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11話
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「まったく、羨ましいなあ。 そんな美人さんが妻なんて...。 俺もそんな妻が欲しい限りだ! それにしても、ルーアンは妻のどこが気に入ったんだ? やっぱり身体か?」
カーシーはそう言った。
かなりグイグイくる性格のようだ。
俺はこういう性格は嫌いじゃない。
気まづいよりもこっちの方が気軽くて良いだろう。
それにしても、フランのどこが気に入ったのか...か。
フランも気になるのかこっちをじっと見ている。
「うーん、フランはなんか普通の人とは違ったんだよね。 なんだろうか...一目惚れかもしれないね。 それに、フランは美人だから身体が気に入ったってのも当てはまるよ」
「あら? それだけなのかしら?」
フランはそう言いつつも顔は綻んでいる。
「いや、もっとあるけど...さすがにここでは人が多いからね。 これ以上は二人っきりのときに...ね?」
俺はフランの目を見てそう言った。
フランは頬を染めて目を潤ませている。
今からでもキスを迫ってきそうな雰囲気だ。
「くぅ~妬けるなあ、それにしても、素直だよなあ。 そんなに素直だといっその事清々しいな。 あーそれでお前さん、一体何してる人なんだ?」
何してる人...か。
フランとナニはしているが、それ以外だと、殺したりとかだ。
ここまで何もせず、ただ楽しんでいるだけのやつはそんなにいないだろう。
なんて答えたものだろうか? 冒険者...だとランク低いし、貴族にしても、どこのか聞かれたら困るし、ここは旅人でいいかもしれない。
「実は故郷から出てきたばかりなんだ。 それで、今は世界を見て回りたいと思っているんだ。 だから、旅人ってやつだろうね」
「あっはっはっはっはっ、女を連れて旅かよ。 どれだけ世界を見て回りたいんだか...なんだ? 世界中の美人でも集めようってか? 中々度胸あるな! でも、そんな所は憧れるぜ! フランさんに愛想つかされないように気をつけろよ?」
「うん、フランに愛想つかされるのは嫌だから気をつけるよ」
俺がそう言うと、手を摘まれた。
「あら? それは私以外にも女を作るって言っているのかしら? そんな目的で世界を回ろうって言ったわけじゃないわよね?」
フランがかなり棘のある感じでそう言った。
「あはは、まっさかぁ~。 僕がフラン以外に女を作るわけないじゃないか」
俺は冷や汗をかきながらそう言った。
その様子に、カーシーは笑った。
「あっはっはっはっはっ、もう尻に敷かれてんのか。 それにしても怖い奥さんだな...少し同情するぜ」
カーシーはフランからの鋭い視線に目を逸らしてそう言った。
「それにしてもルーアンさん他に奥さん作らないんですか!?」
マリーはそう叫んだ。
様子が捨てられた子犬のようだ。
率直に言うとかなり可愛い。
そんなマリーをフランは睨みつけた。
「私の旦那にそれ以上媚を売らないでくれるかしら? 女狐さん?」
「だ、誰が女狐ですか!? 私は別にルーアンさんに媚を売っているわけじゃないですよ!? それにしても、まさか自分に自身がないんですか? それとも...旦那さんが私に目移りしてしまうのが怖いんですか?」
マリーのその言葉に、フランはすごい形相で今にも襲いかかりそうだ。
「なんですって? そんなわけないじゃない。 私は女狐が私の旦那に媚を売っているのが許せないのよ! あなたみたいな尻軽女はさっさとそこら辺の男に媚売ってもらってもらいなさい」
「だ...誰が尻軽女ですか!? 私はそんなに軽くありません! さっきも言いましたが、まだ処女です! あ、待ってください。 そんな微妙な顔で私を見ないで下さい! フランさんも私を変な呼び方しないで下さい! もし仲間と私との雰囲気が悪くなったらどうしてくれるんですか!?」
