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六話
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俺は冒険者ギルドに来た。
扉を開け中に入ると、たくさんの人の喋り声が聞こえてきた。 机や椅子が置いてあり、昼間からお酒を飲んでいる人もいる。 依頼書が貼って板があり、受付には女性と男性が座っている。
俺はとりあえず男性の受付に並ぶ。 女性の方はなんかチャラそうな冒険者っぽい人が居るからだ。
「すいませーん、冒険者になりたいんですけど」
俺がそう言うと受付の男性はにこやかな笑顔を浮かべた。
俺受付やろうかな。 絶対女性との関わりが多くなるよね。 そしたらモテそう。
「はい。 それで試験を受けたことはありますか?」
テストでもあるのだろうか? 字読めないから魔物とかは少し聞いただけなんだが。
「あー、ないですね」
「そうですか。 では、まず試験について説明しますね。 まず、試験は実技と知識についての試験があります」
あー、おわた。 両方無理かも。
「あの、実技と知識って具体的には・・・?」
「実技はどれくらい戦闘が出来るのかと、魔物の解体、処理ですね。 知識は薬草やここらの地理についてです」
「そうなんですか。 戦闘以外出来そうにないんですけど」
「大丈夫ですよ。 冒険者を目指す方のほとんどはそこでつまづきますから」
「おぉ。 ならどうすればいいんでしょうか?」
「教官がおりますので、そちらの授業を受けていただければと」
なんとかなりそうだ。
「授業を受けるにはどうすればいいですかね?」
「はい、そちらですが、銅貨5枚で三日間授業を受けられます。 今日もやっているのですが、今日は最終日ですので、明日の今日と同じ時間帯に受けるのがよろしいかと」
金なら国からいくらか貰っているから心配ない。
「わかりました。 では、また明日来ますね」
そう言って冒険者ギルドの扉を開けて出ると、
「おじさん達勇者様のお仲間なの?」
その言葉を聞いてピクリと止まる。
「ああ、そうだぜ? だから、俺らが代わりにその依頼受けてやるよ」
「ほんと!? 依頼受けてくれるの!?」
「ああ、もちろんだ。 だから、その依頼料をこちらに渡してくれるか?」
こんな会話を聞いて誰が無視できるだろうか? いや、無視する人は多くいるかもしれない。 だが、気分が悪くなるのはみんな同じだろう。
「なぁ、お前・・・」
「何を嘘を言っている!」
すると、突然赤い髪の女性が叫んだ。
腰には剣を帯びている。 つり目な上に、怒っているせいかとても怖く見える。
よし、ここはこいつに任せて俺は逃げよう。
俺は回れ右をして冒険者ギルドに戻ろうとする。
「おい! そこのお前もこいつらの仲間だろう? そこを動くんじゃない」
なんてことだ。
この女に勇者を連れてきて本当ですよ? とでも言ってやろうか!
「なぁ、俺無関係なんだけど」
すると、女性は俺の言葉を鼻で笑った。
「今そいつらに話しかけようとしていただろう? それに、その立派な装備は今回のように奪って買ったものだろう?」
「え? そんなことないぞ?」
「もういい。 私はこれでもAランクだ。 多少問題を起こしても問題ないだろう」
どうやら強い女性のようだ。 どうすればいいんだろう。
と、思っていたら、突然目の前のチンピラ達が騒ぎ出した。
「な!? Aランクだと! ハッタリだ!」
「だ、だけど、こいつ赤い髪で真っ白の剣を持ってやがる! もしかして・・・剣姫か!?」
え? 剣姫? 姫はもっとお淑やかなもんじゃないのか?
