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二章 魔女の巣くう塔
Ⅸ 命を賭けて
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ジェイク達にとって不運なのは、斬っても斬っても次から次に地面から湧いて出る死者が相手だということ。
ジェイク達にとって幸運なのは、死者の攻撃方法が単純で、倒せば烙印が出現すること。
ビィトラの策は、サラ達が町で使用した白い石を使用するものであった。
石には魔力が籠り、少量の魔力でも多大な効力を発揮するモノとなっている。これにより、サラを縛る”闇の力”に抗う特定の術が無くとも、簡単な光の治療術で闇の力を払拭できる。白い石の力を利用して威力を底上げする策である。
方法は、隙を見て石をバラまき治療術に専念。しかし問題は、地面にばらまいた石を何かしらの方法で飛ばされでもしたら策が台無しとなる。
ここへ来るまでどういった方法で作戦を遂行するかをトウマは考え続けた。しかし死者が湧き、巨大魔獣が現れ、サラを前にすると頭が真っ白になってどういう作戦にしようか分からなくなる。
一方、ジェイクは序盤から剣に烙印の力を込め、一撃で多数の死者を薙ぎ払った。
(あんた! 烙印技は加減しないと、すぐに体力切れになるわよ!)
「わーってる!」
倒した死者から烙印を合計三つ回収し、攻めてくる人骨の軍隊を普通の剣で斬り続けた。
(作戦はいつだトウマ!)
(待ってください! アンデッドが!)
魔力消費の少ない炎と土の術で攻めてくる死者をあしらっているが、未だにどう手を打てばいいか悩んでいる。
「ぼさっとしてると死ぬよ」
サラがトウマに向けて手を翳すと、炎の波が押し寄せて来た。
炎の強大さ、魔力の質を即座に察すると、手を抜いた術では防げないと覚悟し、両手を翳して暴風を出現させた。
(トウマ駄目だ! それじゃ――)
ビィトラの忠告は遅かった。
炎の波に風の防護壁では数秒は防げたとしても風の流れに炎が誘導されて防護壁を覆い、やがてはトウマへと強まった炎が襲った。
「トウマ伏せろ!」
烙印の力を身体に纏い、炎の中に飛び込んだジェイクが剣を振り、炎を散らせた。だが、無理をした反動により、片膝を付いて息を切らせる始末である。
トウマが駆け寄ると治癒術を使用した。
「無茶しすぎですよ!」
「言ってる場合か」
サラに目をやると、二撃目の炎が準備されている。更に、巨大魔獣まで本格的に動き出した。
「作戦変更だ。お前は巨大魔獣。俺は烙印でサラを斬る」
ベルメアが姿を現した。
「ジェイク何を!?」
「仕方ねぇだろ! 奴は強すぎる。生半可じゃ」
「いえ、僕が彼女を救います。手は浮かびました」
ジェイクが立ち上がり、トウマを見ると、嘘を吐いてない真剣な表情であった。
「次は助けれねぇぞ」
「分かってます」
互いに目当ての敵の方へ向かった。
(トウマ、どうするの?)ビィトラが訊く。
「さっきの失態で手が浮かんだ」
両手に暴風を帯びた魔力を発生させた。
「異種同属魔法・爆風壁」
(それじゃあさっきの二の舞)
「いや、いける!」
二人は同時に強大な術を放った。
サラは同じ炎の波。しかしトウマの風は暴風壁ではなく、炎をも包み込みサラを中心に竜巻となって姿を変えた。
「小癪ですね。暴風の壁、こういうことですか」
炎の竜巻の中でサラは手を翳して炎を吸い取った。
「貴方の竜巻、利用させてもらいます」
サラが魔力を込めようとした時、風の流れに異変を感じた。
「これでいい。これで石が一定の高さで渦巻く」
トウマの竜巻は昇る風の竜巻と、上昇も下降もしない統一方向をグルグル回る竜巻が合わさっている。よって、白い石が竜巻内で渦巻いている。
サラの術で解いて払う事は可能だが時間は少しかかる。よって、トウマはこの千載一遇に治療術と風術を合わせて飛ばした。
竜巻内の石に反応した治療術がさらに活性化し、竜巻を白色の光で染め上げた。
「ぐぅぅ……、な、にをぉぉ……ごぁぁ、が、ぎぃぃぃ」
誰にも気づかれない竜巻内でサラの形相が魔獣のように変わり、呻き苦しんでいた。
必死に術を使用して足掻こうにも、白い竜巻の影響で動くのも困難であった。
サラ救出作戦の影響は、巨大な魔獣にも及んだ。
竜巻が白くなってから突然もがき苦しみ、ベルゲバの塔や大地、仲間である死者の軍と、見境なしに殴る蹴るで暴れ回り、口から紫色の液体を吐きだした。
ジェイクもここぞとばかりに剣へ烙印の力を込めた。
(ジェイク一つ試してみて)
「こんな時に何だ!」
(力を全身に纏わせて)
ベルメアがこんな時に冗談や面白半分で場違いな提案はしない。ジェイクは信じて烙印の力を全身に纏わせて走った。
(どう? 身体能力が上がってない?)