フランはその言葉を鼻で笑った。
「あなたみたいな痴女はさっさとお仲間さんに抱いてもらいなさいよ。 そうすれば仲が深まるんじゃないかしら?」
フランのその言葉にマリーは顔を赤くした。
「だ、抱いてもらうなんて、私はそんなに軽くないです! ほら、みんな私たちに曖昧な表情を向けてるじゃないですか! 本当にそれ以上私に変なイメージを付けないでください! それ以上言うと、泣きますよ? 泣いてあなたの旦那さんに泣きつきますよ? いいんですか? 旦那さん貰っちゃいますよ? 男は涙に弱いんですよ?」
「やめないさい痴女さん。 そんな事をすれば本当に痴女って呼ぶわよ? 痴女が旦那に近づかないでくれるかしら? それに、そんな事をすれば殺すわよ?」
フランは本当に殺してしまいそうな目でそう告げる。
それに対してマリーはもう涙目だ。
他の人達はその様子を気まづそうに見ている。
俺もその一人だ。
女同士の言い合いは怖い。
日本では、言葉が無くなると本当にキモイんですけど、を連呼していたような気がする。
スクールカーストの高い女子がそう言えば周りもそれに乗る。
そうして言われた人は仲間はずれ確定だろう。
男性の言い争いはそれに比べたら全然優しいものだ。
目がいっていいる男性を除いてだが...。
「もう痴女って呼んでるじゃないですか! ルーアンさん、私、痴女じゃないですからね?」
マリーは上目遣いでそう行ってきた。
かなり破壊力がある。
このまま抱きしめたくなってしまうが、フランが怖いため、それはしない。
それをしてしまえばフランはマリーを殺しに行くだろう。
さすがにそれは嫌だ。
「うん、分かっているよ? だから、マリーもあんまりフランに突っかからないでね?」
「うっ、分かりましたよ...。 でも、ルーアンさんは私に興味ありませんか? 胸もかなりありますし、顔もそこそこいい自身はあるんですよ?」
「ねぇ、本当に死にたいの? 良いわよねルーアン? もう殺っちゃって良いわよね? だからそこをどいて。 そこの女狐を殺せないわ」
フランは本気だ。
マリーも本当にやめてくれ。
俺も怒ったフランは怖いんだ。
「マリー、僕はフランと別れるつもりはないんだ。 だからごめんね? それとフラン。 僕はフラン以外を好きになることは無いって言ったよね? だから大丈夫だから」
俺はそう言ってフランを見つめた。
「はぁ、わかったわよ。 でも、次からは殺るからね」
フランはそう言って俺の肩に頭を預けた。
手は絡み、俗世に言う恋人繋ぎというものだ。
人前でやるのは少し恥ずかしいが、フランといるだけでかなり目立っていて、人の目を気にすることがあまり無くなってきた。
でも、それも仕方がない事だろう。
フランは人の目を気にせず、所構わず抱きついて来たり、キスを迫ってくる。
人前で普通に殺ってしまうほどだ。
逆に俺に羞恥心と言うものが残っていた事に驚きだろう。
肝が据わっていると言われるのも当たり前だろう。
きっと俺が恥ずかしがり屋なら今頃隠居か挙動不審になってフランの背中に隠れていた事だろう。
自分の性格を褒めてやりたい気分だ。
だけど、性格は環境か遺伝によって作られたものなら、俺はそれに感謝するべきだろう。
一応俺の父親の母親も優秀だ。
自慢話をかなり聞かされたのは仕方のない事だろう。
俺が考えに耽っていると、横から話し声が聞こえた。
少し焦った男性の声とマリーの声だ。
「な、なぁマリー。 さっきルーアンに言った事は本気か?」
ロニーか焦り気味にそう言った。
それに対してマリーは首を傾げて顎に手を当てる考えた。
「うーん、半々かな? 半分は冗談だよ」
「は、半分!? 嘘だろ! じゃああいつがお前も妻にするって言ってたらどうしてたんだ!」