「マジかよ!? に、逃げるぞ!」
そう言って逃げて行ったチンピラ達。 残った俺。
なんかなぁ。
「お前は逃げないのか?」
俺を蔑んだ目で見ながら女が言った。
「別に? 俺あいつら初めてみたし。 なぁ君。 俺無関係だよな?」
俺はオロオロしている女の子にそう聞いた。
「う、うん。 でも、どうしよう」
少女はどうやら困っているみたいだ。 そいえば依頼がどうのって言ってたな。
「どうしたんだ? 依頼がどうのって言っていたな。 俺は冒険者じゃないが受けてやろうか?」
「はっ、馬鹿か? 冒険者でもないのに依頼を受けるだと? お前は冒険者をなめているのか?」
こいつうざいなぁ。
「うーん、なめてるのかなぁ? 俺冒険者よく知らないし、どうなんだろ?」
「それを聞いているんだろうに。 それで、どんな依頼を受けて欲しいんだ?」
冒険者の女は少し屈んで少女に聞いた。
「えっとね、夢幻の花が必要なの」
「夢幻の花だと!? 難易度A、下手すればSだぞ! ・・・そんなの何に使うんだ?」
難易度? よく分からんが大変なようだ。
「えっとね、お兄ちゃんが病気で、治すにはそれが必要なんだって。 でも、お父さんもお母さんも無理だって言うから、私が依頼をしに来たの!」
「そ、そうか。 それは偉いな? だが、そんなの・・・・・・」
赤髪の女性は困ったような表情で少女を見ている。
どうしたものか。 だが、きっとここでこの女性が受けなければ誰も受けないだろう。 この女性は有名なようだし、ここで少女を見捨てれば騙されてさっきみたいに金だけ取られていきそうだ。 ここで無視すれば俺が殺したも同じ。
リスクがあるからやらない、それは正しいだろう。 ここで俺が受けなくても誰も俺を責めない。 だが、これから気分よく生きれるだろうか? なんのために俺は訓練したんだ? この世界で生きるため? その通りだろう。 俺が訓練をしたのは力を手に入れるためだ。
俺は異世界人でこの世界の人間よりもアドバンテージがある。 そう簡単にはやられないだろう。 それに、少女とその兄を救えなかっただなんて、周やその取り巻きに笑われてしまうだろう。 俺は守れるのか? なんてカッコイイこと言ってんだ。 このくらいやってやらあ。
「なぁ、そこの剣姫さん。 どこにその花があるのか知っているのか?」
赤髪の女性が怪訝そうに俺を見てくる。 やっぱり疑わしいのだろう。
「ああ、だがお前には無理だろう。 お前からは魔力も感じない。 筋肉もそこまであるようには見えない。 あまり思い上がるんじゃない」
そこまで言われるとさすがに腹が立つ。
「俺はどこにあるのかと聞いたんだ。 それと、人は見た目で判断するもんじゃないぜ? 勇者だって似たようなもんだ」
おお、怖い怖い。 凄い睨んでくる。 勇者を引き合いに出したのは間違いか。
「お前はまだ勇者の仲間のつもりか!」
「うーん、勇者の仲間ではないけど、知り合いかなぁ? それと、俺はあいつらとは関係ないって。 それと君、報酬は成功してからでいい。 だけどその代わり、他の人には依頼しないでくれるかい?」
「お兄ちゃんが依頼を受けてくれるの?」
「ああ、もちろん! それに安心してくれていい。 俺がもし死にそうになったら森一帯を氷漬けにして失敗した合図を出してやる。 そしたら他の誰かに依頼したらいい。 な? 安心だろ?」
少女は不安そうに俺を見た。
「でも・・・」
「それとお願いなんだが、もし俺が帰ってこなかったら勇者には依頼しないでくれ。 それでも依頼するのなら、強くなってから来いとでも伝えといてくれ。 まぁ、これは保険だな。 おい、そこの剣姫様。 花の形と場所を教えやがれ」
「・・・身の程知らずが。 だが、もしお前一人で行くというのなら私がついて行こう。 形も場所も知っている」
「・・・なぁ、なんで場所を知っているんだ? そこがよく分からないんだが」
「混合パーティで行ったんだ。 Aランク以上のパーティーで組んだ・・・な。 それでやっと行けたのだ。 場所はシェルべの森。 ここから東に馬車で一日の場所にフルンセス領がある。 そこからすぐ近くだ。 ・・・・・・本当に行くつもりか? 身の程知らずならやめておけ。 あの森は本当に危険だ。 Bランク以上の魔物が普通に出る」
「冒険者のランクも魔物のランクも知らねぇよ。 それで、馬車で一日ってことは徒歩でどれくらいなんだ?」
赤髪の女性は額に手を当てため息を吐いた。
いちいち腹がたつやつだなぁ。
「そんなことも知らないのか。 お前は家で軟禁でもされていたのか?」
「おい、それでどうなんだよ?」
「ほとんど同じだ。 お、おいちょっと待て。 もう行くつもりか?」
「ん? あぁ、そうか。 教えてくれてありがとさん。 あ、それと君の家の場所を教えてくれるかい? 届けなくちゃダメだからな」
「うん!」
少女は頷くと、俺の手を引いて歩いていく。 すると、赤髪の女性も俺達の後ろを付いてきた。 無視すればいいだろう。 そして、少女の家とおもしき場所につく。
「ここが君の家かい?」
「うん!」
「よし、じゃあここで待っているんだよ? 知らない人について行っちゃダメだからな? 俺は勇者だ!って人が居たら、その人の名前を聞いて、周って名前じゃなかったら偽物だからな?」
「わかった!」
「うんうん、いい子だな。 それじゃ、また今度な」
俺はそう言うと、街の出口を目指す。
「お前はお人好しなのか? それとも騙しただけか? それに、なぜお前が勇者の名前を知っている?」
こいつは物わかりが悪いんだろうか?
