召喚勇者は破滅を願う

イサ

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5話

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「ふーん、これが転移...ね」

フランがそう呟いた。

「うん、それがどうかした?」

フランは顎に手を当てて考えるような仕草を取った。

「これ、今無詠唱で使ったわよね?」

「うん、そうだけど?」

「はあ、あなた、無詠唱でこんな魔法が使えるなんてズルくない?」

言われてみれば確かにそうだ。
詠唱とかをする人からしたら欠点が無くなる。俺はさらに魔力が減っていない。
それに加えて不死だ。
そんなのそもそも勝負になっていない。

「確かにそうだけど、僕は勇者だし、そんなもんじゃない?フランだってドラゴンなんだから僕ら人間からしたら充分せこいけど」

「だけど、あなたは負けそうになればすぐに逃げれるじゃない。まあ、そもそも死なないんだから負けようが無いけどね」

「うん。僕と戦うことになったら相手は死ぬ。ただそれだけだ。世の中にはそんなのが一人くらい居ても問題ないだろ?」

「ええ、確かにそうね。世界には何があるかわからないもの。絶対に勝てない存在が居てもおかしくない。だけど、それが味方に居るほど心強いことは無いわね」

「僕もフランが味方でとても心強いよ。それでなんだけど...さ。その、もう手を話してもいいと思うんだよ」

そう、フランは転移してからもずっと手を繋いでいたのだ。
手を繋いでいると、なんか変な気分になってくる。
理性でどうにかしているが、フランの手はスベスベでとても柔らかい。
変に意識してしまって気が気でないのだ。

「あら?恥ずかしいの?ならこんなのはどうかしら?」

フランはそう言って腕を組んできた。
フランはニヤリと笑いながらそんなことをしてきた。
俺はからかわれるのはあまり好きじゃない。
負けた気がしてやり返したくなってしまう。
普段ならこんな気持ちはすぐに消してしまうんだろうけど、フランといると、何故かそうは出来なかった。
そうすることに少し恐怖を抱いてしまう。
きっと、俺はフランに嫌われたくないんだろう。
その気持ちも消すことはできる。
でも、したいとは思わなかった。
なんだかそうすれば後悔すると思ってしまう。
しばらくは感情を殺すのはやめておこう。
俺はそこで考えを切り上げてフランを見た。
すると、フランは心配そうに俺を見ていた。

「どうかしたの?」

俺はフランにそう問いかけた。

「今、ルーアン辛そうな表情していたけど、どうかしたの?」

そうか、普段は表情を作る。
でも、考え事に夢中で表情を作るのを忘れていた。

「いや、なんでもないよ。ただ...」

「ただどうしたの?」

まあ、言っても問題はないだろう。
羞恥心は殺してしまえばいい。

「ただ、フランには嫌われたくないと思ったんだよ」

「え、どうして嫌われるなんて思ったの?...まさか、私を襲おうとしたの?大丈夫よ。
それでも侮蔑はするかもしれないけど、嫌うことは無いわね。
でも、仕方無いわよね?私、美人だもの」

「あははははっ、フランは本当に面白いね。
うん、襲おうとは思ってないよ。
ただ、感情を殺したらフランは俺のことを嫌いになるかもしれないかな、ってね」

「感情を殺す?どうして?そんなに我慢出来ないなら襲ってもいいわよ」

「いや、襲わないよ。
それに、感情を消したらっていう例えだよ。
もし、僕が感情を殺してフランに対してなんにも思わなくなれば、僕はフランにきっと嫌われることも平気でするかもしれないでしょ?
そしたら、フランは僕のこと嫌いになるよね?僕はそれが嫌だなって思ってさ」

「何、本当に惚れちゃったの?別にいいじゃない。一目惚れでも。
私はあなたでもいいわよ」

「そう言ってもらえると嬉しいね。
でも、分からない。
僕は恋したことがあるか分からないんだ。
昔ね、友達に好きな人がいるかって聞かれたんだよ」

「ふーん、それであなたはなんて答えたの?」

「僕は居ないって答えたんだよ。でもね、友達はそれを信じてくれなくてさ。
しつこかったから、知り合いの好きな人と同じ人の名前を出したんだ。
よく知りもしない人なのに」