「それはオッケーしたかもしれないし、冗談って言っていたかもしれないし、わからない」
マリーは困惑顔でそう言った。
それに対し、ロニーはパニック状態だ。
肩を揺らして嘘だろ、を連呼している。
見ていて気まづくなってくる。
まるで恋人に振られた未練タラタラの男のようだ。
俺はああならないように気をつけよう。
「これはロニーが可哀想だな...。 ルーアン...一体マリーに何したんだ? 今までマリーがこんな事を言ったことは無かったんだぜ? やっぱり顔がいいからなのか?」
カーシーがロニーに哀れみのこもった視線を送りながらそう言った。
「やっぱり顔なんじゃないかな? マリーに何かした覚えはないし...。」
「そうか...でもいいのか? 奥さん滅茶苦茶怖そうだが、今ならまだマリー...いや、すまん。 ルーアンとフランさんはとってもお似合いだ! 他のやつなんて考えられないよな! あはははは...ああ、やっぱり絶対お似合いだ」
カーシーが危ないことを言おうとすると、フランがすぐにでも殺してしまいそうな視線と殺気を送り、カーシーは顔を青くしてすぐに言葉を撤回した。
カーシーが俺達の事をお似合いと言うと、すぐにフランの殺気は無くなり、頷きながら微笑んでいた。
その微笑みはとても美しくて見蕩れてしまいそうなほどだが、その裏にそれ以上変な事を言ったら殺すわよ、と言う思いが込められており、恐怖心で見蕩れるどころでは無かった。
カーシーは微笑みを見ても顔がまだ少し青いが、助かったという安堵の溜息が漏れていた。
その顔をフランから俺に向けると、哀れみの篭もった視線を向けられた。
少し解せないが、仕方がないだろう。
俺は怖い雰囲気を和らげるために話題を出すことにした。
「そいえば、カーシーは好きな人とかいるのか?」
「おう、居るぞ...と言っても、憧れている人だがな。」
カーシーは自嘲気味にそう言った。
「それが誰とか聞かない方がいいかな? それとも教えてくれたりする?」
「おう、別にいいぜ。 俺が憧れている人なんだが...それはSランク冒険者のアシュリーって言う女性でな。 これが滅茶苦茶美人なんだ。 それだけじゃなくて強いんだぜ! もう一年くらい前になるんだが、武闘大会が会ってだな。 そのときに優勝したんだが、そのときの闘いが凄くてだな! 今でも鮮明に思い出せるぜ。 ああ、会って握手したいぜ。」
そこからカーシーは妄想に入った。
これは放っておいてもいいだろう。
それにしても武闘大会...か。
「ねえ、武闘大会って何年おきにやるの?」
俺がそう聞くと、マリーが答えた。
「一年おきだよ。 今年は神聖ファウル帝国でやるんです。 それを見に行くのもあってファウル帝国に行くんですよ! なんたって今年は勇者も出てきますからね」
「勇者が出る...? 危険じゃないの?」
「はい、そうですけど、勇者はもうかなり強いので大丈夫みたいですよ」
「そうなんだ...それって何人かで出るの?」
「両方ありますね。 勇者は団体に出ると聞いてますよ?」
「そうなんだ...。 団体って何人まで?」
「団体は6人までですね。 どうしてそんな事を...もしかして出るつもりですか!?」
「うーん、どうしよう...。 フランは出たい?」
「私はどっちでもいいわよ? 貴方が団体に出るなら私も出た方がいいかしら?」
「どうしよう...。 優勝したときのメリットってある?」
俺がそう聞くとマリーは悩んだ。
「賞金と名声だけでは足りませんか?」
「いや、そんな事はないけど...」
「それにしても、優勝するつもりなんですね。 その大会私達も参加するんですよ? もう勝った気でいるのは早計じゃないですか?」
マリーは少し不機嫌そうな様子でそう言った。
確かに実力もまったく知らないやつにそんな事を言われるのは嫌だか...。
そういえば、勇者をその場で殺してしまえば俺の脅威は消えるんじゃないか?
