに、イヴァンは明日再びこの場所から攻略を進めるための転移魔方陣をこの地に描き終えて、今度は全員で城へと帰還するための転移の呪式を編んでいる。

「ほらほら騎士団長殿。あとは貴方がこちらに来てくだされば帰れますよ」

 前言撤回何ら変わっちゃいない。
 あの時のクソ生意気な若造のままだ。

「…えぇ。そんなに慌てなくても今行きますよプライス卿」
(まあ舌戦でこの御仁に勝てるとは、微塵も思っちゃいないがな)

 個人的な苛立ちは無理矢理抑え込んで(勇者と異世界人の彼らのためにも)その元凶である人物が紡ぎ出す、美しいとも言える程完璧に近い転移の呪式の効果範囲内に、ジョンは足を踏み出した。

 …宮廷魔術師長になってから徹底されていた敬語が少々崩れがちであることに気づいたのは、騎士団長を苛立たせ怪しい笑みを絶やさない張本人のみである。




_____________________



 皆様、ほんっっっっっとうにお久しぶりです!
 初めましての読者方もいらっしゃるかもしれませんが、お久しぶりです!!

 一年ぶり?かそれ以上ぶりですね…全然書けてなくて、ようやく続きを出せました(泣)
 久しぶりなのに主人公全然出てないし…続きを楽しみにしてくださっている方には本当に申し訳ないです……ごめんなさい!

 この小説もそうなんですが、もう一つこのサイトにアップしてる話や新しく書く筈だった話ですが…どちらも書けておりません…完全にストーリーが頭から飛んでいます…(泣)
 書けるかなと続けようとした小説もそうなんですが…新しい小説の流れや設定等はきちんと作ってはいたんですが…文字が一つも出てこない!
 何故!?という状況に陥り、更には作者自身あの時よりもっと忙しい時期に突入して、長らく小説から離れておりました。

 最近ようやく自身の小説に目を通して思い出しつつ、続きを書く余裕ができて久しぶりに更新できたことで内心ほっとしてます…良かった…

 出来る限りこの流れで小説の一段落くらいはつけたいので頑張ります!
 …といってもあまり期待しないでおいてください…ここまで宣言したこと何一つ達成できてないので…

 近々また新しい話を更新する予定です!
(これは確定なので!確定なので!!)
 何卒、宜しくお願いいたします。
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