「勇者は俺の友人だからな。 今もこの街にいると思うぞ?」
「それは知っている。 さっき騒いでいたからな。 遠目に見ても凄まじい魔力を持っていた」
こいつは魔力で人の強さを測っているのかもしれない。
「なぁ、お前。 この指輪を知っているか?」
俺はそう言って嵌めている指輪を見せた。 魔力の操作は完璧に出来るようになったが、さすがに街で何が起こるか分からないため指輪を付けている。
「・・・それは魔封じの指輪か? 高価な物を持っているな。 知り合いの魔法使いが持っていたが、お前に必要があるのか?」
「おう。 俺はこの指輪がないと安心出来ないんだ。 つけ忘れて寝てしまえば何が起きるか分かったもんじゃねぇ」
「用心深いんだな。 そんなに魔力の量を知られるのが嫌なのか?」
量を知られないため? 本来はそのために使うのかもしれない。
「うーん、 まぁそうかな」
「なんだ煮え切らないな。 それよりも死ぬだけだぞ? お前には意識が過剰な部分があるのだろう。 やめておくなら今のうちだぞ?」
過剰・・・か。 確かに自信過剰なところがあるのかもしれない。 気をつけなきゃな。
「しつこい。 それと、お前はどこまでついてくるつもりだ?」
「お前が諦めるところまでだ」
「けっ、なら尚更諦めるかよ」
そのまま歩いていると、城門についた。
「おい、まさかこのまま行くのか!? 馬車では行かないのか!?」
剣姫さんが騒いでいる。
「ああ。 数時間・・・下手したら数十分で着くだろ」
剣姫さんが俺を睨んでくる。
「お前はバカなのか? そんなに走り続けられるわけなかろう。 魔力だって足りなくなるだろうし、魔物とも遭遇するかもしれない。 何が起こるか分からないんだぞ?」
どうやらかなり心配性みたいだ。
「はぁ、それならここで待っておくか? 俺は店に何があるかも知らない。 今から見て回ってたら日が暮れちまう。 それに、お前が走れなくなったら担いで走ってやるよ」
「ほざけ。 私は担がないからな」
城門を抜けようとすると、門兵がこちらを驚いた顔で見た。
「こ、これは隼人様! 他の方々は一緒ではないんですか?」
門番は俺にそう聞いてきた。 他の門兵も俺の前に来て敬礼をしている。
「ああ、あいつらとは別行動をすることにしたんだ。 俺は戦いが苦手だからな」
俺はそう言って笑う。 すると、門兵さんは微妙そうな顔で見てくる。
「またまたご謙遜を。 勇者様でもあなたに勝てるようには思えませんよ」
門兵はおかしなことを言ってきた。
「そんなことないだろう。 周みたいのと戦って勝つにはかなり苦労しそうだぞ?」
「はははっ、そこで無理とは仰らないのですね。 それで、どうして剣姫と・・・?」
そう言って剣姫を見る。
「へぇ、こいつやっぱり有名なのか。 美人だからか? あんま強そうには見えないけどな」
剣姫さんがこちらを睨みつけてくる。
「さすがに比べるのはどうかと・・・」
「確かにそうだな。 俺の行先だけど、シェルべの森だ」
俺がそう言うと門兵はギョッとした目で俺を見る。
「勇者様方と一緒の方がいいのでは・・・・・・?」
「こんなんに巻き込むのもあれだろう。 それと、俺と周が次に会うのは魔王が倒された後がいいしな。 それに、バラバラで行動すると言った直後に手伝えだなんて言ったら夏綺がうるさそうだ」
俺がそう言って笑うと門兵達もつられて笑う。
「確かにそうですね。 では、気をつけて行ってきてください」
「おう。 それと、俺が戻ってこなくても周達には伝えるなよ? 伝えるとしても半年は後からにしてくれ。 どうせ俺が死んだんなら周達が行っても同じだ。 それに、別のことしてるかもしれないしな」
「分かりました。 ですが、あまりそういう冗談を言うと副団長が拗ねるかもしれませんよ?」
副団長とは俺に剣の稽古をしてくれたナタリアさんだ。 今はもう友人で、敬語では話されなくなった。
「確かにな。 それじゃあ、またすぐに逢いに行くって伝えといてくれ。 それと、俺魔王は勇者に任せてブラブラするから。 じゃ」
俺はそう言って城門を通り抜けた。
そして、フルンセス領の方向へ道なりに走る。
「もしかしてお前本当に勇者の仲間だったのか?」
剣姫さんが突然そんなことを聞いてきた。
「さぁ? 仲間だったかどうかは知らないが、友人だな」
「お前は一体なんなんだ?」
剣姫さんが真剣な表情でこちらを見てきた。
「何がだ?」
