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第一章 冒険者
第十二話 冒険者と受付嬢と
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大輝・綾乃が政人達パーティーとイヴァン・ジョンを引き連れ、再びダンジョンを攻略している丁度その頃、彼らの探し人である颯太は、シエルと先日仲良くなった宿屋の娘・ミーナと共に町へと繰り出していた。
まず三人は、シエルの洋服を買いにいくつか服屋を回った。
シエルは女の子だし、男である颯太が買うには少々気が引けるものもあったため付き添ってくれたミーナに感謝だ。
彼女はセンスも良く、可愛らしいものから動きやすそうなものまでシエルに似合いそうな服を幅広く選んでくれて、そこら辺には疎く自信がない颯太にとっては大助かりだった。
当の本人は長時間着せ替え人形にされ、目まぐるしく動き回っていたためかどことなく遠い目をしているが、これで当分衣服に関して困ることはないだろう。
買い物が終わると、町に着くまでの道中颯太が倒してきた魔物の素材を換金して纏まったお金を得るために、今度は冒険者ギルドに向かった。
ギルド内はなかなかの賑わいを見せていて、こういう熱気は嫌いでない颯太は少し胸を踊らせて周囲を見渡す。
シエルは少し怖じ気づいていたが、ミーナが宥めてくれているので心配はないだろう。
まだ人と対面で話すのは怖いらしいシエルをミーナに任せ、受付カウンターを見つけて颯太は一歩踏み出した。
そして、今までのトラブルは何だったのかと言いたくなるほど、颯太の冒険者登録はスムーズに行われた。
登録に必要なのは登録者本人の名前、種族、レベル、戦闘スタイルのみで、それ以外のことは特に問わないとのことだ。
予想よりもフリーダムで、颯太も拍子抜けしたぐらいだった。
(そういえば…冒険者について門番の人達に聞こうとして、あのおっさんに遮られたんだっけな)
…もっともタイミングが悪かっただけで、オズワルドが意図的に遮ったわけではないということをここに追記しておく。
ついでに、と颯太は自身の登録を請け負ってくれたギルドの受付嬢・レイリアに、冒険者として質問することにした。
「あの…登録した直後に聞くのも何なんですけど、冒険者について詳しく教えてもらえませんか?」
「はい、構いませんよ。そうですね……冒険者として活動する上で、皆さんにしっかりと把握しておいてほしいのは、まず“ランク”ですね」
「ランク?」
「はい。“ランク”とはその依頼達成数、又は成功率によって振り分けられています。最初の内は登録をされていても依頼達成数にノルマがありまして、これを達成されていない、若しくは成功率が20%を下回る場合、冒険者としての資格…先ほどお渡ししたギルドカードは剥奪となりますのでご注意を」
(そういえばこれ、町に入る時の身分証にもなるって言ってたな)
登録と同時に受け取った白いカードをもう一度見る。
元の世界で成人した人なら大抵は馴染み深いであろう、運転免許証ぐらいの大きさだ。
一度父のものを見せてもらったことがあるが、ほぼ同じようなものとして扱っても良いだろうと思いながら、颯太は顔を上げて次に続くレイリアの言葉に耳を傾けた。
「大抵の場合は最低のFランクから活動を始めてもらいます。Cランクに到達されると依頼達成数のノルマはなくなりますので、まずはCランクを目指して頑張ってくださいね」
「分かりました。頑張ります」
「また最高はSランクとなっており、このランクにまで登り詰めた人は現在両手の指で足りる程しかいらっしゃいません!もしランクを上げる場合は、冒険者本人様からランクアップの申請をギルドに提出していただき、その依頼達成数や成功率によってこちら側のトップ…ギルドマスターが最終判断を下します。…しかしこれには例外もありまして…」
「例外とは?」
「例えば、貴族様などある程度の権力をお持ちの方からの推薦で冒険者登録をなさる方や、その地区のギルドマスターが直々にお認めになった方などは、ランクの飛び級もありえます」
後者は本当に例外中の例外ですが、と笑うレイリア。
この口振りから察するに、ギルドマスターというのはかなりの実力者又は権力者のようだ。
「そして、このランクに応じてそれぞれ依頼を受注し達成していただきます。ソータさん、現在のレベルを教えてもらえませんか?」
「えっと、レベルは…………………ぇ…」
「ソータさん?」
「なんでもありません。レベルは90です」
「きゅ、90、ですか?」
レイリアは信じられないという顔で聞き直してきた。
そんなにひ弱に見えるのだろうか。
