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Tier11 平川第五中学校爆破事件
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平川第五中学校爆破事件。
五年前に起きた大規模な爆破事件で、ニュースやワイドショーで連日大きく取り上げられていたのをよく覚えている。
「はい、覚えています。爆弾があったクラスにいた全員が爆発に巻き込まれて亡くなった事件でしたよね。そのクラスの一人の男子生徒が爆弾犯で、犯人だった男子生徒も爆発に巻き込まれて亡くなったって聞きました。犯人が亡くなってしまったせいで犯行の動機が分からなかったり、爆弾を本当に犯人である男子生徒が作ったのかなど多くの謎が残ったままで、後味の悪い事件だったのをよく覚えています」
「本当によく覚えているね。当時の君はまだ小学校六年生か中学一年生ぐらいの年齢だろう」
榊原大臣が関心したように言った。
「えっと、それは中学二年ぐらいの時に一時期的に今までに起きたいろいろな事件に興味が沸いて調べてみたりしていたんです。その中で、平川第五中学校爆破事件ことも調べていたので覚えていたんです。今はもう調べたりはしないんですけどね。何で急にいろいろな事件に興味が沸いたのかは自分でも分からないんです」
「ほぅ。一過性のものとはいえ良い心がけだな。何事も興味を持ったことに対して探求することは良いことだからね」
「あ、ありがとうございます!」
思わぬ形で榊原大臣に褒められた僕はつい嬉しくなってしまった。
「この事件によって亡くなった方は40名に上ります。犯人は当時中学三年生だった井ノ上 泰希でした。彼は自分のクラスである三年三組に自作のプラスチック爆弾を設置し、五時限目の授業中に39人のクラスメイトを巻き添えに自ら命を絶ちました」
早乙女さんが事件の概要を詳しく説明してくれた。
「だが、これもまた事実とは異なる虚偽の情報だ。この事件は八雲によって……いや、我々政府によって引き起こされたものだ」
……
僕は言葉が出なかった。
榊原大臣は僕の反応を一瞥して話を続けた。
「井ノ上泰希として生活していた八雲がプラスチック爆弾を起爆したのは紛れもない事実だ。しかし、そのプラスチック爆弾を用意したのは我々政府に他ならなかった。当時、我々政府はマイグレーションの元凶が八雲だと判明したばかりだった。そして、井ノ上が八雲であるという情報を掴むと即座に八雲を殺害するための作戦が立てられた。その作戦の責任者として宛がわれたのが私の前任の大臣だった。と言っても、前任の大臣はこの作戦の尻ぬぐいをするためだけにお膳立てされた捨て駒に過ぎなかった。作戦の指揮は警察にいた前任の大臣派の者によって行われた。作戦内容は、マイグレーターを殺害することを想定して極秘裏に編成された特殊部隊『六七部隊』による八雲への圧倒的火力を持っての奇襲攻撃だった。あの頃は今以上にマイグレーターについて解明されていないことが多く、マイグレーションを引き起こすには他者の体に接触しなければならないと考えられていた。そのため、八雲の不意を突くことで体に接触する隙を与えずに殺害することが可能だと思われた。八雲の不意を突くには授業中が最適だと判断された。マイグレーションについて極秘にしている我々政府が多くの目撃者が発生する状況で行動に出るとは八雲は想定していないと考えられたからだ。六七部隊には作戦目的が二つあった。一つは八雲加琉麻の殺害。もう一つはその場に居合わせ目撃者となった者の全員を情報漏洩防止のために殺害することであった。その際に使用される予定だったのがプラスチック爆弾だった。つまり、八雲が起爆したプラスチック爆弾は我々政府が用意した物だったということだ」
「……マイグレーションのことが世間に明るみにならないようにするためだけに何十人もの人を殺すんですか? 作戦が成功しようと失敗しようと最初から殺すつもりだったんですよね?」