いや、魔王が居るし、また召喚されたら面倒だ。
俺が参加するメリットはそこまでない...か。
勇者に謎の人物を演出できるかもしれないが、そんな事をしても無駄だろう。
でも、こうこみ上げてくるものがある。
勇者を倒せる謎の人物...中々かっこいいんではないだろうか? それに、勇者がどれくらいの力を持っているのか知りたい。
もし敵になっても友人関係になれば相手は俺を殺すのを躊躇うだろう。
俺に対して躊躇うのはどっちでもいいが、フランに攻撃をするのさえ躊躇ってくれればいい。
その間に逃げてくれればもし封印されてもいつかは解いてくれるだろう。
それに、この世界で強いやつがどれくらいなのかも知りたい。
「確かにそうだね。 すまなかった。 僕も出てみるよ。 少し勇者に聞きたいこともあるしね」
「勇者にですか? 私も聞きたい事がたくさんあります! もし会ったら一緒に聞きましょう!」
「うん、それもいいね。 それで、その大会は安全なの? 死人が出たりしないかな?」
「やっぱり心配ですか? でも大丈夫です! なんとかなり大掛かりな結界が貼ってあって致命傷を負う前に転移する仕組みになっているんです!」
なら良かった。 かなり心配だったんだ。
勇者と戦う前に人を殺しましたとなれば俺の印象は初めから最悪だ。
まあ、これで思う存分剣振れるということだ。
身体強化は負けそうになったりしない限りかけないで行こう。
「なら良かったよ。 心配だったんだよね。 個人と団体両方出てもいいのかな?」
「はい。 今年は勇者も居ますし、盛り上がりそうですね!」
「うん。 確かに盛り上がりそうだね...」
確かに勇者同士での闘いなんて早々見られないだろう。
俺も勇者が相手ならもしかしたらきついかもしれない。
不死がバレたらまずいだろう。
これは俺も怪我をしないように戦わないといけない。
もし致命傷を負いかけたら自分で転移して退場しよう。
さて、勇者はどんなやつなんだろうか。
俺はそんな事を考えながら自嘲気味に笑った。
カーシーはそう言った。
かなりグイグイくる性格のようだ。
俺はこういう性格は嫌いじゃない。
気まづいよりもこっちの方が気軽くて良いだろう。
それにしても、フランのどこが気に入ったのか...か。
フランも気になるのかこっちをじっと見ている。
「うーん、フランはなんか普通の人とは違ったんだよね。 なんだろうか...一目惚れかもしれないね。 それに、フランは美人だから身体が気に入ったってのも当てはまるよ」
「あら? それだけなのかしら?」
フランはそう言いつつも顔は綻んでいる。
「いや、もっとあるけど...さすがにここでは人が多いからね。 これ以上は二人っきりのときに...ね?」
俺はフランの目を見てそう言った。
フランは頬を染めて目を潤ませている。
今からでもキスを迫ってきそうな雰囲気だ。
「くぅ~妬けるなあ、それにしても、素直だよなあ。 そんなに素直だといっその事清々しいな。 あーそれでお前さん、一体何してる人なんだ?」
何してる人...か。
フランとナニはしているが、それ以外だと、殺したりとかだ。
ここまで何もせず、ただ楽しんでいるだけのやつはそんなにいないだろう。
なんて答えたものだろうか? 冒険者...だとランク低いし、貴族にしても、どこのか聞かれたら困るし、ここは旅人でいいかもしれない。
「実は故郷から出てきたばかりなんだ。 それで、今は世界を見て回りたいと思っているんだ。 だから、旅人ってやつだろうね」
「あっはっはっはっはっ、女を連れて旅かよ。 どれだけ世界を見て回りたいんだか...なんだ? 世界中の美人でも集めようってか? 中々度胸あるな! でも、そんな所は憧れるぜ! フランさんに愛想つかされないように気をつけろよ?」
「うん、フランに愛想つかされるのは嫌だから気をつけるよ」
俺がそう言うと、手を摘まれた。