言われてみて気付く。
跳躍力、腕力、全身の間隔、呼吸。全てが前世で鍛え上げた肉体か、それ以上に思える程動かしやすい。
今まで別の事に集中していたから気付かなかったが、ベルメアが気付いたのは、先程炎の波へ飛び込む際に動きが違って見えたからであった。
「これならいける!」
(いい、短時間で済ませるのよ)
砂浜での特訓を思いだすと、身体能力向上状態を堪能するのは危険と判断した。
ジェイクの目当ては化け物の首を落とすか、頭か胸を一突きにする。化け物の暴れ具合から頭を貫くか落とすがこの危険な状況で安全策と判断した。
迫って来る死者たちを斬り払い、暴れてくる腕や塔の瓦礫を高く跳躍して躱し、大きな岩や壁の残骸を跳んで化け物の身体へ飛び乗った。しかし、あまりにも暴れるので、態勢を維持するのに困難を極めた。
「複合魔術・冷撃!」
状況に見合った大技をトウマが放ち、化け物の下半身を氷漬けにして止めた。
「数秒の時間稼ぎです! ジェイクさん早く!」
「おう!」
トウマは引き続き迫って来る死者と対峙し、高く跳躍したジェイクは化け物の背中へと飛び乗った。
下半身の氷漬けと白い竜巻の影響でさらに苦しむ化け物の背で、ジェイクは伏せて機会を待つ。
(ジェイクどうするの!)
化け物が一向に鎮まる気配を見せず、このままではジェイクの体力が尽きる状況であった。
「くそっ! やるしかねぇなぁっ!」
常備している残り二つの烙印を剣に込めた。すると、いつもより赤紫色の光が燃え盛る炎のように現れた。
「馬鹿! そんな荒技」
ベルメアが姿を出して呼び止める声を虚しく、ジェイクは咆哮して化物の頭を切り裂いた。
途端、叫び声を発せずに化け物は一切の動きを止め、連動するように死者の軍勢も動きを止めた。また、トウマが起こした竜巻も内側からの力に耐えれず弾けて消える。
倒れたサラの傍らで、汚れてボロボロのローブを纏った大人の二倍はある背丈の、骨のように細い手足の人のような”何か”が、両腕を天に掲げて咆哮している姿で止まっている。
トウマとビィトラとベルメアが周囲の様子を伺った。
突如、巨大な化け物が、まるで建物が倒壊するような轟音を響かせて体が崩れた。その最中、
「いびゃあああああああああ!!!!!」
奇声を発してサラの傍にいる化け物も崩れた。
二体の化物が崩れると死者達も一斉に朽ち果て、全てが土か砂と変わり果てた。
「ジェイク! ジェイクしっかりして!」
トウマがベルメアの元へ駆け寄ると、ジェイクは身体半分に土が被さった状態で動かないでいる。
「どうして?!」
「無理な大技使ったからよ! 早く治して!」
とはいえ、疲弊しているトウマもどこまで治癒術がもつか分からない。
一応、自身が使える最大の治癒術を使うも、数秒後には光が消えかかった。
「まずい、このままじゃジェイクさんが!」
トウマ達はジェイクの死を覚悟した。矢先、誰かが歩み寄って来る音が聴こえ振り向くと、ミゼルとミライザが共に寄って来た。
「どうやら……ジェイクが無茶をして死の間際といった所か」
「なに落ち着いて分析してるんですか! 死にかけてるんですよ!」