「そうだ。40人の命よりも八雲による影響の方が重要だと我々政府は判断した。どうかね? 君は我々政府を軽蔑するかね? だがね、伊瀬君。時に政府とはこういう生き物であり、こういう生き物でなければならいのだよ」
そう言った榊原大臣の声には冷たさと諦めが感じられた。
「……いえ、軽蔑はしません。たぶん、それが政府の人達にとっては最善の選択だったんだと思います」
「そうか、ありがとう」
榊原大臣はそう静かに言って、引き続き話しだした。
「だが、知っての通り作戦は失敗した。六七部隊の三分の一は八雲によって殺害された。問題は目撃者となった八雲のクラスメイトだった。プラスチック爆弾を起爆させるはずだった隊員が八雲によって殺害され、起爆の権限は八雲に奪取された。我々政府は情報漏洩を防ぐ手立てを完全に失っていた。しかし、八雲は理由は分からないが我々政府の意図をくみ取ったかのようにプラスチック爆弾を起爆させた。そのおかげで、作戦は失敗したものの君が知っている『平川第五中学校爆破事件』として処理することが出来た。これが『平川第五中学校爆破事件』の全貌だ」
僕達は大事な事ほど知らされていない。
僕達は大事な事ほど知ろうとしない。
僕達は上辺だけの取り繕った情報を信じ込まされている。
僕達は上辺だけの取り繕った情報だけしか信じようとしない。
そんな僕達に榊原大臣達を糾弾する権利はあるのだろうか?
「一つだけ質問させてください」
「何だね?」
「今でも、八雲を殺すためだったら何の罪も無い人達でも殺しますか?」
「……我々政府は一枚岩ではないため、政府としての見解は言えない。だが、私個人としては決して罪の無い国民を殺しはしないと約束しよう。そのために私は『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』を発足し、そこにマイグレーターを所属させ彼らの協力を得ている。これらのことを知った上でも、君は私の頼みを聞いてくれるかね?」
そう僕に聞いて来た榊原大臣の瞳はどこまでも真っ直ぐな瞳をしていた。
「もちろんです」
その真っ直ぐな瞳に答えるように僕は強く答えた。
五年前に起きた大規模な爆破事件で、ニュースやワイドショーで連日大きく取り上げられていたのをよく覚えている。
「はい、覚えています。爆弾があったクラスにいた全員が爆発に巻き込まれて亡くなった事件でしたよね。そのクラスの一人の男子生徒が爆弾犯で、犯人だった男子生徒も爆発に巻き込まれて亡くなったって聞きました。犯人が亡くなってしまったせいで犯行の動機が分からなかったり、爆弾を本当に犯人である男子生徒が作ったのかなど多くの謎が残ったままで、後味の悪い事件だったのをよく覚えています」
「本当によく覚えているね。当時の君はまだ小学校六年生か中学一年生ぐらいの年齢だろう」
榊原大臣が関心したように言った。
「えっと、それは中学二年ぐらいの時に一時期的に今までに起きたいろいろな事件に興味が沸いて調べてみたりしていたんです。その中で、平川第五中学校爆破事件ことも調べていたので覚えていたんです。今はもう調べたりはしないんですけどね。何で急にいろいろな事件に興味が沸いたのかは自分でも分からないんです」
「ほぅ。一過性のものとはいえ良い心がけだな。何事も興味を持ったことに対して探求することは良いことだからね」
「あ、ありがとうございます!」
思わぬ形で榊原大臣に褒められた僕はつい嬉しくなってしまった。
「この事件によって亡くなった方は40名に上ります。犯人は当時中学三年生だった井ノ上 泰希でした。彼は自分のクラスである三年三組に自作のプラスチック爆弾を設置し、五時限目の授業中に39人のクラスメイトを巻き添えに自ら命を絶ちました」
早乙女さんが事件の概要を詳しく説明してくれた。
「だが、これもまた事実とは異なる虚偽の情報だ。この事件は八雲によって……いや、我々政府によって引き起こされたものだ」
……
僕は言葉が出なかった。
榊原大臣は僕の反応を一瞥して話を続けた。