「あら?それで本当に好きになっちゃったのかしら?」

「うーん、どうなんだろう。
僕は自分に暗示みたいなのをかけて好きだと思い込んだんだよ」

「へぇ、それで今も好きなのかしら?」

俺の手を握る手が少し強くなった気がする。
だけど、俺は能力で痛みを感じない。
だから、あまりよく分からなかった。

「さあ、どうなんだろう?僕はなんやかんやあって、罰ゲームみたいなので告白することになったんだよ」

また強くなった気がする。
今回は気のせいではない。
少しミシッて音が聞こえた。

「へぇ、それで?」 

「告白して付き合うことになったんだよ」

俺の手から凄い音が聞こえた。

「それで、どこまでしたのかしら?」

「えーっと、なんだったかな?手を繋いだのと、あーっと、えーっと、ごめん覚えてないや」

俺は言わない方がいい気がしたため、覚えていない事にした。

「ねえ、嘘は良くないわよ。
どこまでし た の?」

俺の手から骨が折れる音がした。
きっと、能力の副産物に痛覚を感じなくなるものが無かったら今頃恐怖に怯えていたかもしれない。
いや、これはもしかしたら、勇者として体を作り直された可能性も考えた方がいいかもしれない。
そんなことを考えている暇はなかった。
嘘をついて次バレたら俺はおしまいだろう。
ならば、ここは正直に話しておこう。

「う...うん、わかった。正直に話すからそれ以上握り潰さないで。ね?ね?」

「なら、早く話なさい」

「わ、分かりました。抱き合っガハっ!」

かなり強い攻撃をくらった。

「ねえ、それ本当?もう抱いたの?」

怒っていると思ったら次は泣きそうな表情になった。
そんなフランの顔を見ていると、こっちまで悲しくなる。
俺はフランを抱きしめると、耳元で言った。

「抱いてはいないよ。抱きしめあっただけさ」

俺がそう言うと、ホッと息を吐き出した。

「ねえ、それだけ?」

まずい、また始まるのか。
今ので終わりでいいじゃないか。
いや、嘘を吐いても案外バレないかもしれない。

「うん。それだけだよ」

俺がそう笑顔で言うと、フランは俺の顔をジーッと見てきた。
それから、強く抱きしめてきた。
良かった。
信じてくれたようだ。
そう、思っていると、フランの腕の力が少しづつ強くなっていく。
少しづつミシミシと言う音ご聞こえはじめ、次にボキッて聞こえた。
どうやら失敗したようだ。

「次はない」

フランは冷たくそう言い放った。
白状するべきだろう。

「うん。実は他にもしたんだ」
「何をしたの?」

「えーっと、あっと...」

「ねえ、言って。言ってくれないと、嫉妬で気が狂いそうになるの。」

そうか、嫉妬はきっと辛いものなんだろう。
俺には無縁だから分からなかったが、怒りに近いものなんだろう。
俺は怒るのは好きじゃない。
なら、嫌なことをフランにさせるのは間違いだろう。

「えっとね、キスをしたんだ。唇を合わせただけだけど...ね」

「それ以外は無い?」

俺はフランの目をしっかり見てから言った。

「うん、それだけだね」

俺がそう言うと、フランは自分の唇を俺の唇に合わせてきた。
俺は驚いて、目を見開いた。
すると、さらに舌を入れてきた。
目を瞑り、腕を頭の後ろに回して離れないようにしてきた。
俺はフランの背中に腕を回すと、抱きしめてこちらからも舌を重ねた。
しばらくそうしていると、フランは満足したのか唇を離した。
俺が少し名残惜しく思っていると、フランはニヤリと笑ってまた唇を合わせてきた。
また、しばらくきていると、フランは唇を離した。