流石に少しムッとしたが、彼女の様子からは颯太を舐めているとかではなさそうだ。
「気を悪くしたのならごめんなさい!そこまでの高レベルの人が初登録なんて初めてのことで…」
「普通はどれくらいなんですか?」
「大体…30そこそこくらいですかね?」
それならダンジョンの序盤で既に越えた。
最後に見た時は39だった筈なのに、今こっそり「鑑定」で確認したらはっきりと書いてあったのだ。
自身がレベル90にまで到達していることに。
これには流石の颯太も一瞬固まってしまった。
颯太はレベル自体に対しての興味が薄いためかダンジョンを出た時に確認し損ねていたが、この驚異的なレベルアップは恐らく元とは龍神であったオルンフェルクを倒したことが一番の要因なのだろう。
「凄いですね!まだまだお若いのにもうレベルが100近いなんて!」
「い、いや…村でもよく魔物を追い払っていましたし、体を動かすのは好きですから」
「それでもここまで上げる人なんていません!そのレベルなら、すぐにでもD…いやCランクに上がれますがどうしますか?」
「…いえ、遠慮しておきます」
「え、良いんですか?」
「はい。妹と友達を待たせているので」
そう言ってギルド入り口辺りで待つ二人を振り返って手を振る。
それに気づいたミーナが何やら安堵した表情をしたかと思うと、座り込んで蹲ってるシエルに声を掛ける。
顔を上げたシエルは、颯太を視界に入れ手を振り返してくれたがその笑みは弱々しい。
やはり人が苦手らしいシエルには、人が集まるギルド内に長時間居るのは結構辛いらしい。
その顔は白くなっている…人酔いだけではなさそうだ。
「小さい方が妹さん?かな?辛そうですが、大丈夫ですか?」
「……いや、本格的にヤバそうなのでもう行きますね。レイリアさん、色々教えてくださってありがとうございました」
頭を下げて立ち去ろうとしたが、レイリアはその腕をカウンターを乗り越えて掴んだ。
「待って!妹さん、ギルドの奥で休ませていかない?」
「え?」
~~
あの後颯太は、レイリアの申し出を受けてギルド内の一室のベッドを借りてシエルを休ませることにした。
シエルは、今までこんなに多くの場所を回り、こんなに多くの人がいる場所に来たことはないためか眩暈を起こしており、更にこれまで接してきた人間にはいつも自分に対して敵意を向けられていた。
それに加え、唯一傍にいて安心できる颯太は自分とは離れた所にいる。
初めて経験する長時間の買い物による疲れも相まって、自分よりも何倍も大きい人間が周りに沢山いる状況…パニックによるキャパオーバーを起こすには十分すぎる。
ミーナは、シエルの顔が青を通り越してどんどん白くなっていくのを見て、慌てて倒れたりする事態を防ぐためにも一先ず彼女をその場に座らせた。
しかしその後どうするべきか皆目検討もつかず、ワタワタしているところで颯太が振り返ってくれたらしい。
余程心配なのか、ミーナの顔色も心なしか優れない。
「ミーナ、シエルのこと見ててくれてありがとう」
「いいえ、私は何も…本当に何も出来ませんでした…」
「ミーナが座るように言ってくれたんだろ?おかげでシエルは倒れずに済んだんだよ。ありがとう」
「…はい」
颯太の言葉で、ミーナはようやく肩の力が抜けたようだ。
「…気づくのが遅れてごめんな」
「……ぅ、うん……ごめん、なさい…わ、たし…」
「謝らなくて良いんだ。今はゆっくり休みな」
「…ぅん…」
そっと目を右手で覆って目を閉じさせると、そんなに経たない内にスゥスゥと健やかな寝息が聞こえてきた。
眠ったことを確認してそのまま右手でシエルの前髪を軽く鋤き、俺はここにいるからと、安心させるためにその手を握る。
少し震えている小さな白い手は、これまで彼女が歩んできた壮絶な人生での心の傷を物語っているようだ。
コンコン
控えめなノックが部屋の扉を叩き、レイリアが水差しとコップ、冷たい濡れタオルを持って入室してきた。
「ソータ君、妹さんの具合はどう?」
「ありがとうございます、レイリアさん。少しずつですが落ち着いてきてるみたいです」
「そう…良かった」
水差しとコップを部屋備え付けの机に置いて、濡れタオルを颯太に差し出した。
「何から何までありがとうございます」
「良いのよ、気にしないで」
そう言うレイリアは、母のように優しい微笑みを浮かべていた。
_____________________
長くなりそうなので、一旦切ります。
すぐに続きが書けるように精進します!
今回から少々話のまとめ方を変えてます。混乱させてしまうかもしれませんがご了承ください。
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