ミライザが近寄って、ジェイクの背に手を触れた。
「落ち着きなさい。術師も無理な魔力消費をするとこうなります。死にかけてはいるけど、まだ余裕があるわ」
「けど、どうやって回復を?」
「少しお待ちなさい」
ミライザは立ち上がると、サラの方を向き、一瞬で姿を消した。そして数秒後、サラを抱えて戻って来た。
「ほう、これは便利な移動方法だ」
「ここは魔女の領域ですから漂ってる魔力を利用させてもらったわ。今の私でも『暒空魔術』のちょっとした大技もご覧の通り。けど、今ので多くの魔力を使ったからここでは二度とできなくてよ」
サラをジェイクの傍へ寝かせ、左手でサラの腹部を、右手でジェイクの背に乗せた。
現状、ジェイクとサラの命に関わる窮地なため、ミライザの魔術についてトウマとミゼルは追求しなかった。
「何をするんですか?」
「魔力の業の一部を性質変化させて彼に注ぎます」
言葉の意味を求めるも、「後にして」と返される。
ミライザが小言で何かを呟くと、彼女の両手から緑色の光が発せられる。
しばらくして光がミライザの全身に広がると、次にサラの腹部から現れた青い小さな光が、ミライザの胴体へ流れた。
二種類の光が合わさり黄色い光に変色すると、ジェイクの身体へ流れた。
光が入ると、ジェイクの全身がビクリッと動き、暫く手足が痙攣すると、仰向けになり音が鳴るほどの激しく呼吸をした。
「――ヒャア、ヒャア、ヒャア……、はぁ、はぁ、はぁ……」
元の呼吸へ戻ると、ようやくジェイクは意識を取り戻した。
「……おいおい、こいつぁ……どういう状況……だ?」
呆然とした視界に飛び込んだのは、ミライザが先で、周囲に守護神とトウマ、ミゼルががいる状態であった。
「どうもこうもないわよバカ! 死んだと思ったじゃないこの大バカ騎士ぃぃ!」
説明よりも先にベルメアの怒声が飛ばされる。
周囲の雰囲気から化け物退治は達成されたと理解して安堵した。
ジェイク達にとって幸運なのは、死者の攻撃方法が単純で、倒せば烙印が出現すること。
ビィトラの策は、サラ達が町で使用した白い石を使用するものであった。
石には魔力が籠り、少量の魔力でも多大な効力を発揮するモノとなっている。これにより、サラを縛る”闇の力”に抗う特定の術が無くとも、簡単な光の治療術で闇の力を払拭できる。白い石の力を利用して威力を底上げする策である。
方法は、隙を見て石をバラまき治療術に専念。しかし問題は、地面にばらまいた石を何かしらの方法で飛ばされでもしたら策が台無しとなる。
ここへ来るまでどういった方法で作戦を遂行するかをトウマは考え続けた。しかし死者が湧き、巨大魔獣が現れ、サラを前にすると頭が真っ白になってどういう作戦にしようか分からなくなる。
一方、ジェイクは序盤から剣に烙印の力を込め、一撃で多数の死者を薙ぎ払った。
(あんた! 烙印技は加減しないと、すぐに体力切れになるわよ!)
「わーってる!」
倒した死者から烙印を合計三つ回収し、攻めてくる人骨の軍隊を普通の剣で斬り続けた。
(作戦はいつだトウマ!)
(待ってください! アンデッドが!)