「どう?満足した?あなたの元彼女もここまではしていないでしょ?」

「うん、唇を合わせただけだね」

俺がそう言うと、フランは少し唇を尖らした。

「ねえ、これから私の前では私以外の女性を出さないで。貴方の口から女性の話が出てくると、それだけで腹立たしく思ってしまうの」

「え?う、うん。わかったよ」

「ね...ねえ、こんなにも嫉妬深い女性は嫌いかしら?」

「いや、そんなことないよ。
逆にそれだけ思ってくれてるのが知れて嬉しいかな」

彼女はニコッと笑って言った。

「良かったわ。
で、私たちはこれからどんな関係になるのかしら?夫婦?それとも恋人?」

「うーん、どっちでもいいよ?でも、夫婦は結婚式挙げて無いし」

「結婚式?人間はそんなのが必要なの?」

そう言えばここは異世界だ。
それに加えてフランはドラゴン。
なら必要無いだろう。

「フランはどっちがいい?」

「私は夫婦がいいかしら。
恋人なら別れるかもしれないでしょ?それに、夫婦でもないのに、女性との会話を持ち出すなって言うのはおかしいでしょ?」

「うーん、どうなんだろう。
まぁ、フランが夫婦でいいならいいけど」

俺がそう言うと、フランは誰もが見蕩れてしまいそうな笑顔を浮かべた。
俺はそれに見蕩れて固まっていると、フランは言った。

「これからよろしくね?あ な た♡」

俺はそんなフランを、見ていると本当に満たされた気がしてきた。
これなら、別に滅ぼさなくもいいかもしれない。
俺は早くもそんなことを考えてしまうのだった。


「うふふ、うふふふふ。貴方、これからどこに行くの?」

フランはチョロインだった。
俺もだが。
フランはあれから上機嫌だ。
今も俺にベッタリと抱きついている。
さっき俺がフランと夫婦になったあと、フランは抱きついていきて、大変だった。
何が大変なのかと言うと、フランがずっと、あの場から動かなかったのだ。
そう、1時間くらいは。
いや、もしかしたらもっとすぎているかもしれない。
初めの10分くらいならまだ良かったが、ずっとフランの背中を撫でたりしているだけだった。
さすがに暇だった。
別にそれくらいいいじゃないか、と思うかもしれないが、ここは外だ。
もう一度言おう、ここは外だ!
とある男性が通りかかって美女がいるぞ!なんて叫ぶもんだから人が集まってきてしまっていた。
フランは人の事を気にしてはいないが、俺が辛かった。
何が辛かったかと言うと、男性陣からの嫉妬と殺意の篭った視線だ。
そんなのを1時間浴び続ければいくら俺でも精神的に疲れるものだろう。
と、言っても未だに消えてはいないが、今は建物などに目が入ってそこまで視線などを感じない。
人間、辛くなったら逃避するものだ。
フランがこんなことになっているのも、迷宮からやっと出られたと思ったら、俺に元カノが居て精神的に堪えたんだろう。
これからは優しく接しよう。
既に手遅れかもしれないが、このままではヤンデレになってしまう。
女性と話したら、気づいた頃にはお互いが灰になってました...なんて洒落にならない。
今の内に説得しておくか。
なあ、フラン。
少しあっちで話さないか?
俺は路地裏の方を指差しフランに聞いた。

「ええ、もちろんいいわよ。貴方♡」

これはまじでまずいかもしれない。

 路地裏に来るとフランに壁ドンをした。

「ねえフラン」

「なあに?貴方♡」

くそう、なんて可愛さだ!