「お前には不自然な点が多すぎる。 まず、その防具だ。 見るからに高価な物だ。 そして、次に知識の無さ。 そして、最後になぜ兵士達に慕われているか、だ」
おおぅ。 なんて評価すればいいのか分からない。
「別に。 ただ勇者と仲が良くて、一緒に訓練をしてたんだよ。 で、勇者と一緒に魔王を倒しに行くと思われていただけだな」
「・・・・・・色々と可能性はある。 お前が話したくないなら別にいいだろう」
どうやら問題ないみたいだ。
「それにしても余裕そうだな?」
「このぐらいは余裕だ。 身体強化魔法も使っているからな」
どうやら魔法を使っていたようだ。 それならもっと速度を上げた方がいいだろう。 俺は全力疾走した。
「それが限界か? そんなんで勇者の仲間になれるのか?」
なんか隣の剣姫さんが煽ってくる。 くそっ、俺だって魔法を使えば・・・。 だけどダメだ。 あれは加減が難しい。 絶対にこの剣姫を置き去りにする。
「俺は勇者パーティーに自分から辞退したんだぜ?」
「そうか。 プレッシャーに耐えきれなくなったか? さっきの兵士の話も嘘っぽいな」
「知らねぇよ。 それに、俺の得意分野は魔法だ。 後ろで守られながらぶっぱなすのが仕事だ」
剣姫はそれを鼻で笑う。
「そんなんでよくシェルべの森へ行こうと思ったな。 ある意味感心するぞ」
「はいはい。 黙って走ろうや」
しばらく走ると、剣姫さんが少し疲れたっぽかったので休憩することにした。
「別に私は疲れていない」
「どう見ても疲れているだろう。 魔力が少ない人は大変そうだねぇ」
俺は肩で息をする剣姫さんを見てそう言った。
「・・・・・・」
「なぁ、そろそろ着きそうか? あ、今更だけどお前の名前なんて言うんだ?」
剣姫さんは機嫌が悪いのか俺を睨んでいる。
「・・・・・・ヴィオラだ」
「へぇ。 いい名前じゃん。 俺は隼人な。 で、ヴィオラってなんで冒険者なんてやってるんだ?」
「冒険者に憧れたからだ。 やっている理由は儲かるからか」
やっぱり世の中金だな。
「ふーん、やっぱり冒険者って儲かるの?」
「ああ、上の方になればな」
どうやら下はあんまりみたいだ。
「なるほど。 で、なんか魔物来てるけど倒す? 休憩やめて無視する?」
ヴィオラは顎に手を当て、こちらを見た。
「あれを倒しといてくれ。 あれぐらい倒せるだろう? でないと森の魔物なんて到底無理だ」
どうやら実力が見たいようだ。 なら、魔法で軽くやってやろう。
俺は地面に魔力を伝える。 すると、次の瞬間には凄い速度で魔力を吸っていく。 ある程度増えると、俺は魔力を吸わないように操作する。 これは、毎日魔力の操作をしていたせいか出来るようになった。
そして増えた魔力をイノシシ型の魔物の下まで持っていくと、土を動かす魔法を使う。
《アースクエイク》
すると、地面が割れてイノシシ型の魔物が下に落ちる。 そして地面を無理やり元に戻し、魔物を潰す。
詠唱は、数回使った時に魔力の変化の仕方が分かり、必要なくなった。 魔法の名前も本当は要らないんだが、イメージを強く持つためだ。
「これでいいか?」
「あ、ああ。 だが、今のはなんだ? 上級魔法のように見えたんだが、詠唱はどうした?」
ヴィオラは驚いた表情でこちらを見てくる。
「何回か魔法使えば出来るだろう。 第一、お前だって身体強化魔法詠唱してねぇだろ」
「だがそれは上級だぞ!? そんな高度の魔法を詠唱なしなんて・・・・・・」
驚いた様子のヴィオラを見て、さっきまでの怒りはだいたい収まった。
「ふふん、これでもそこそこできる自身はあるんだ。 特に魔法はな。 剣では勇者に勝てる自身はないが、魔法では勝てると思うぞ? てか、あいつなんであんなに剣覚えんのはえーんだよ。 剣道部なら出場禁止だな」
「そ、そうか。 さすがは元勇者パーティーのメンバーか。 だが、なら尚更疑問がある。 どうしてパーティーを抜けたんだ? 勇者の仲間に憧れる者は多いんだぞ?」
何故、か。 そんなの決まっている。
「めんどいからだよ。 そもそも俺は初めから魔王と戦うなんて言ってないし。 訓練受けたのもマリヤが怖いのとナタリアと仲良くなるためだし」
ヴィオラは険しい顔で俺を見てくる。
「不純だな。 それと、ついうっかりと刺されないことだな。 嫉妬する者も多いぞ? 私もその一人だ」
うわぁ。 刺されないように気をつけよう。