魔力消費の少ない炎と土の術で攻めてくる死者をあしらっているが、未だにどう手を打てばいいか悩んでいる。
「ぼさっとしてると死ぬよ」
サラがトウマに向けて手を翳すと、炎の波が押し寄せて来た。
炎の強大さ、魔力の質を即座に察すると、手を抜いた術では防げないと覚悟し、両手を翳して暴風を出現させた。
(トウマ駄目だ! それじゃ――)
ビィトラの忠告は遅かった。
炎の波に風の防護壁では数秒は防げたとしても風の流れに炎が誘導されて防護壁を覆い、やがてはトウマへと強まった炎が襲った。
「トウマ伏せろ!」
烙印の力を身体に纏い、炎の中に飛び込んだジェイクが剣を振り、炎を散らせた。だが、無理をした反動により、片膝を付いて息を切らせる始末である。
トウマが駆け寄ると治癒術を使用した。
「無茶しすぎですよ!」
「言ってる場合か」
サラに目をやると、二撃目の炎が準備されている。更に、巨大魔獣まで本格的に動き出した。
「作戦変更だ。お前は巨大魔獣。俺は烙印でサラを斬る」
ベルメアが姿を現した。
「ジェイク何を!?」
「仕方ねぇだろ! 奴は強すぎる。生半可じゃ」
「いえ、僕が彼女を救います。手は浮かびました」
ジェイクが立ち上がり、トウマを見ると、嘘を吐いてない真剣な表情であった。
「次は助けれねぇぞ」
「分かってます」
互いに目当ての敵の方へ向かった。
(トウマ、どうするの?)ビィトラが訊く。
「さっきの失態で手が浮かんだ」
両手に暴風を帯びた魔力を発生させた。
「異種同属魔法・爆風壁」
(それじゃあさっきの二の舞)
「いや、いける!」
二人は同時に強大な術を放った。
サラは同じ炎の波。しかしトウマの風は暴風壁ではなく、炎をも包み込みサラを中心に竜巻となって姿を変えた。
「小癪ですね。暴風の壁、こういうことですか」
炎の竜巻の中でサラは手を翳して炎を吸い取った。
「貴方の竜巻、利用させてもらいます」
サラが魔力を込めようとした時、風の流れに異変を感じた。
「これでいい。これで石が一定の高さで渦巻く」
トウマの竜巻は昇る風の竜巻と、上昇も下降もしない統一方向をグルグル回る竜巻が合わさっている。よって、白い石が竜巻内で渦巻いている。
サラの術で解いて払う事は可能だが時間は少しかかる。よって、トウマはこの千載一遇に治療術と風術を合わせて飛ばした。
竜巻内の石に反応した治療術がさらに活性化し、竜巻を白色の光で染め上げた。
「ぐぅぅ……、な、にをぉぉ……ごぁぁ、が、ぎぃぃぃ」
誰にも気づかれない竜巻内でサラの形相が魔獣のように変わり、呻き苦しんでいた。
必死に術を使用して足掻こうにも、白い竜巻の影響で動くのも困難であった。
サラ救出作戦の影響は、巨大な魔獣にも及んだ。
竜巻が白くなってから突然もがき苦しみ、ベルゲバの塔や大地、仲間である死者の軍と、見境なしに殴る蹴るで暴れ回り、口から紫色の液体を吐きだした。
ジェイクもここぞとばかりに剣へ烙印の力を込めた。
(ジェイク一つ試してみて)
「こんな時に何だ!」
(力を全身に纏わせて)
ベルメアがこんな時に冗談や面白半分で場違いな提案はしない。ジェイクは信じて烙印の力を全身に纏わせて走った。
(どう? 身体能力が上がってない?)
言われてみて気付く。
跳躍力、腕力、全身の間隔、呼吸。全てが前世で鍛え上げた肉体か、それ以上に思える程動かしやすい。
今まで別の事に集中していたから気付かなかったが、ベルメアが気付いたのは、先程炎の波へ飛び込む際に動きが違って見えたからであった。
「これならいける!」
(いい、短時間で済ませるのよ)
砂浜での特訓を思いだすと、身体能力向上状態を堪能するのは危険と判断した。
ジェイクの目当ては化け物の首を落とすか、頭か胸を一突きにする。化け物の暴れ具合から頭を貫くか落とすがこの危険な状況で安全策と判断した。
迫って来る死者たちを斬り払い、暴れてくる腕や塔の瓦礫を高く跳躍して躱し、大きな岩や壁の残骸を跳んで化け物の身体へ飛び乗った。しかし、あまりにも暴れるので、態勢を維持するのに困難を極めた。
「複合魔術・冷撃!」
状況に見合った大技をトウマが放ち、化け物の下半身を氷漬けにして止めた。
「数秒の時間稼ぎです! ジェイクさん早く!」
「おう!」
トウマは引き続き迫って来る死者と対峙し、高く跳躍したジェイクは化け物の背中へと飛び乗った。
下半身の氷漬けと白い竜巻の影響でさらに苦しむ化け物の背で、ジェイクは伏せて機会を待つ。
(ジェイクどうするの!)
