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第五話(3)
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「2024年7月9日
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
メール拝見しました。
集合的無意識の中で私を見られたとのこと、また貴会のネットワークで私が誰であるか特定できたことに、驚きを感じています。
私は精神科医として、またひとりの人間として、ひきこもりの方々に心を寄せてきたつもりですが、集合的無意識に降りてくるのに、中光様がどのような訓練、手段を使われたのか、また中光様以外の会員の方も集合的無意識の中を行き来しておられるのか、貴会の活動として「総力をあげて取り組んできたある出来事」とは何であるのか、とても興味を感じています。
まずは、そのあたりから教えてもらえればと思っています。
返信お待ちしています。
精神科医 鈴木 恵 」
「2024年7月10日
精神科医 鈴木 恵 先生へ
返信ありがとうございました。
メールが先生まで届くのか、届いたとしても返信がいただけるのか、とても心細く思っていたので、返信がいただけて、とてもうれしいです。
私はひきこもり歴が20年を越えた人間です。現実に、人とまじわる、ふれあうのが不可能な一方で、集合的無意識を感じるなどの、目に見えない部分の人の精神を感じ取ることついては、おそらく、一般の人はもちろんのこと、精神科医の先生でも想像が及ばないのではないかと思うくらい私達は敏感です。
天は二物を与えずというところでしょうか?
私の場合、高校を中退してひきこもりはじめ、まだ若かった夏のある日、部屋が暑くて少しでも冷たいフローリングの床に、べちゃ~っとうつぶせていた時に、突然、身体が沈んでゆく感覚に襲われたのです。
あれあれあれと思ううちに、身体から離れた体(意識体?)は沈んでゆきながら、目の前に、子どもの頃から今までの、いろいろな思い出のシーンが現れては消えてゆき(よい思い出はあまりありませんが)、やがて、あたりが薄暗がりの世界になり、薄暗がりの海中に漂っているような経験をしたのが、私が集合的無意識までゆきついた最初です。
もっともその時は、自分が顕在意識から潜在意識を通りぬけて、集合的無意識まで降りてきたとは理解できませんでした。
その状態で、ここどこだろう?と思っているうちに眠ってしまい、目が覚めたらいつもの自分の部屋の自分の身体に戻っていました。
そういうことが何度かあり、「この体験は何だ?ここはどこだ?」と、のろい頭を回転させているうちに、教科書に載っていた図と解説とのつながりに気がついたのです。
目が覚めて、ほとんど使っていない高校の倫理社会の教科書を引っぱり出し、ぺージをめくり、見つけました。
ユングが提唱した精神構造の模式図。
水面から上に出ている「顕在意識」。水面下の「潜在意識」。そして、潜在意識の下で、すべての人類とつながっている「集合的無意識」。
私が沈んでいたのはここか!
その時の驚きは衝撃でした。
その後、自分が集合的無意識に行ったり帰ったりすることを、自分でコントロールできるようになりました。
そうして、現在につながる仲間との出会いを集合的無意識の中ではたすのですが、まだまだ先が長いので、今日のメールはここまでにしておきます。
先生からご質問など受け付けます。
今日は、これにて失礼します。
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 」
「2024年7月11日
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
中光様は集合的無意識に、自然に行けるようになったとのこと、驚きました。
私は、集合的無意識まで降りることができるようになるのに、数年の瞑想の修行が必要でした。
このことは、中光さん以外の、ひきこもりの方々にとっても、共通した能力なのでしょうか?
そうであるなら、私はひきこもりの方々を、誤解していたことになります。
そこのところを教えていただけますか?
精神科医 鈴木 恵 」
「2024年7月12日
精神科医 鈴木 恵 先生へ
ご質問ありがとうございます。
集合的無意識に降りてゆける能力については、多くのひきこもりの人に、共通した能力と私は認識しています。
私達は、現実の人間関係に、適応することができません。
しかし、今では、非常に多くの、ひきこもりの仲間と友人になっています。
私達はみんな、集合的無意識の中で出会いました。
はじめて集合的無意識の中で、仲間と出会った時には、ここに自分以外の人が来ていることに驚きましたが、私達は顔を見れば
、ひきこもりに共通する表情があるかどうかで、相手がひきこもりかどうか判断できます。集合的無意識にいるのは、ひきこもりの人数が圧倒的に多いです。
たまに、鈴木先生のように、修行をして、集合的無意識に来れるようになった人をお見かけします。僧侶の方など、時々お見かけします。
でも、その方々は、鈴木先生と同じように、私達ひきこもりとは違う目的があって、集合的無意識に来られているのであるから、私達から声をかけたりすることはしませんでした。
今回、現実の世界で鈴木先生に、接触を試みるのは、本当に勇気がいりました。
けれども、集合的無意識の中で、鈴木先生をお見かけしてから、現実の世界でも普通に生きておられて、さらに精神科医として、私達のことを理解してくださるのではないかと期待のできる鈴木先生に、私達が十数年も取り組んで来たことの成果を、見てもらいたくなったのです。そして、いつの日にか、私達が成したことを、現実の世界で生きている人々にも、知らせてもらいたいのです。
もったいをつけているようですが、次回のメールで、私達が成したことをお伝えします。
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 」
「2024年7月12日
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
私を集合的無意識の中で、見つけてもらって、メールをいただき、こうしてやりとりが出来ることになって、私は、とてもとても喜びを感じています。次のメールを楽しみにしています。
精神科医 鈴木 恵 」
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
メール拝見しました。
集合的無意識の中で私を見られたとのこと、また貴会のネットワークで私が誰であるか特定できたことに、驚きを感じています。
私は精神科医として、またひとりの人間として、ひきこもりの方々に心を寄せてきたつもりですが、集合的無意識に降りてくるのに、中光様がどのような訓練、手段を使われたのか、また中光様以外の会員の方も集合的無意識の中を行き来しておられるのか、貴会の活動として「総力をあげて取り組んできたある出来事」とは何であるのか、とても興味を感じています。
まずは、そのあたりから教えてもらえればと思っています。
返信お待ちしています。
精神科医 鈴木 恵 」
「2024年7月10日
精神科医 鈴木 恵 先生へ
返信ありがとうございました。
メールが先生まで届くのか、届いたとしても返信がいただけるのか、とても心細く思っていたので、返信がいただけて、とてもうれしいです。
私はひきこもり歴が20年を越えた人間です。現実に、人とまじわる、ふれあうのが不可能な一方で、集合的無意識を感じるなどの、目に見えない部分の人の精神を感じ取ることついては、おそらく、一般の人はもちろんのこと、精神科医の先生でも想像が及ばないのではないかと思うくらい私達は敏感です。
天は二物を与えずというところでしょうか?