「ふーん、なら俺があいつに・・・。 いや、足でまといになるかもだしやめた方がいいか」
俺がそう呟くと、ヴィオラがめっちゃ睨んできた。
「これでも剣には自信がある。 そう言われると不快だ」
「えー? でもこんだけで驚いたりバテてたらなぁ。 せめてもうちょっと身体能力が欲しいかもなぁ。 技術じゃ補いきれないかもしれないし」
ヴィオラがさらに俺を睨みつけてくる。
「お前の方が走るのが遅いではないか。 私も回復魔法やポーションを使えばどうにかなる」
やっぱり勘違いしているのだろう。 俺は魔法を一切使っていない。 だが、それを教えるべきではないだろう。 自信を失ってしまったら困る。
「そうかい。 なら、勇者のお眼鏡にかなうといいな。 あいつはお人好しだから情に訴えればどうにかなるかもだぞ?」
「そんなんで仲間になりたいとは思わない。 私にもプライドはある」
プライドしかないように思えるけどな。
「なんだその目は」
「なんでもねーよ。 さ、そろそろ行くか」
休憩を終え、また走るのを再開した、
扉を開け中に入ると、たくさんの人の喋り声が聞こえてきた。 机や椅子が置いてあり、昼間からお酒を飲んでいる人もいる。 依頼書が貼って板があり、受付には女性と男性が座っている。
俺はとりあえず男性の受付に並ぶ。 女性の方はなんかチャラそうな冒険者っぽい人が居るからだ。
「すいませーん、冒険者になりたいんですけど」
俺がそう言うと受付の男性はにこやかな笑顔を浮かべた。
俺受付やろうかな。 絶対女性との関わりが多くなるよね。 そしたらモテそう。
「はい。 それで試験を受けたことはありますか?」
テストでもあるのだろうか? 字読めないから魔物とかは少し聞いただけなんだが。
「あー、ないですね」
「そうですか。 では、まず試験について説明しますね。 まず、試験は実技と知識についての試験があります」
あー、おわた。 両方無理かも。
「あの、実技と知識って具体的には・・・?」
「実技はどれくらい戦闘が出来るのかと、魔物の解体、処理ですね。 知識は薬草やここらの地理についてです」
「そうなんですか。 戦闘以外出来そうにないんですけど」
「大丈夫ですよ。 冒険者を目指す方のほとんどはそこでつまづきますから」
「おぉ。 ならどうすればいいんでしょうか?」
「教官がおりますので、そちらの授業を受けていただければと」
なんとかなりそうだ。
「授業を受けるにはどうすればいいですかね?」
「はい、そちらですが、銅貨5枚で三日間授業を受けられます。 今日もやっているのですが、今日は最終日ですので、明日の今日と同じ時間帯に受けるのがよろしいかと」
金なら国からいくらか貰っているから心配ない。
「わかりました。 では、また明日来ますね」
そう言って冒険者ギルドの扉を開けて出ると、
「おじさん達勇者様のお仲間なの?」
その言葉を聞いてピクリと止まる。
「ああ、そうだぜ? だから、俺らが代わりにその依頼受けてやるよ」
「ほんと!? 依頼受けてくれるの!?」
「ああ、もちろんだ。 だから、その依頼料をこちらに渡してくれるか?」
こんな会話を聞いて誰が無視できるだろうか? いや、無視する人は多くいるかもしれない。 だが、気分が悪くなるのはみんな同じだろう。
「なぁ、お前・・・」
「何を嘘を言っている!」
すると、突然赤い髪の女性が叫んだ。
腰には剣を帯びている。 つり目な上に、怒っているせいかとても怖く見える。
よし、ここはこいつに任せて俺は逃げよう。
俺は回れ右をして冒険者ギルドに戻ろうとする。
「おい! そこのお前もこいつらの仲間だろう? そこを動くんじゃない」
なんてことだ。
この女に勇者を連れてきて本当ですよ? とでも言ってやろうか!
「なぁ、俺無関係なんだけど」
すると、女性は俺の言葉を鼻で笑った。
「今そいつらに話しかけようとしていただろう? それに、その立派な装備は今回のように奪って買ったものだろう?」
「え? そんなことないぞ?」
「もういい。 私はこれでもAランクだ。 多少問題を起こしても問題ないだろう」
どうやら強い女性のようだ。 どうすればいいんだろう。
と、思っていたら、突然目の前のチンピラ達が騒ぎ出した。
「な!? Aランクだと! ハッタリだ!」
「だ、だけど、こいつ赤い髪で真っ白の剣を持ってやがる! もしかして・・・剣姫か!?」
え? 剣姫? 姫はもっとお淑やかなもんじゃないのか?