「あら? それは私以外にも女を作るって言っているのかしら? そんな目的で世界を回ろうって言ったわけじゃないわよね?」
フランがかなり棘のある感じでそう言った。
「あはは、まっさかぁ~。 僕がフラン以外に女を作るわけないじゃないか」
俺は冷や汗をかきながらそう言った。
その様子に、カーシーは笑った。
「あっはっはっはっはっ、もう尻に敷かれてんのか。 それにしても怖い奥さんだな...少し同情するぜ」
カーシーはフランからの鋭い視線に目を逸らしてそう言った。
「それにしてもルーアンさん他に奥さん作らないんですか!?」
マリーはそう叫んだ。
様子が捨てられた子犬のようだ。
率直に言うとかなり可愛い。
そんなマリーをフランは睨みつけた。
「私の旦那にそれ以上媚を売らないでくれるかしら? 女狐さん?」
「だ、誰が女狐ですか!? 私は別にルーアンさんに媚を売っているわけじゃないですよ!? それにしても、まさか自分に自身がないんですか? それとも...旦那さんが私に目移りしてしまうのが怖いんですか?」
マリーのその言葉に、フランはすごい形相で今にも襲いかかりそうだ。
「なんですって? そんなわけないじゃない。 私は女狐が私の旦那に媚を売っているのが許せないのよ! あなたみたいな尻軽女はさっさとそこら辺の男に媚売ってもらってもらいなさい」
「だ...誰が尻軽女ですか!? 私はそんなに軽くありません! さっきも言いましたが、まだ処女です! あ、待ってください。 そんな微妙な顔で私を見ないで下さい! フランさんも私を変な呼び方しないで下さい! もし仲間と私との雰囲気が悪くなったらどうしてくれるんですか!?」
フランはその言葉を鼻で笑った。
「あなたみたいな痴女はさっさとお仲間さんに抱いてもらいなさいよ。 そうすれば仲が深まるんじゃないかしら?」
フランのその言葉にマリーは顔を赤くした。
「だ、抱いてもらうなんて、私はそんなに軽くないです! ほら、みんな私たちに曖昧な表情を向けてるじゃないですか! 本当にそれ以上私に変なイメージを付けないでください! それ以上言うと、泣きますよ? 泣いてあなたの旦那さんに泣きつきますよ? いいんですか? 旦那さん貰っちゃいますよ? 男は涙に弱いんですよ?」
「やめないさい痴女さん。 そんな事をすれば本当に痴女って呼ぶわよ? 痴女が旦那に近づかないでくれるかしら? それに、そんな事をすれば殺すわよ?」
フランは本当に殺してしまいそうな目でそう告げる。
それに対してマリーはもう涙目だ。
他の人達はその様子を気まづそうに見ている。
俺もその一人だ。
女同士の言い合いは怖い。
日本では、言葉が無くなると本当にキモイんですけど、を連呼していたような気がする。
スクールカーストの高い女子がそう言えば周りもそれに乗る。
そうして言われた人は仲間はずれ確定だろう。
男性の言い争いはそれに比べたら全然優しいものだ。
目がいっていいる男性を除いてだが...。
「もう痴女って呼んでるじゃないですか! ルーアンさん、私、痴女じゃないですからね?」
マリーは上目遣いでそう行ってきた。
かなり破壊力がある。
このまま抱きしめたくなってしまうが、フランが怖いため、それはしない。
それをしてしまえばフランはマリーを殺しに行くだろう。
さすがにそれは嫌だ。
「うん、分かっているよ? だから、マリーもあんまりフランに突っかからないでね?」
「うっ、分かりましたよ...。 でも、ルーアンさんは私に興味ありませんか? 胸もかなりありますし、顔もそこそこいい自身はあるんですよ?」
「ねぇ、本当に死にたいの? 良いわよねルーアン? もう殺っちゃって良いわよね? だからそこをどいて。 そこの女狐を殺せないわ」
フランは本気だ。
マリーも本当にやめてくれ。
俺も怒ったフランは怖いんだ。