「井ノ上泰希として生活していた八雲がプラスチック爆弾を起爆したのは紛れもない事実だ。しかし、そのプラスチック爆弾を用意したのは我々政府に他ならなかった。当時、我々政府はマイグレーションの元凶が八雲だと判明したばかりだった。そして、井ノ上が八雲であるという情報を掴むと即座に八雲を殺害するための作戦が立てられた。その作戦の責任者として宛がわれたのが私の前任の大臣だった。と言っても、前任の大臣はこの作戦の尻ぬぐいをするためだけにお膳立てされた捨て駒に過ぎなかった。作戦の指揮は警察にいた前任の大臣派の者によって行われた。作戦内容は、マイグレーターを殺害することを想定して極秘裏に編成された特殊部隊『六七部隊』による八雲への圧倒的火力を持っての奇襲攻撃だった。あの頃は今以上にマイグレーターについて解明されていないことが多く、マイグレーションを引き起こすには他者の体に接触しなければならないと考えられていた。そのため、八雲の不意を突くことで体に接触する隙を与えずに殺害することが可能だと思われた。八雲の不意を突くには授業中が最適だと判断された。マイグレーションについて極秘にしている我々政府が多くの目撃者が発生する状況で行動に出るとは八雲は想定していないと考えられたからだ。六七部隊には作戦目的が二つあった。一つは八雲加琉麻の殺害。もう一つはその場に居合わせ目撃者となった者の全員を情報漏洩防止のために殺害することであった。その際に使用される予定だったのがプラスチック爆弾だった。つまり、八雲が起爆したプラスチック爆弾は我々政府が用意した物だったということだ」
「……マイグレーションのことが世間に明るみにならないようにするためだけに何十人もの人を殺すんですか? 作戦が成功しようと失敗しようと最初から殺すつもりだったんですよね?」
「そうだ。40人の命よりも八雲による影響の方が重要だと我々政府は判断した。どうかね? 君は我々政府を軽蔑するかね? だがね、伊瀬君。時に政府とはこういう生き物であり、こういう生き物でなければならいのだよ」
そう言った榊原大臣の声には冷たさと諦めが感じられた。
「……いえ、軽蔑はしません。たぶん、それが政府の人達にとっては最善の選択だったんだと思います」
「そうか、ありがとう」
榊原大臣はそう静かに言って、引き続き話しだした。
「だが、知っての通り作戦は失敗した。六七部隊の三分の一は八雲によって殺害された。問題は目撃者となった八雲のクラスメイトだった。プラスチック爆弾を起爆させるはずだった隊員が八雲によって殺害され、起爆の権限は八雲に奪取された。我々政府は情報漏洩を防ぐ手立てを完全に失っていた。しかし、八雲は理由は分からないが我々政府の意図をくみ取ったかのようにプラスチック爆弾を起爆させた。そのおかげで、作戦は失敗したものの君が知っている『平川第五中学校爆破事件』として処理することが出来た。これが『平川第五中学校爆破事件』の全貌だ」
僕達は大事な事ほど知らされていない。
僕達は大事な事ほど知ろうとしない。
僕達は上辺だけの取り繕った情報を信じ込まされている。
僕達は上辺だけの取り繕った情報だけしか信じようとしない。
そんな僕達に榊原大臣達を糾弾する権利はあるのだろうか?
「一つだけ質問させてください」
「何だね?」
「今でも、八雲を殺すためだったら何の罪も無い人達でも殺しますか?」
「……我々政府は一枚岩ではないため、政府としての見解は言えない。だが、私個人としては決して罪の無い国民を殺しはしないと約束しよう。そのために私は『警視庁公安部第六課 突発性脳死現象対策室』を発足し、そこにマイグレーターを所属させ彼らの協力を得ている。これらのことを知った上でも、君は私の頼みを聞いてくれるかね?」
そう僕に聞いて来た榊原大臣の瞳はどこまでも真っ直ぐな瞳をしていた。
「もちろんです」
その真っ直ぐな瞳に答えるように僕は強く答えた。
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