「マジかよ!? に、逃げるぞ!」
そう言って逃げて行ったチンピラ達。 残った俺。
なんかなぁ。
「お前は逃げないのか?」
俺を蔑んだ目で見ながら女が言った。
「別に? 俺あいつら初めてみたし。 なぁ君。 俺無関係だよな?」
俺はオロオロしている女の子にそう聞いた。
「う、うん。 でも、どうしよう」
少女はどうやら困っているみたいだ。 そいえば依頼がどうのって言ってたな。
「どうしたんだ? 依頼がどうのって言っていたな。 俺は冒険者じゃないが受けてやろうか?」
「はっ、馬鹿か? 冒険者でもないのに依頼を受けるだと? お前は冒険者をなめているのか?」
こいつうざいなぁ。
「うーん、なめてるのかなぁ? 俺冒険者よく知らないし、どうなんだろ?」
「それを聞いているんだろうに。 それで、どんな依頼を受けて欲しいんだ?」
冒険者の女は少し屈んで少女に聞いた。
「えっとね、夢幻の花が必要なの」
「夢幻の花だと!? 難易度A、下手すればSだぞ! ・・・そんなの何に使うんだ?」
難易度? よく分からんが大変なようだ。
「えっとね、お兄ちゃんが病気で、治すにはそれが必要なんだって。 でも、お父さんもお母さんも無理だって言うから、私が依頼をしに来たの!」
「そ、そうか。 それは偉いな? だが、そんなの・・・・・・」
赤髪の女性は困ったような表情で少女を見ている。
どうしたものか。 だが、きっとここでこの女性が受けなければ誰も受けないだろう。 この女性は有名なようだし、ここで少女を見捨てれば騙されてさっきみたいに金だけ取られていきそうだ。 ここで無視すれば俺が殺したも同じ。
リスクがあるからやらない、それは正しいだろう。 ここで俺が受けなくても誰も俺を責めない。 だが、これから気分よく生きれるだろうか? なんのために俺は訓練したんだ? この世界で生きるため? その通りだろう。 俺が訓練をしたのは力を手に入れるためだ。
俺は異世界人でこの世界の人間よりもアドバンテージがある。 そう簡単にはやられないだろう。 それに、少女とその兄を救えなかっただなんて、周やその取り巻きに笑われてしまうだろう。 俺は守れるのか? なんてカッコイイこと言ってんだ。 このくらいやってやらあ。
「なぁ、そこの剣姫さん。 どこにその花があるのか知っているのか?」
赤髪の女性が怪訝そうに俺を見てくる。 やっぱり疑わしいのだろう。
「ああ、だがお前には無理だろう。 お前からは魔力も感じない。 筋肉もそこまであるようには見えない。 あまり思い上がるんじゃない」
そこまで言われるとさすがに腹が立つ。
「俺はどこにあるのかと聞いたんだ。 それと、人は見た目で判断するもんじゃないぜ? 勇者だって似たようなもんだ」
おお、怖い怖い。 凄い睨んでくる。 勇者を引き合いに出したのは間違いか。
「お前はまだ勇者の仲間のつもりか!」
「うーん、勇者の仲間ではないけど、知り合いかなぁ? それと、俺はあいつらとは関係ないって。 それと君、報酬は成功してからでいい。 だけどその代わり、他の人には依頼しないでくれるかい?」
「お兄ちゃんが依頼を受けてくれるの?」
「ああ、もちろん! それに安心してくれていい。 俺がもし死にそうになったら森一帯を氷漬けにして失敗した合図を出してやる。 そしたら他の誰かに依頼したらいい。 な? 安心だろ?」
少女は不安そうに俺を見た。
「でも・・・」
「それとお願いなんだが、もし俺が帰ってこなかったら勇者には依頼しないでくれ。 それでも依頼するのなら、強くなってから来いとでも伝えといてくれ。 まぁ、これは保険だな。 おい、そこの剣姫様。 花の形と場所を教えやがれ」
「・・・身の程知らずが。 だが、もしお前一人で行くというのなら私がついて行こう。 形も場所も知っている」
「・・・なぁ、なんで場所を知っているんだ? そこがよく分からないんだが」
「混合パーティで行ったんだ。 Aランク以上のパーティーで組んだ・・・な。 それでやっと行けたのだ。 場所はシェルべの森。 ここから東に馬車で一日の場所にフルンセス領がある。 そこからすぐ近くだ。 ・・・・・・本当に行くつもりか? 身の程知らずならやめておけ。 あの森は本当に危険だ。 Bランク以上の魔物が普通に出る」
「冒険者のランクも魔物のランクも知らねぇよ。 それで、馬車で一日ってことは徒歩でどれくらいなんだ?」
赤髪の女性は額に手を当てため息を吐いた。
いちいち腹がたつやつだなぁ。
「そんなことも知らないのか。 お前は家で軟禁でもされていたのか?」
「おい、それでどうなんだよ?」
「ほとんど同じだ。 お、おいちょっと待て。 もう行くつもりか?」
「ん? あぁ、そうか。 教えてくれてありがとさん。 あ、それと君の家の場所を教えてくれるかい? 届けなくちゃダメだからな」
「うん!」
少女は頷くと、俺の手を引いて歩いていく。 すると、赤髪の女性も俺達の後ろを付いてきた。 無視すればいいだろう。 そして、少女の家とおもしき場所につく。
「ここが君の家かい?」
「うん!」
「よし、じゃあここで待っているんだよ? 知らない人について行っちゃダメだからな? 俺は勇者だ!って人が居たら、その人の名前を聞いて、周って名前じゃなかったら偽物だからな?」
「わかった!」
「うんうん、いい子だな。 それじゃ、また今度な」
俺はそう言うと、街の出口を目指す。
「お前はお人好しなのか? それとも騙しただけか? それに、なぜお前が勇者の名前を知っている?」
こいつは物わかりが悪いんだろうか?