「マリー、僕はフランと別れるつもりはないんだ。 だからごめんね? それとフラン。 僕はフラン以外を好きになることは無いって言ったよね? だから大丈夫だから」
俺はそう言ってフランを見つめた。
「はぁ、わかったわよ。 でも、次からは殺るからね」
フランはそう言って俺の肩に頭を預けた。
手は絡み、俗世に言う恋人繋ぎというものだ。
人前でやるのは少し恥ずかしいが、フランといるだけでかなり目立っていて、人の目を気にすることがあまり無くなってきた。
でも、それも仕方がない事だろう。
フランは人の目を気にせず、所構わず抱きついて来たり、キスを迫ってくる。
人前で普通に殺ってしまうほどだ。
逆に俺に羞恥心と言うものが残っていた事に驚きだろう。
肝が据わっていると言われるのも当たり前だろう。
きっと俺が恥ずかしがり屋なら今頃隠居か挙動不審になってフランの背中に隠れていた事だろう。
自分の性格を褒めてやりたい気分だ。
だけど、性格は環境か遺伝によって作られたものなら、俺はそれに感謝するべきだろう。
一応俺の父親の母親も優秀だ。
自慢話をかなり聞かされたのは仕方のない事だろう。
俺が考えに耽っていると、横から話し声が聞こえた。
少し焦った男性の声とマリーの声だ。
「な、なぁマリー。 さっきルーアンに言った事は本気か?」
ロニーか焦り気味にそう言った。
それに対してマリーは首を傾げて顎に手を当てる考えた。
「うーん、半々かな? 半分は冗談だよ」
「は、半分!? 嘘だろ! じゃああいつがお前も妻にするって言ってたらどうしてたんだ!」
「それはオッケーしたかもしれないし、冗談って言っていたかもしれないし、わからない」
マリーは困惑顔でそう言った。
それに対し、ロニーはパニック状態だ。
肩を揺らして嘘だろ、を連呼している。
見ていて気まづくなってくる。
まるで恋人に振られた未練タラタラの男のようだ。
俺はああならないように気をつけよう。
「これはロニーが可哀想だな...。 ルーアン...一体マリーに何したんだ? 今までマリーがこんな事を言ったことは無かったんだぜ? やっぱり顔がいいからなのか?」
カーシーがロニーに哀れみのこもった視線を送りながらそう言った。
「やっぱり顔なんじゃないかな? マリーに何かした覚えはないし...。」
「そうか...でもいいのか? 奥さん滅茶苦茶怖そうだが、今ならまだマリー...いや、すまん。 ルーアンとフランさんはとってもお似合いだ! 他のやつなんて考えられないよな! あはははは...ああ、やっぱり絶対お似合いだ」
カーシーが危ないことを言おうとすると、フランがすぐにでも殺してしまいそうな視線と殺気を送り、カーシーは顔を青くしてすぐに言葉を撤回した。
カーシーが俺達の事をお似合いと言うと、すぐにフランの殺気は無くなり、頷きながら微笑んでいた。
その微笑みはとても美しくて見蕩れてしまいそうなほどだが、その裏にそれ以上変な事を言ったら殺すわよ、と言う思いが込められており、恐怖心で見蕩れるどころでは無かった。
カーシーは微笑みを見ても顔がまだ少し青いが、助かったという安堵の溜息が漏れていた。
その顔をフランから俺に向けると、哀れみの篭もった視線を向けられた。
少し解せないが、仕方がないだろう。
俺は怖い雰囲気を和らげるために話題を出すことにした。
「そいえば、カーシーは好きな人とかいるのか?」
「おう、居るぞ...と言っても、憧れている人だがな。」
カーシーは自嘲気味にそう言った。
「それが誰とか聞かない方がいいかな? それとも教えてくれたりする?」
「おう、別にいいぜ。 俺が憧れている人なんだが...それはSランク冒険者のアシュリーって言う女性でな。 これが滅茶苦茶美人なんだ。 それだけじゃなくて強いんだぜ! もう一年くらい前になるんだが、武闘大会が会ってだな。 そのときに優勝したんだが、そのときの闘いが凄くてだな! 今でも鮮明に思い出せるぜ。 ああ、会って握手したいぜ。」
