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第二章 藍と学校

78. 太陽と六ペンス The Sun and Sixpence

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 ――だってこんなに態度で、ことばで……こころで伝えてくれているのだから。
 
 じゃあお返しをしないといけない。だって貰ったことがないものは渡せないから“誰にも愛されたことがない人は誰も愛せない”。だけど、“ラアルさまに愛されている私はラアルさまに愛を渡すことができる”。
 いや、できるからじゃない。そうしたいんだ。わたくしが、そうしたくてたまらないから、そうするのだ。

 ほんとうに、“太陽”のような人だ。

 ◇◆◇

「ラアルさま……。」

 今までは塞ぎ込んで、黙り込んでいたアイが、突如声を上げる。

「……ん?」

 自分でも信じられないぐらいやさしい声がでてしまう。
 ……どう思うでしょうね。彼女に誇れる自分になれてるといいな。

 ――そんなことを考えていると、突然にその衝撃は来た。

「……わたくしも、ラアルさまがだいすきっ!!です!」

「アヒュッ……。」

 雪のようにかがやく白い肌、さらさらの黒髪、ちいちゃくてかわいいお鼻と、瑞々しい小ぶりなくちびる。そして何より――
 ――太陽の残光を移した
 ……月の光のようなサファイアの瞳。
 きらきらと輝いて……あぁ――

「愛しているわ、アイ。」
 
「ふふっ、そんなのもうと~っくに知ってますよ、ラアルさま!」

 おどけて、からかってくる。そんなところもかわいいと思ってしまう。
 あぁ、かわいい……かわいいかわいい、かわいい……。
 頭がかわいいに支配されてなんにも考えられなくなる。

 ――あぁ、れたほうが負けってほんとうだったのね……。

 獣神体アニムス同士は自分の縄張りを荒らされないように、自分の番の所有権を主張するために、お互いにとっては嫌な威嚇臭を放つ。
 なんでアイは獣神体アニムスのはずなのに、いい匂いがするんだろう……。
 ……。
 思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
 
「それに――」

 アイがゆっくりと近づいてくる。なのに私はまんじりとも動けない。
 頭が、五感のすべてがアイで埋め尽くされて、しあわせの絶頂に至る。

「――先刻さっき襲われたとき、助けてくれてありがとうございました。
 ……すっご~く……!かっこよかったですよ?」

 「おっふ……。」
 
 寄りかかってくるその私よりずっとずっと華奢きゃしゃな身体を抱きしめようとするが……手が中を舞う。抱きしめようとして、やっぱりやめて、また近づけて、離して。はたから見たら私はバカみたいな、うつくしいとはほど遠い動きをしているんだろう。

 だけどそんなことをはどうでもいい。。他の人にうつくしいと認めさせることなんてもう考えてられない、ずっとそれを考えて生きてきたのに。
 
 今の問題はアイにどう思われるかだ。今までは気軽にスキンシップができたのになぜか、今はこの肌に髪に触れるのが躊躇ためらわれる。下心が勘違いされたらどうしよう?いやあるんだけども。じゃあ勘違いじゃないじゃない。たしかに……?とにかくバレないように、“獣神体アニムス的にスマートに”……。

「貴女も皆を愛情で包んで、護り癒やす姿はとてもうつくしかったし……。
 今私を私だけをみている姿はとても愛らしくて……この世の者とは思えないほどに。
 ……かっ!……かかかわっ……かわい――」

 ぱっとアイが離れてしまう。

 え゙っ゙……。

 ◇◆◇

 やばいやばいやばい、いやらしい目で見てるのがバレた?下心があるのがバレた?……嫌われた!?!?

「ラアルさま先刻さっきから周りを観察していたのですが、。そうなるととりあえず、指揮系統を統一したほうがいいと思うんです。だから――」

 私だけを見てくれているんじゃなかったの!?勝手に勘違いして舞い上がってたってこと?
 あぁ……アイには一生勝てきる気がしない……。
 でもよく考えればアイに翻弄され続ける人生というのも……まぁ、それはそれで悪くな――

「――そうねっ!とりあえず、こんな緊急事態で知らない相手と急に連係は取れないから、同じクラスごとで指揮系統を分けましょうか。
 ……でもアイだけは私のクラスと――」

「――いいですねっ!それ!さすがですっ!じゃあわたくしとラアルさまは別になって、クラスごとに固まって防御陣形をとって救援を待ちましょう。」

「……いや、アイは私と――」

「――それじゃあ早速、みんなをクラスごとに分けて隊列を組んでもらいましょうっ!」

「そう……そうね……。」

「……?ラアルさま?なんか元気ないです……?大丈夫ですか……?」

 うぅ……本気で心配してくれてるぅ……。下心マックスだった自分が恥ずかしい……。まぁ!私はうつくしいからいいんだけどねっ!