「勇者は俺の友人だからな。 今もこの街にいると思うぞ?」
「それは知っている。 さっき騒いでいたからな。 遠目に見ても凄まじい魔力を持っていた」
こいつは魔力で人の強さを測っているのかもしれない。
「なぁ、お前。 この指輪を知っているか?」
俺はそう言って嵌めている指輪を見せた。 魔力の操作は完璧に出来るようになったが、さすがに街で何が起こるか分からないため指輪を付けている。
「・・・それは魔封じの指輪か? 高価な物を持っているな。 知り合いの魔法使いが持っていたが、お前に必要があるのか?」
「おう。 俺はこの指輪がないと安心出来ないんだ。 つけ忘れて寝てしまえば何が起きるか分かったもんじゃねぇ」
「用心深いんだな。 そんなに魔力の量を知られるのが嫌なのか?」
量を知られないため? 本来はそのために使うのかもしれない。
「うーん、 まぁそうかな」
「なんだ煮え切らないな。 それよりも死ぬだけだぞ? お前には意識が過剰な部分があるのだろう。 やめておくなら今のうちだぞ?」
過剰・・・か。 確かに自信過剰なところがあるのかもしれない。 気をつけなきゃな。
「しつこい。 それと、お前はどこまでついてくるつもりだ?」
「お前が諦めるところまでだ」
「けっ、なら尚更諦めるかよ」
そのまま歩いていると、城門についた。
「おい、まさかこのまま行くのか!? 馬車では行かないのか!?」
剣姫さんが騒いでいる。
「ああ。 数時間・・・下手したら数十分で着くだろ」
剣姫さんが俺を睨んでくる。
「お前はバカなのか? そんなに走り続けられるわけなかろう。 魔力だって足りなくなるだろうし、魔物とも遭遇するかもしれない。 何が起こるか分からないんだぞ?」
どうやらかなり心配性みたいだ。
「はぁ、それならここで待っておくか? 俺は店に何があるかも知らない。 今から見て回ってたら日が暮れちまう。 それに、お前が走れなくなったら担いで走ってやるよ」
「ほざけ。 私は担がないからな」
城門を抜けようとすると、門兵がこちらを驚いた顔で見た。
「こ、これは隼人様! 他の方々は一緒ではないんですか?」
門番は俺にそう聞いてきた。 他の門兵も俺の前に来て敬礼をしている。
「ああ、あいつらとは別行動をすることにしたんだ。 俺は戦いが苦手だからな」
俺はそう言って笑う。 すると、門兵さんは微妙そうな顔で見てくる。
「またまたご謙遜を。 勇者様でもあなたに勝てるようには思えませんよ」
門兵はおかしなことを言ってきた。
「そんなことないだろう。 周みたいのと戦って勝つにはかなり苦労しそうだぞ?」
「はははっ、そこで無理とは仰らないのですね。 それで、どうして剣姫と・・・?」
そう言って剣姫を見る。
「へぇ、こいつやっぱり有名なのか。 美人だからか? あんま強そうには見えないけどな」
剣姫さんがこちらを睨みつけてくる。
「さすがに比べるのはどうかと・・・」
「確かにそうだな。 俺の行先だけど、シェルべの森だ」
俺がそう言うと門兵はギョッとした目で俺を見る。
「勇者様方と一緒の方がいいのでは・・・・・・?」
「こんなんに巻き込むのもあれだろう。 それと、俺と周が次に会うのは魔王が倒された後がいいしな。 それに、バラバラで行動すると言った直後に手伝えだなんて言ったら夏綺がうるさそうだ」
俺がそう言って笑うと門兵達もつられて笑う。
「確かにそうですね。 では、気をつけて行ってきてください」
「おう。 それと、俺が戻ってこなくても周達には伝えるなよ? 伝えるとしても半年は後からにしてくれ。 どうせ俺が死んだんなら周達が行っても同じだ。 それに、別のことしてるかもしれないしな」
「分かりました。 ですが、あまりそういう冗談を言うと副団長が拗ねるかもしれませんよ?」
副団長とは俺に剣の稽古をしてくれたナタリアさんだ。 今はもう友人で、敬語では話されなくなった。
「確かにな。 それじゃあ、またすぐに逢いに行くって伝えといてくれ。 それと、俺魔王は勇者に任せてブラブラするから。 じゃ」
俺はそう言って城門を通り抜けた。
そして、フルンセス領の方向へ道なりに走る。
「もしかしてお前本当に勇者の仲間だったのか?」
剣姫さんが突然そんなことを聞いてきた。
「さぁ? 仲間だったかどうかは知らないが、友人だな」
「お前は一体なんなんだ?」
剣姫さんが真剣な表情でこちらを見てきた。
「何がだ?」
「お前には不自然な点が多すぎる。 まず、その防具だ。 見るからに高価な物だ。 そして、次に知識の無さ。 そして、最後になぜ兵士達に慕われているか、だ」
おおぅ。 なんて評価すればいいのか分からない。
「別に。 ただ勇者と仲が良くて、一緒に訓練をしてたんだよ。 で、勇者と一緒に魔王を倒しに行くと思われていただけだな」
「・・・・・・色々と可能性はある。 お前が話したくないなら別にいいだろう」
どうやら問題ないみたいだ。
「それにしても余裕そうだな?」
「このぐらいは余裕だ。 身体強化魔法も使っているからな」