「さっき女性の話をしないでって言ったよね?」

俺がそう言うと、フランは怪訝そうな顔で俺を見た。

「ねえ、もし、もしだよ?僕が女性と話してたらどうする?」

フランはニッコリ笑ってから言った。

「もちろん相手のはらわたえぐりとってやるに決まってるじゃない?」

おっと?あれれー?可笑しいな。
これもう手遅れじゃないか?
とにかく説得してみよう。

「ねえ、それは我慢してくれないかな?」

「どおして?貴方は人型を滅ぼすんでしょ?」

「まだ。まだそれは決めかねているんだ」

「どうして?まさか、私以外の女性と話せなくなるから?いや、もしかしてそれ以上のっふぐっ!」

フランがやばそうになったから急いでキスをした。
しばらくしてから口を離すと、フランは俺をぼーっと見ている。
どうやら収まったようだ。

「ねえ、フラン。
僕はさ昔人が大好きだったんだ」

 俺がそう言うと、フランはじっと俺を見てきた。

「悪人にも、必ずいい所があると、そう思っていた。 自分よりも優れた部分が必ずあると。
でもね、人はいい所よりも悪いところの方が圧倒的に多かったんだ。 
醜かった。 
それは最初悪人だけかと思っていた。 
でも、全ての人が持っていた。
そう、僕もね。 
人には必ず自分よりも優れた部分があると思って生きていたら、周りの人は僕のことをこう言って来たんだよ。天才...ってね。 
皮肉だよね。
自分が出来るからみんな出来ると思っていた。
僕はみんなの可能性を信じていた。 
なのに皆は僕だけが特別と言ったんだ。 
まるで裏切られたような気分になったよ。
僕が何かする度に天才だからって言うんだ。 
でも、でもね僕はそんな皆でもできると思っていたんだ...。 
でも、出来ない人達を見てしまった。 
自分が一回で出来たことがほかの人はたくさんやってやっと出来るようになっていたんだ。 
僕はそれを見る度に人の不公平さを知った。 
それからもいろいろ嫌なことがあった。
それが続いた。
ただそれだけなんだ。 
僕はそれだけの理由で世界を滅ぼそうなんて言ったんだ。 
ただ勝手に裏切られたような気持ちになっただけ。ただ、運悪く死ねなくなっただけ。
それだけ、なんだよ」

俺はいつの間にか泣いていた。
フランはそんな俺の頭を抱きしめながら聞いていた。

「別に、それでもいいんじゃない?だって、私だって似たような物よ。
ある日ドラゴンとして生まれただけ。
すると、全ての種族に敵対視される。
だから敵を倒すだけ。
私はドラゴンの中でも最上位に強いドラゴンだから大丈夫だけど、他のドラゴンは人化なんて出来ない。
それに言語も知らない。
そんなの敵対するに決まってるわよね?だから人間を倒す。倒してもう襲わないようにする。
私の場合はドラゴンからも恐れられた。ただそれだけよ。
だから戦った。
戦っているうちに目的が変わっていただけ」

俺は涙を流しながらもフランの言葉を聞いていた。
聞きおわると思った、涙を流したのなんていつぶりだろうか?と。
中学1年生くらいからは泣いていない。
いや、それくらいまで泣き続けた。
現実の嫌なことから目を逸らした。
毎日死にたいと涙を流した。
でも、心が動いた気がする。
初めて心の内を誰かに話した気がする。 
俺は前に進めるのだろうか?
感情を押しつぶしていた過去からしっかりと進めるのだろうか?
俺の目的はなんだろうか?
本当に滅ぼすことなんだろうか?
いや、違う。
そんなことよりも、フランと生きていきたい。
何が起きようと、フランといればどうにかなる気がする。
心の内を話せる人がいれば、それだけだ心が洗われた気がする。
俺はフランの目を見た。
フランは俺から目を逸らさなかった。
どうしようか?
ふとそんなことを思ってしまう。
シリアスだったが、よく考えてみればおかしな展開だ。
フランを説得しようとしたらいきなり語りだして泣き出す。
訳が分からない。
俺は目を逸らしてその場から離れることにした...が、フランに腕を掴まれた。
フランはニヤニヤ笑うとそのまま腕を引き俺を抱きしめた。
そのあとキスをたっぷりとしてから解放された。
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