烙印騎士と四十四番目の神・Ⅰ 転生者と英雄編 

赤星 治

文字の大きさ
11 / 80
一章 遺跡の魔獣

Ⅷ 最初の仲間

しおりを挟む
 トウマは烙印の力を試す前に腰に下げている布袋から干し肉を二つ取り出し、一つをジェイクへ差し出した。
「いざって時の為です。ちょっとした腹ごしらえに」
 未だトウマを信じていいか疑いの残るジェイクは、受け取っていいか迷いつつ、差し出された右手のではなく左手の干し肉を取った。
「悪いな。一応警戒はしてるんでな」
(じゃあ、前もって食料は備えてなさいよ)ベルメアは心の中で愚痴る。
「ははは……、まあ、そうですよね」
 トウマは苦笑いを浮かべ、受け取られなかった干し肉を食べた。
「トウマ優しすぎ、怒っていい所だよ」
 ビィトラは呑気に浮遊して他人事のように忠告する。

 干し肉を食べたジェイクは剣を鞘から抜いた。ふと、刃こぼれが目につく。
「……で、何を試すんだ?」
「ジェイクさんが”魔法剣”を使えるかどうかを確かめます」
「まほうけん? ……なんだそれ」
 ビィトラがジェイクの傍へ近寄った。
「トウマの世界の造語だよ。要するに、トウマの術を剣に宿して攻撃できるかって事」
 ジェイクが納得するとトウマは続けた。
「ジェイクさんも仲間が欲しいってのは分かります。けど、僕はただの仲間・・・・・より、”あいつ”に対抗できる仲間が欲しいので、これで何もいい結果が出なかったら残念ですが諦めてください」
 『あいつ』が何を指すかは分からないものの、ジェイクはこの機を逃すまいと剣に烙印の力を込めた。
「よく分からんが来い。俺も烙印の力を知るいい機会なんでな」

 トウマは右手に炎の塊を出現させた。森で使用した炎より威力は抑えられているが、強力な炎であるとジェイクは感じ取った。
「消耗してるので現状、これが限界です。もし上手くいかなかったらジェイクさんは大怪我しますけど……どうします?」
「聞くな馬鹿野郎。男がやるっつったら先の事なんざぁ気にするな」
 真剣さと気迫、意志が固く揺るぎない言葉。トウマは僅かに心動かされた。
 二人を様子を見守っているベルメアは心配の様子を見せず、ジッと傍観する。ビィトラは助言もしないベルメアが気になった。
「いいの? トウマの炎に当たったら、あの人死ぬかもしれないよ」
「かもね。けど、ジェイクはここまで自分の強い意志で来たの。あたしがここで何言っても聞かないわよ。それに、本気のジェイクはレベルとか関係なく、何かやってくれる人間だからね」
「まだ数日でそこまで信頼できるんだ。……気を付けなよ、その信頼を見誤ったら命取りになるよ」

 忠告の最中、トウマはジェイク目掛けて炎を放った。

(あの時の感じを思い出せ)女にとどめを刺した時、炎を剣に宿した感覚を蘇らせた。
 迫る炎を受け止めるも、全身を後方へ押し進める程の巨大な力に耐えるのは、烙印とは別にかなり力を使った。堪えるのに必死でも、意識は剣へ集中させる。やがて炎の圧力が弱まり、次第に剣へ纏わり始めた。
「……よ、し。……この、まま」
 炎の八割が剣に纏った矢先、
 ――バキンッ!!
 音を鳴らして刀身が折れた。途端、破断部分から赤紫の炎が発生し、トウマの炎を取り込むように相殺して天へ上り消し飛んだ。後には折れた剣が転がった。

「はぁ、はぁ、はあ。……無理、でしたか」
 かなりの魔力を込めたトウマは息を切らせている。
「……いや、元々刃こぼれが酷いが剣だったから耐えれなかったんだろ。それにマホウケンってのが出来てもそんなに持続しなかっただろうな」
「どうして……分かるんですか?」
「今もそうだが、さっきの戦いん時もだ。烙印の力が強すぎて、炎を纏わせようとすると相殺するのを感じた。やるなら二つの炎が合わさった一瞬の間しか無理だろうな。威力は烙印のみの時より強いのは手応えで分かったから確かだ」
 二柱の神が二人の傍へ寄って来た。
「要するに、二つの力がせめぎ合ってる瞬間の相乗効果で力が増すって事ね。森ではトウマが放った炎じゃなく、木に燃えた炎だったから今みたいに全力で集中する必要がなかった。殆ど烙印に引き寄せられて炎が纏ったって感じね。烙印について知れたから”良い成果”じゃない」改めてトウマを見る。「で、どうする? ジェイクと組む気になった?」
「ビィはずっと疑ってるけど、僕は烙印技見た時からジェイクさんと組もうって思ってましたよ。”受肉したい”とか”レベル8”って時はさすがに迷ったけど」