どうやら魔法を使っていたようだ。 それならもっと速度を上げた方がいいだろう。 俺は全力疾走した。
「それが限界か? そんなんで勇者の仲間になれるのか?」
なんか隣の剣姫さんが煽ってくる。 くそっ、俺だって魔法を使えば・・・。 だけどダメだ。 あれは加減が難しい。 絶対にこの剣姫を置き去りにする。
「俺は勇者パーティーに自分から辞退したんだぜ?」
「そうか。 プレッシャーに耐えきれなくなったか? さっきの兵士の話も嘘っぽいな」
「知らねぇよ。 それに、俺の得意分野は魔法だ。 後ろで守られながらぶっぱなすのが仕事だ」
剣姫はそれを鼻で笑う。
「そんなんでよくシェルべの森へ行こうと思ったな。 ある意味感心するぞ」
「はいはい。 黙って走ろうや」
しばらく走ると、剣姫さんが少し疲れたっぽかったので休憩することにした。
「別に私は疲れていない」
「どう見ても疲れているだろう。 魔力が少ない人は大変そうだねぇ」
俺は肩で息をする剣姫さんを見てそう言った。
「・・・・・・」
「なぁ、そろそろ着きそうか? あ、今更だけどお前の名前なんて言うんだ?」
剣姫さんは機嫌が悪いのか俺を睨んでいる。
「・・・・・・ヴィオラだ」
「へぇ。 いい名前じゃん。 俺は隼人な。 で、ヴィオラってなんで冒険者なんてやってるんだ?」
「冒険者に憧れたからだ。 やっている理由は儲かるからか」
やっぱり世の中金だな。
「ふーん、やっぱり冒険者って儲かるの?」
「ああ、上の方になればな」
どうやら下はあんまりみたいだ。
「なるほど。 で、なんか魔物来てるけど倒す? 休憩やめて無視する?」
ヴィオラは顎に手を当て、こちらを見た。
「あれを倒しといてくれ。 あれぐらい倒せるだろう? でないと森の魔物なんて到底無理だ」
どうやら実力が見たいようだ。 なら、魔法で軽くやってやろう。
俺は地面に魔力を伝える。 すると、次の瞬間には凄い速度で魔力を吸っていく。 ある程度増えると、俺は魔力を吸わないように操作する。 これは、毎日魔力の操作をしていたせいか出来るようになった。
そして増えた魔力をイノシシ型の魔物の下まで持っていくと、土を動かす魔法を使う。
《アースクエイク》
すると、地面が割れてイノシシ型の魔物が下に落ちる。 そして地面を無理やり元に戻し、魔物を潰す。
詠唱は、数回使った時に魔力の変化の仕方が分かり、必要なくなった。 魔法の名前も本当は要らないんだが、イメージを強く持つためだ。
「これでいいか?」
「あ、ああ。 だが、今のはなんだ? 上級魔法のように見えたんだが、詠唱はどうした?」
ヴィオラは驚いた表情でこちらを見てくる。
「何回か魔法使えば出来るだろう。 第一、お前だって身体強化魔法詠唱してねぇだろ」
「だがそれは上級だぞ!? そんな高度の魔法を詠唱なしなんて・・・・・・」
驚いた様子のヴィオラを見て、さっきまでの怒りはだいたい収まった。
「ふふん、これでもそこそこできる自身はあるんだ。 特に魔法はな。 剣では勇者に勝てる自身はないが、魔法では勝てると思うぞ? てか、あいつなんであんなに剣覚えんのはえーんだよ。 剣道部なら出場禁止だな」
「そ、そうか。 さすがは元勇者パーティーのメンバーか。 だが、なら尚更疑問がある。 どうしてパーティーを抜けたんだ? 勇者の仲間に憧れる者は多いんだぞ?」
何故、か。 そんなの決まっている。
「めんどいからだよ。 そもそも俺は初めから魔王と戦うなんて言ってないし。 訓練受けたのもマリヤが怖いのとナタリアと仲良くなるためだし」
ヴィオラは険しい顔で俺を見てくる。
「不純だな。 それと、ついうっかりと刺されないことだな。 嫉妬する者も多いぞ? 私もその一人だ」
うわぁ。 刺されないように気をつけよう。
「ふーん、なら俺があいつに・・・。 いや、足でまといになるかもだしやめた方がいいか」
俺がそう呟くと、ヴィオラがめっちゃ睨んできた。
「これでも剣には自信がある。 そう言われると不快だ」
「えー? でもこんだけで驚いたりバテてたらなぁ。 せめてもうちょっと身体能力が欲しいかもなぁ。 技術じゃ補いきれないかもしれないし」
ヴィオラがさらに俺を睨みつけてくる。
「お前の方が走るのが遅いではないか。 私も回復魔法やポーションを使えばどうにかなる」
やっぱり勘違いしているのだろう。 俺は魔法を一切使っていない。 だが、それを教えるべきではないだろう。 自信を失ってしまったら困る。
「そうかい。 なら、勇者のお眼鏡にかなうといいな。 あいつはお人好しだから情に訴えればどうにかなるかもだぞ?」
「そんなんで仲間になりたいとは思わない。 私にもプライドはある」
プライドしかないように思えるけどな。
「なんだその目は」
「なんでもねーよ。 さ、そろそろ行くか」
休憩を終え、また走るのを再開した、
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