召喚されたら勇者よりもチートだったのだが

イサ

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七話

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 森に囲われた道を走っていると、ゴブリン魔物と戦っている同い年くらいの少年がいた。
 ゴブリンは数体いて、このままだと負けうかもしれない。

 俺はそれを見て見ぬふりをした。

 しかし、そのまま後ろを通り抜けようとすると、ヴィオラがゴブリン達に突っ込んで行った。

 「おい待て殺すな!」

 俺がそう叫ぶと、ヴィオラはゴブリンを殺すのをやめて下がった。

 少年はなぜか逃げてきて俺を盾にした。

 こいつ、いい度胸してやがる!

 「おい、お前が倒してこい。  その剣は飾りか?  ほら、サクって切って終わりだ」

 しかし、少年は激しく首を振って拒否する。

 まあ、分かりきっていたけどな。

 「そうか。  じゃ、あれら俺が殺すからな?」

 俺はそう言うと、身体強化魔法を使い、魔法で手の上に槍の形をした氷を作る。  そして、それをゴブリン目掛けて投げる。

 「グキャアッ!」

 ゴブリンのお腹には大きな風穴ができ、そのまま倒れて力尽きた。

 俺はそれを一瞥すると、もう一本氷の槍を作り、逃げようとしているゴブリンに投擲する。  そして、それを繰り返す。  森に逃げたゴブリンも、木を貫通した槍が貫く。

 全てのゴブリンを処理すると、ヴィオラがこちらを驚いた表情で見ていた。  その瞳には少し恐怖の感情が宿っているように見える。

 「終わったぞ。  ヴィオラもう行こう。  そろそろ日が暮れる。  宿を探さないとダメだろ?」

 「あ、ああ、確かにそうだな」

 ヴィオラは頷くと、件を収めた。  そして、走ろうとすると、少年が話しかけてくる。

 「あ、あのう」

 「どうした?  もしかしてお礼にお金くれるのか?」

 ヴィオラが俺を睨みつけてくる。

 「い、いや、そうじゃなくて。  ありがとうございました。  冒険者・・・ですよね?」

 「そっちの美人さんは冒険者だが、俺は庶民だ」

 少年はぽかんとした表情で俺を見てくる。

 「庶民・・・?  そんなに強いのに?  あ、もしかして先生とか?」

 「あ?  俺は別に無職だけど」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 二人から冷たい目で見られる。  これは仕方がないと思うんだが。

 「別にいいんだよ。  最悪騎士にでもなるし」

 さらに冷たい目で見られる。

 「ハヤトは騎士をなんだと思っているんだ。  騎士は強いだけではないんだぞ」

 「そうですよ。  騎士は勇気があって、高潔で誠実なんです」

 俺はそれを聞いて笑う。  どこにそんな要素があっただろうか、と。

 「そうでもないぞ?  冷やかしあったり、好きな女性の好みを話したり、意外と普通のおっさんばっかだ」

 「・・・そろそろ行かないか?」

 「僕も討伐部位を取ってから帰ります。  それでは今日は本当にありがとうございました」

 そう言って少年と別れた。

 その道中、ヴィオラが俺の方を真剣な顔で見つめ、質問してきた。

 「さっきはどうして私に殺すのを止めたんだ?」

 ああ、さっき叫んだやつか。

 「剣で斬ろうとしたろ?  血がつくじゃないか。  それなら魔法の方が無駄に時間を割かなくていいかと思ってな」

 「・・・ハヤトにとってゴブリンはそこらの虫と変わらないのか?」

 「変わるさ。  人型でデカくて、ゴブリンの方が精神的にくるわ。  まぁ、虫とゴブリンの強さを比べるのはどうかと思うが、正直脅威には感じないな」

 「・・・そうか」

 ヴィオラは残念そうにそう言った。

 きっと悔しいのだろう。  だが、仕方がない。  人は平等ではないし、生まれた時からだいたい決まっているものだ。

 「なぁ、ヴィオラ。  そこまで強いことに意味はあるのか?  名誉があったら嬉しいだろう。  だが、それだけだ。  お金が稼げるだろう。  だが、今でも稼げているんだろう?」

 「私は強くなりたいんだ。  誰よりも。  それが私の夢だからだ」 

 夢・・・か。  俺には夢なんてあったことが無い。  小学校の頃も、とりあえず真似してお金持ちと書いておいた。  中学も無難なのを選んだ。  

 「いいなぁ。  本当に羨ましい」

 俺がそう呟くと、ヴィオラは少し俺を睨んできた。

 「なんだ?  嫌味か」

 「いやいや、ただ羨ましいだけだ。  俺には夢も願望もほとんどないからな」

 ヴィオラは怪訝ほうな表情で俺を見る。

 「お前も男なんだ。  どうせ変な願望でもあるんどろう?」

 「どうなんだろう。  女性といい仲になりたい。  それは当たり前の願いだ。  とは言ってもそこまで願ってないけどな。  あ、でも一つだけ最近大きな夢が出来たな」

 そうだ。  俺には願望があるじゃないか。  それは正しく夢、目標にしては大きすぎるもの。

 「どんな夢なんだ?」

 「家族にもう一度逢いたい。  また、なんでもない日常を過ごしたい。  それだけだ。  どうだ?  変な夢だろう?」

 いつの間にか俺らの足は止まっていた。  ヴィオラは悲痛そうな表情で俺を見る。

 どうしてのだろうか?

 そう思っていると、ヴィオラは俺の頬に手を当ててきた。

 「きっと逢えるさ。  世界には不思議な事が多い。  そのくらいの夢を叶えることくらい出来るだろう」

 俺はヴィオラが触れていない方の頬を触る。  そこはいつの間にか濡れていて、涙が流れていた。

 どうやら、 また泣いてしまっていたらしい。

 「はははっ、本当に涙脆くなったな。  そろそろ歳なんだろうか?  まだ十代なんだけどな」

 俺がそう呟くと、ヴィオラに抱きしめられた。  そして、頭を優しく撫でられる。

 俺はしばらくそのまま泣いていた。








 街の城門に着いた時にはもう夕方だった。  門を抜け、宿屋に向かう。

 その後、宿屋でご飯を食べ、魔法で体を洗うとベッドで横になり、疲れていたせかいそのまま深く眠りについた。
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