 ベルメアが頷き「分かる」と呟き、ジェイクは「おい」と返す。

「で、俺の力がお前のいう”あいつ”ってのに対抗しうる力と判断したんだよな。……教えろよ。何と対抗してんだ?」
 トウマは自分が見て来たものを思い出し、険しい表情になる。
「ここに来る前、僕は二人の仲間と組んでました。一人はジェイクさんと同じ剣士でこの世界の住人、もう一人は僕よりも強力な術を使う術師で転生者です。当時の僕はレベル7で、転生者の人は20を超えてて、剣士の人はレベルで表すなら20代だと判断しました」
「おい、そんな事あり得んのか!? ついこの前転生して、短期間で20越えとかって」
 ビィトラが答えた。
「おそらく一階層の転生者だよ。前世がこの世界の住人だから魂の質が世界に馴染んでるんだ。転生直後から20越えはしてたと思うよ」

 この際とばかりに一階層から五階層まで何人いるかをベルメアに訊くと、一階層は四人、二から五階層まではそれぞれの階層に十人ずつと返された。
「この世界の住人って事は信仰上、転生者を魂的にも受け入れて理解してるから序盤からでもレベルは高いのよ。だから一階層に当たるとこちらとしてもかなり嬉しいんだけど……どうやらそうもいかないみたいね」

 トウマは続けた。
「先日、この村から向こうの平地を抜けた先にある町の、近くの岩場で巨大な魔獣に襲われました。僕たちはその岩場に潜む魔獣を退治しに向かったのですが、到着した時には依頼の魔獣が例の巨大魔獣に喰われてました」
「弱肉強食だからあり得るんじゃねぇのか?」
 ベルメアがジェイクの疑問に答えた。
「本来ならね。けど、あたしも依頼捜しで見た時、その魔獣はそう易々とやられるとは思わなかったから、本来ならありえない筈よ」
「僕たちと数人の討伐依頼を受けた人達で協力して戦ったけど、巨大魔獣は倒せず、仲間もやられて……」
 詳細を言おうとすると、腹からこみ上げるものを感じ、口を押さえて近くの岩陰へ向かい嘔吐した。
 続きをビィトラが語った。
「巨大魔獣は瀕死の人間の頭に食らいつくんだ。まあ、喰い残しを見る限りでは、頭というより脳を啜ってた感じだったよ」

 ジェイクとベルメアに怖気が走った。
「……よく逃げ切れたな」
「必死だったよ。逃げる事に必死で、レベルに見合わない魔力消費の多い術を強引に使って町の近くへ飛べたのが幸いしたんだ。本来使えない術だから、トウマはすぐに意識を失い、偶然町民に気付いてもらって介抱されて生き残れた。そうでなかったら僕も試練終了だったし」
「で、仇討ちって事で俺と組もうって訳か」
 ビィトラは頭を左右に振った。
「戦闘中、巨大魔獣にトウマが触れて、はっきりとじゃないけど守護神を見たんだ。けどすぐに消えた。魔獣の中に入ったんだろうね。守護神が消えるって言ったら転生者の中に入るぐらいだもん」

 つまり魔獣が転生者である可能性が生まれた。

「おいおい、昇格試練ってのは魔獣も転生者に出来んのか?」
「無理よ。転生者となれるのは前提条件で人間のみ・・・・だもの。でもまあ、転生後に魔獣に化ける術があれば話は別だけど」
「そんな術あんのか?」
「この世界の術は種類が多いのよ。あたしもビィトラも全てを把握してないから知らないけど。けどそんな事より、どうして守護神は姿を隠したのかしら……」
「ビィトラに見られたくなかったんじゃないのか? 仲良しだったら特定加護がバレるのを恐れたとか」
「守護神に仲が良いとか関係ないよ。それにビィとベルメアみたいに知り合い同士って守護神ばかりじゃないし。転生者が死んでも守護神達ビィ達が消える訳でも殺し合う訳でもないし。それに特定加護が分かっても大した情報でもないよ」

 少し気分が回復したトウマが戻って来た。
「……守護神はともかく、転生者であるなら魔獣を使役している存在。『魔獣使い』の可能性が高いかもしれません。しかもこんな序盤であれほど強力な魔獣を従えれるなら、並外れた力の持ち主か、後ろに強い術師がいる可能性も考えられます。どっちにしろ、この試練を単独で乗り越えるのはかなり困難と判断しました」
 ベルメアが感心した。
「賢明な判断ね。今の二人の力で挑むのは無理だろうし、遭遇しないように行動しなくちゃならない。けどいつかは戦わなければならない相手なんだし、いざ挑むって時の為に転生者として強くなるべきね」
「いや、やるなら受肉してから挑ませろ」
 ジェイクなりの導きだした『強敵と戦う最良の選択』に、”受肉が必要”と割り出された。
「せめて、『倒してから受肉させて』ぐらいに気を使ってほしいものだわ」
「こんな身体で強敵と戦えってぇのかよ!」
「ええ、その身体で戦いなさい!」

 ベルメアとジェイクのやり取りを他所に、ビィトラが村を指差した。

「とーにーかーく。今日は休んで、それからどう旅を進めるかにしようよ。そっちの剣士君は元気でも、トウマこっちはヘロヘロだからさ」
「こっちって……もっとマシな言い方あるだろ」

 なにはともあれ、仲間を作る目的は達成された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

処理中です...