そこからカーシーは妄想に入った。
これは放っておいてもいいだろう。
それにしても武闘大会...か。
「ねえ、武闘大会って何年おきにやるの?」
俺がそう聞くと、マリーが答えた。
「一年おきだよ。 今年は神聖ファウル帝国でやるんです。 それを見に行くのもあってファウル帝国に行くんですよ! なんたって今年は勇者も出てきますからね」
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「はい、そうですけど、勇者はもうかなり強いので大丈夫みたいですよ」
「そうなんだ...それって何人かで出るの?」
「両方ありますね。 勇者は団体に出ると聞いてますよ?」
「そうなんだ...。 団体って何人まで?」
「団体は6人までですね。 どうしてそんな事を...もしかして出るつもりですか!?」
「うーん、どうしよう...。 フランは出たい?」
「私はどっちでもいいわよ? 貴方が団体に出るなら私も出た方がいいかしら?」
「どうしよう...。 優勝したときのメリットってある?」
俺がそう聞くとマリーは悩んだ。
「賞金と名声だけでは足りませんか?」
「いや、そんな事はないけど...」
「それにしても、優勝するつもりなんですね。 その大会私達も参加するんですよ? もう勝った気でいるのは早計じゃないですか?」
マリーは少し不機嫌そうな様子でそう言った。
確かに実力もまったく知らないやつにそんな事を言われるのは嫌だか...。
そういえば、勇者をその場で殺してしまえば俺の脅威は消えるんじゃないか?
いや、魔王が居るし、また召喚されたら面倒だ。
俺が参加するメリットはそこまでない...か。
勇者に謎の人物を演出できるかもしれないが、そんな事をしても無駄だろう。
でも、こうこみ上げてくるものがある。
勇者を倒せる謎の人物...中々かっこいいんではないだろうか? それに、勇者がどれくらいの力を持っているのか知りたい。
もし敵になっても友人関係になれば相手は俺を殺すのを躊躇うだろう。
俺に対して躊躇うのはどっちでもいいが、フランに攻撃をするのさえ躊躇ってくれればいい。
その間に逃げてくれればもし封印されてもいつかは解いてくれるだろう。
それに、この世界で強いやつがどれくらいなのかも知りたい。
「確かにそうだね。 すまなかった。 僕も出てみるよ。 少し勇者に聞きたいこともあるしね」
「勇者にですか? 私も聞きたい事がたくさんあります! もし会ったら一緒に聞きましょう!」
「うん、それもいいね。 それで、その大会は安全なの? 死人が出たりしないかな?」
「やっぱり心配ですか? でも大丈夫です! なんとかなり大掛かりな結界が貼ってあって致命傷を負う前に転移する仕組みになっているんです!」
なら良かった。 かなり心配だったんだ。
勇者と戦う前に人を殺しましたとなれば俺の印象は初めから最悪だ。
まあ、これで思う存分剣振れるということだ。
身体強化は負けそうになったりしない限りかけないで行こう。
「なら良かったよ。 心配だったんだよね。 個人と団体両方出てもいいのかな?」
「はい。 今年は勇者も居ますし、盛り上がりそうですね!」
「うん。 確かに盛り上がりそうだね...」
確かに勇者同士での闘いなんて早々見られないだろう。
俺も勇者が相手ならもしかしたらきついかもしれない。
不死がバレたらまずいだろう。
これは俺も怪我をしないように戦わないといけない。
もし致命傷を負いかけたら自分で転移して退場しよう。
さて、勇者はどんなやつなんだろうか。
俺はそんな事を考えながら自嘲気味に笑った。
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