 ◇◆◇

「それにしても、陣形を組もうとは諫言いたしましたけど……」

「……皆、パニックだったり怯えていたりでそれどこじゃあないわね。それに火傷を負っている者も、他の怪我をしている者も多いし……。」

「「う~ん。」」

「というかアイ……貴女はなんでそんなに落ち着いてるのよ……?いくらミルヒシュトラーセ家とはいえ、その年じゃあ、実戦経験なんて殆どないはずでしょう……?」

「え゙っ゙!」

 ……。そのほうがおかあさまも喜んで下さるし、これ以上人に迷惑をかけなくて済むし……。
 でも、ラアルさまに愛していると言われてから、死んだら彼女を悲しませてしまうと思ったら……かもしれない。でも

 ――もしかして死にたくないと思える人は愛されてるからで、何かを持ってるからで……誰にも愛されていなくて(少なくとも本人はそう思っている)、……なのかなぁ……。

 じゃあ……戦うのが少しだけ恐くなくなったのは?今までは恐くて恐くて、自分をおかあさまだと思い込んでまで闘ってたのに……?

 いや!そんなことより誤魔化さないと!ラアルさまがジトーっとした目でこっちを見ている……!

 ◇◆◇
 
「あぁー、えぇーっと、そう……ですねぇ。」

「……んん……?」

「え~っとちいさい時からおかあさ、エレクトラさ、じゃなくて……えっと、聖別の儀セパレーションっ!
 そうだ!性別を決める聖別の儀セパレーションを決める闘いを経験しているのでっ!」

「んん?……でもそれって私たちみたいに高貴な生まれだと、最初から勝てるって決まってる相手と闘うわよね?お金を払ったりそれからのその子の家への厚遇を保証したりして。それで確実に獣神体アニムスになれるんだから。
 ……あんな出来レースでそこまでの胆力たんりょくがつくかしら?」

 うっ……どうしよう相手がはるひちゃんだったってバレたらまずいことになる。ラアルさまはまだはるひちゃんを許してないみたいだし。……それになにより、わたくしとはるひちゃんで聖別の儀セパレーションをしたはずなのに、両方獣神体アニムスというのはありえない。そうすれば確実にわたくしの方が人間体アニマになったって露見ろけんしてしまう。

 「――え~っと……そうだっ!」

 「……そうだ?アイ、貴女この私に、お互いに愛し合っているこの私に……何かかくしごとをしていないかしら?」

 すっごく疑われている!

 「ほら!私たちミルヒシュトラーセ家と辺境伯爵派へんんきょうはくしゃくはのほとんどは、軍人がほとんどじゃないですか!それにそうじゃない人たちもほぼ全員が軍属ぐんぞくですし、つまり軍属か軍人しかいなんですよ…………。
 だから“強いものこそが正義”という信念がありまして……え~っと、だから、だから聖別の儀セパレーションも対等な実力の者で行うんです!例えばちいさい頃のとかっ!」

 「……辺境伯爵派は公王派こうおうはと違ってまだそんなに前時代的ぜんじだいてきなやり方なのねぇ……。
 ……?……でもじゃあ人間体アニマ偉い家の子はどうなるのよ?」

  うっ!……わたくしがそうだから胸が痛い。

 「……そこは獣神体アニムスなった側が責任をもってつがいとなり、尚且なおかつ婚姻関係を結んで、一生護るんですよ!そうすれば高貴な家の者同士の横の結束がより強くなりますからね。結果的にお家同士もお互いを裏切れなくなりますしっ!まぁ公王派の信仰するチグ教みたいに『自らの番と婚姻相手は、これらを必ず同じ人物としなくてはならない。』みたいに厳しい教義きょうぎはないんですけどね。ねっ!そういうことなんですよねぇ~。」

 「なるほど前時代的なだけかと思ったけど、権謀術数けんぼうじゅっすう渦巻うずまいてて、貴族社会のなかでの合理性も考えられているのねぇ……。」

 「ですですっ!」

 ふぅ……なんとか人間体アニマだってバレずにすんだかな?それが露見すれば、今度こそわたくしはにあだろう。リンチだってされるだろう。人間体アニマ獣神体アニムスと性別を詐称してその特権を利用してきたのだから。獣神体アニムス、ノーマル……そして特にひどい目にって生きてきた人間体アニマことになるだろう。

 ◇◆◇

 「それにしてもアイは――!!」

 「?……ラアルさ――!?」
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