私の場合、高校を中退してひきこもりはじめ、まだ若かった夏のある日、部屋が暑くて少しでも冷たいフローリングの床に、べちゃ~っとうつぶせていた時に、突然、身体が沈んでゆく感覚に襲われたのです。
あれあれあれと思ううちに、身体から離れた体(意識体?)は沈んでゆきながら、目の前に、子どもの頃から今までの、いろいろな思い出のシーンが現れては消えてゆき(よい思い出はあまりありませんが)、やがて、あたりが薄暗がりの世界になり、薄暗がりの海中に漂っているような経験をしたのが、私が集合的無意識までゆきついた最初です。
もっともその時は、自分が顕在意識から潜在意識を通りぬけて、集合的無意識まで降りてきたとは理解できませんでした。
その状態で、ここどこだろう?と思っているうちに眠ってしまい、目が覚めたらいつもの自分の部屋の自分の身体に戻っていました。
そういうことが何度かあり、「この体験は何だ?ここはどこだ?」と、のろい頭を回転させているうちに、教科書に載っていた図と解説とのつながりに気がついたのです。
目が覚めて、ほとんど使っていない高校の倫理社会の教科書を引っぱり出し、ぺージをめくり、見つけました。
ユングが提唱した精神構造の模式図。
水面から上に出ている「顕在意識」。水面下の「潜在意識」。そして、潜在意識の下で、すべての人類とつながっている「集合的無意識」。
私が沈んでいたのはここか!
その時の驚きは衝撃でした。
その後、自分が集合的無意識に行ったり帰ったりすることを、自分でコントロールできるようになりました。
そうして、現在につながる仲間との出会いを集合的無意識の中ではたすのですが、まだまだ先が長いので、今日のメールはここまでにしておきます。
先生からご質問など受け付けます。
今日は、これにて失礼します。
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 」
「2024年7月11日
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
中光様は集合的無意識に、自然に行けるようになったとのこと、驚きました。
私は、集合的無意識まで降りることができるようになるのに、数年の瞑想の修行が必要でした。
このことは、中光さん以外の、ひきこもりの方々にとっても、共通した能力なのでしょうか?
そうであるなら、私はひきこもりの方々を、誤解していたことになります。
そこのところを教えていただけますか?
精神科医 鈴木 恵 」
「2024年7月12日
精神科医 鈴木 恵 先生へ
ご質問ありがとうございます。
集合的無意識に降りてゆける能力については、多くのひきこもりの人に、共通した能力と私は認識しています。
私達は、現実の人間関係に、適応することができません。
しかし、今では、非常に多くの、ひきこもりの仲間と友人になっています。
私達はみんな、集合的無意識の中で出会いました。
はじめて集合的無意識の中で、仲間と出会った時には、ここに自分以外の人が来ていることに驚きましたが、私達は顔を見れば
、ひきこもりに共通する表情があるかどうかで、相手がひきこもりかどうか判断できます。集合的無意識にいるのは、ひきこもりの人数が圧倒的に多いです。
たまに、鈴木先生のように、修行をして、集合的無意識に来れるようになった人をお見かけします。僧侶の方など、時々お見かけします。
でも、その方々は、鈴木先生と同じように、私達ひきこもりとは違う目的があって、集合的無意識に来られているのであるから、私達から声をかけたりすることはしませんでした。
今回、現実の世界で鈴木先生に、接触を試みるのは、本当に勇気がいりました。
けれども、集合的無意識の中で、鈴木先生をお見かけしてから、現実の世界でも普通に生きておられて、さらに精神科医として、私達のことを理解してくださるのではないかと期待のできる鈴木先生に、私達が十数年も取り組んで来たことの成果を、見てもらいたくなったのです。そして、いつの日にか、私達が成したことを、現実の世界で生きている人々にも、知らせてもらいたいのです。
もったいをつけているようですが、次回のメールで、私達が成したことをお伝えします。
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 」
「2024年7月12日
全日本ひきこもり当事者の会
会長 中光 正希 様
私を集合的無意識の中で、見つけてもらって、メールをいただき、こうしてやりとりが出来ることになって、私は、とてもとても喜びを感じています。次のメールを楽しみにしています。
精神科医 鈴木 恵 」
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