憑く鬼と天邪鬼

赤星 治

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四幕 静かに関わっていた者達

五 彩夏と六蔵

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 檜摩の国の港町で、六蔵と彩夏は偶然出会った。
 二人には、決められた日時、場所で集合する報せを受けている為、この出会いはまさしく偶然といえた。

 民の格好をしている二人を傍から見れば父と娘。歳の離れた夫婦とも見分けられるが、そうなった場合、女性は男性の後方を歩くや、夫婦の証となる特定のかんざしを付けなければならないため、二人はそうでないと分かる。

 偽りの親子として二人は行動し、ある食事処へ入った。

「して彩夏、えらく遠出で別行動をとっていたみたいだが、何を探っていた?」小声である。

 共に幼少から、小声を聞き取る鍛錬を積み重ねて来た二人は、音や口の動きで何を語っているかを聞き取った。

「人聞きが悪いですよ。ある者達の出身地を調べてほしいとの事でして、一体の希鬼の件を済ませた伊生と共に探っておりましたよ」
「ほう珍しい。あの伊生とお主が。ろくに話をせんから馬が合わんと思っておったが」
「互いに話す機会が無かっただけです。旅路は良好でしたし、彼の演技と機転のおかげで、早く仕事が済みました。その内容も後日集合した時に話しますよ」

 聞こうとした六蔵の思惑を悟ってか、先にそれを言われてしまった。

「まいったなぁ。心を読める口か?」

 まさか。とでも表しているかのように微笑んで返す。

「貴方の聞きたがりで有名ですからね。どうせ話すなら、その時で良いでしょ。貴方もいらっしゃるのですから」

 六蔵はなにも言い返せず、注文した丼物を食べだした。
 彩夏は、一口茶を飲み、一呼吸置いて話しかけた。

「時に、集結まではあくまで単独行動で?」
「ああ、そのつもりだ。面倒事は若いもんで励んでくれ」
「何を御調べに?」

 さっきの質問を流したので、六蔵も秘匿するものと思っていた。

「ある幻体が憑いた若者と話しをしたくてな。後を追っている」

 意外に答えてくれて、そのまま話を続けた。

「成果は如何ほどで?」
「いんやぁ、上手くはいかんよ。必ず傍に誰かおる上に、下手をすれば憑きモノが身体の主導権を握っている。偶然を装い温泉で会って話をしようとしたが、あやつ、どうも烏の行水ですぐ上がってしまう」
「では、なにも収穫は無しと?」
「いや、連れの修行僧の若造と話が出来、色々と気になる世間話が出来た」
「それは今回の件に関する事ですか?」

 答えて良いものか。そう思い、言葉を選ぶ。

「……間接的に……かと。まあ、色々思うとこもあるがあくまで仮説だ。集合して考察しあう時になにか役に立てればいい情報ばかり。此方も期待してもらいたい」

 注文が茶菓子だけであった彩夏は、残り一口分を食し、熱い茶を啜り、立ち上がった。

「では、貴方の情報、楽しみにしてますね」

 ◇◇◇◇◇

 彩夏が去ると、アオが話しかけて来た。

「なんだ? お前等仲間内で腹の探り合いが趣味か?」
「んなわけないだろ。ただでさえ、こんなまどろっこしい盗聴対策を講じてる現状で、そうそう腹の内を公には出来んぞ。事の終盤でようやく打ち明けられる」
「つー事は、集合って命令は、情報公開の場ってことだな」

 六蔵は黙々と料理を食べた。

「で、どうすんだよ。探りてぇ若造とは中々話が出来ねぇ状態だぞ」
「心配無用だ。連れの若造から色々重要な事が聴けた。件の鬼は、どうやらすぐに見つかりそうだ」

 六蔵の強気を他所に、アオは退屈そうに答え、寝る。と言って会話を経った。

 食事を終えた六蔵は、ゆっくり茶を飲み、飲み終えると席を立った。
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