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第2章「統治」
第六話-④「ありがとう」
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それから一ヶ月後、月間の街の報告会を行っていた。
「……とこのようにアビスの商会との取引によりアクセスに予想の10倍もの利益が見込めるとのことで……」
報告会と言ってもボク含め、参加者10名も満たない人たちしかいない。
「……以上で一ヶ月の報告会を終えたいと思います」
しかしボクが終わりの言葉を述べたというのに参加者は一行に部屋を後にしなかった。
その理由は自分たちの世間話をするのが目的だった。
まずバラミットが家族の話をしている。
「えー、娘が最近では王都で本を出品したと話しておりまして、是非私にも見せて欲しいと言っているのですが中々見せてくれず……」
次に農地の開発を急行された農家の代表者である『ベルジハル』という男だ。
以前に農地に向かったときに魔王様に報告をしてくれた人間だ。
それからボクたちは仕事帰りに飲み仲間になるくらいには交流がある。
「やはり魔王様が用意してくれた『魔力循環肥料機』のおかげで農作物すべての商品価値を引き上げている要因でしょう!」
そう彼は飲み仲間になってから知ったことだが、彼はかなりの仕事に熱心な人だった。
農業については資料である程度理解はしていましが彼ほどの知識はなく会話を切り替えるのに大変だった。
普段は事務作業ばかりだが、接待をする営業の魔物はこういう相手と戦っていたのかと思った。
今話に出た魔力循環肥料機というのは魔力を肥料になる残飯などの廃棄物と共に入れることで最短1日で収穫することが出来る。
さらにその肥料の元で育った作物は魔力が生命活動を活発化させ、栄養価が馬鹿げたように美味しくなるのだ。
そして肝心の魔力についてだが、原理は想像でしか理解してないがどうやら植物の光合成のような仕掛けや自然の力を使って魔力の供給をしているとのことだった。
(それを一日どころか一瞬で作ってしまうだから末恐ろしい)
なんて考えていると魔王様の周りに多くの人だかりが出来ていた。
ここは秘書としてその状況を収めなけばならない。
「皆様、魔王様に意見を述べるのは良いですが、これ以上は作業に支障が出ますので各自持ち場に戻ってください」
ボクの一言に周りの人たちは次々と部屋出て行った。全員が出るとボクゆっくりとため息をつく。
「それでは執務室に戻りましょう」
ボクが魔王様に誘導の言葉を発すると魔王様が突然突拍子のない言葉を口にした。
「ありがとうございます」
その言葉にボクは予想外な瞬間に思考が停止してしまった。
いつもの魔王様なら何を考えているのか分からないくらいに仕事をしており会話らしいことなんて誰かに言わされているようなテンプレートのような言葉の羅列しか言わない。
ボクはとても困惑していたが、少しすると一つのピースがこの現象を結論づけた。
「あーなるほど加護様のお告げですか? まったくいきなりお礼なんて驚いてしまいましたよ」
そう魔王様は自分で考えて発言することが出来ないのだ。
いつも口で話しているのは加護のお告げをそのまま復唱しているだけだからだ。
「お礼は嬉しいですが、出来れば本心から言ってくださいね」
ボクは混乱していたので少し敬語が抜けたのは申し訳ない気持ちとお礼を言ってくれた照れくささでその場を早足で退室した。
しかしボクは気づかなかった。部屋の中で頭を傾けている魔王様の姿を……。
「……とこのようにアビスの商会との取引によりアクセスに予想の10倍もの利益が見込めるとのことで……」
報告会と言ってもボク含め、参加者10名も満たない人たちしかいない。
「……以上で一ヶ月の報告会を終えたいと思います」
しかしボクが終わりの言葉を述べたというのに参加者は一行に部屋を後にしなかった。
その理由は自分たちの世間話をするのが目的だった。
まずバラミットが家族の話をしている。
「えー、娘が最近では王都で本を出品したと話しておりまして、是非私にも見せて欲しいと言っているのですが中々見せてくれず……」
次に農地の開発を急行された農家の代表者である『ベルジハル』という男だ。
以前に農地に向かったときに魔王様に報告をしてくれた人間だ。
それからボクたちは仕事帰りに飲み仲間になるくらいには交流がある。
「やはり魔王様が用意してくれた『魔力循環肥料機』のおかげで農作物すべての商品価値を引き上げている要因でしょう!」
そう彼は飲み仲間になってから知ったことだが、彼はかなりの仕事に熱心な人だった。
農業については資料である程度理解はしていましが彼ほどの知識はなく会話を切り替えるのに大変だった。
普段は事務作業ばかりだが、接待をする営業の魔物はこういう相手と戦っていたのかと思った。
今話に出た魔力循環肥料機というのは魔力を肥料になる残飯などの廃棄物と共に入れることで最短1日で収穫することが出来る。
さらにその肥料の元で育った作物は魔力が生命活動を活発化させ、栄養価が馬鹿げたように美味しくなるのだ。
そして肝心の魔力についてだが、原理は想像でしか理解してないがどうやら植物の光合成のような仕掛けや自然の力を使って魔力の供給をしているとのことだった。
(それを一日どころか一瞬で作ってしまうだから末恐ろしい)
なんて考えていると魔王様の周りに多くの人だかりが出来ていた。
ここは秘書としてその状況を収めなけばならない。
「皆様、魔王様に意見を述べるのは良いですが、これ以上は作業に支障が出ますので各自持ち場に戻ってください」
ボクの一言に周りの人たちは次々と部屋出て行った。全員が出るとボクゆっくりとため息をつく。
「それでは執務室に戻りましょう」
ボクが魔王様に誘導の言葉を発すると魔王様が突然突拍子のない言葉を口にした。
「ありがとうございます」
その言葉にボクは予想外な瞬間に思考が停止してしまった。
いつもの魔王様なら何を考えているのか分からないくらいに仕事をしており会話らしいことなんて誰かに言わされているようなテンプレートのような言葉の羅列しか言わない。
ボクはとても困惑していたが、少しすると一つのピースがこの現象を結論づけた。
「あーなるほど加護様のお告げですか? まったくいきなりお礼なんて驚いてしまいましたよ」
そう魔王様は自分で考えて発言することが出来ないのだ。
いつも口で話しているのは加護のお告げをそのまま復唱しているだけだからだ。
「お礼は嬉しいですが、出来れば本心から言ってくださいね」
ボクは混乱していたので少し敬語が抜けたのは申し訳ない気持ちとお礼を言ってくれた照れくささでその場を早足で退室した。
しかしボクは気づかなかった。部屋の中で頭を傾けている魔王様の姿を……。
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