化け物が一向に鎮まる気配を見せず、このままではジェイクの体力が尽きる状況であった。
「くそっ! やるしかねぇなぁっ!」
常備している残り二つの烙印を剣に込めた。すると、いつもより赤紫色の光が燃え盛る炎のように現れた。
「馬鹿! そんな荒技」
ベルメアが姿を出して呼び止める声を虚しく、ジェイクは咆哮して化物の頭を切り裂いた。
途端、叫び声を発せずに化け物は一切の動きを止め、連動するように死者の軍勢も動きを止めた。また、トウマが起こした竜巻も内側からの力に耐えれず弾けて消える。
倒れたサラの傍らで、汚れてボロボロのローブを纏った大人の二倍はある背丈の、骨のように細い手足の人のような”何か”が、両腕を天に掲げて咆哮している姿で止まっている。
トウマとビィトラとベルメアが周囲の様子を伺った。
突如、巨大な化け物が、まるで建物が倒壊するような轟音を響かせて体が崩れた。その最中、
「いびゃあああああああああ!!!!!」
奇声を発してサラの傍にいる化け物も崩れた。
二体の化物が崩れると死者達も一斉に朽ち果て、全てが土か砂と変わり果てた。
「ジェイク! ジェイクしっかりして!」
トウマがベルメアの元へ駆け寄ると、ジェイクは身体半分に土が被さった状態で動かないでいる。
「どうして?!」
「無理な大技使ったからよ! 早く治して!」
とはいえ、疲弊しているトウマもどこまで治癒術がもつか分からない。
一応、自身が使える最大の治癒術を使うも、数秒後には光が消えかかった。
「まずい、このままじゃジェイクさんが!」
トウマ達はジェイクの死を覚悟した。矢先、誰かが歩み寄って来る音が聴こえ振り向くと、ミゼルとミライザが共に寄って来た。
「どうやら……ジェイクが無茶をして死の間際といった所か」
「なに落ち着いて分析してるんですか! 死にかけてるんですよ!」
ミライザが近寄って、ジェイクの背に手を触れた。
「落ち着きなさい。術師も無理な魔力消費をするとこうなります。死にかけてはいるけど、まだ余裕があるわ」
「けど、どうやって回復を?」
「少しお待ちなさい」
ミライザは立ち上がると、サラの方を向き、一瞬で姿を消した。そして数秒後、サラを抱えて戻って来た。
「ほう、これは便利な移動方法だ」
「ここは魔女の領域ですから漂ってる魔力を利用させてもらったわ。今の私でも『暒空魔術』のちょっとした大技もご覧の通り。けど、今ので多くの魔力を使ったからここでは二度とできなくてよ」
サラをジェイクの傍へ寝かせ、左手でサラの腹部を、右手でジェイクの背に乗せた。
現状、ジェイクとサラの命に関わる窮地なため、ミライザの魔術についてトウマとミゼルは追求しなかった。
「何をするんですか?」
「魔力の業の一部を性質変化させて彼に注ぎます」
言葉の意味を求めるも、「後にして」と返される。
ミライザが小言で何かを呟くと、彼女の両手から緑色の光が発せられる。
しばらくして光がミライザの全身に広がると、次にサラの腹部から現れた青い小さな光が、ミライザの胴体へ流れた。
二種類の光が合わさり黄色い光に変色すると、ジェイクの身体へ流れた。
光が入ると、ジェイクの全身がビクリッと動き、暫く手足が痙攣すると、仰向けになり音が鳴るほどの激しく呼吸をした。
「――ヒャア、ヒャア、ヒャア……、はぁ、はぁ、はぁ……」
元の呼吸へ戻ると、ようやくジェイクは意識を取り戻した。
「……おいおい、こいつぁ……どういう状況……だ?」
呆然とした視界に飛び込んだのは、ミライザが先で、周囲に守護神とトウマ、ミゼルががいる状態であった。
「どうもこうもないわよバカ! 死んだと思ったじゃないこの大バカ騎士ぃぃ!」
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