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chapter,3
03. 身代わり聖女と裏切りの魔術師《2》
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「えっと……デ・フロート家の人間は短命なので歴代聖女についての知識がほかのマヒの一族より乏しいのです」
「はあ」
苦し紛れにヒセラが説明すると、それでひとまず納得したのか、シュールトが黙り混む。気まずい沈黙に耐えられなくなったのはヒセラの方だった。
「なので、子作りに関してもリシャール……リシャルトさまが孕ませてくださらなくて」
「……孕ませてくださらない?」
「図書室で聖女が懐妊できない場合、相手を変えることがあると、それが別に問題ないというのは調べてわかったのですが……実際のところ、シュールトさまはどうお考えですか?」
「どう、って?」
「聖女を寝取って次期国王になるつもりはありますか、ってことでふ」
ふぁ、とちいさなあくびをこぼしてヒセラはシュールトを見つめる。
おかしい。毒は入っていないのに、毒耐性を持っているのに、なんだかふわふわする。
ヒセラの身体はほのかに熱を帯びはじめていた。
「ふふ……まさか聖女さま自ら誘いにいらっしゃるなんて、ね」
「しゅーるとさま?」
「兄上も罪な方だ。こんな愛らしい方を隠していたとは……」
ああ、これは毒じゃなくて媚薬だったのかとヒセラは妙なところで納得する。どうせリシャルトの所有印があるのだ、そう簡単に犯されることもない……そう思っていたヒセラを裏切るように、彼は側近の名を口にして、ヒセラを惑わせる。
「ホーグ。彼女のもてなしを頼む。兄上の所有印がついていようが、魔法で上書きできるだろう?」
「うわ、がき?」
――え、そんなことできちゃうの? 所有印を上書きされたら、リシャールさま以外の異性にも身体を明け渡せるってこと……?
「仰せのままに、シュールトさま」
どこからともなく現れた黒衣の男に横抱きにされ、ヒセラは身体を強張らせる。けれど、男がヒセラを抱き上げた瞬間、身体の奥がジンと疼くような錯覚を覚えてしまう。結婚初夜のときに身体に塗られた媚薬よりは緩やかだけど、下腹部がじんじんと疼く感覚に、ヒセラは呻き声をあげる。
「これ、いやっ……」
「抵抗なさらない方が身のためですよ。聖女、ジゼルフィア」
「あな、たは?」
ホーグと呼ばれた黒衣の魔法使いは男性だった。彼は苦しみ悶えるヒセラを見て、どこか嬉しそうな顔をしている。
「ずっと探していたんだよ、まさか聖女に選ばれるなんて思わなかった」
「だ、れ」
「忘れちゃったなんてひどいなぁ。だけどその方が好都合かもしれないね」
「はあ」
苦し紛れにヒセラが説明すると、それでひとまず納得したのか、シュールトが黙り混む。気まずい沈黙に耐えられなくなったのはヒセラの方だった。
「なので、子作りに関してもリシャール……リシャルトさまが孕ませてくださらなくて」
「……孕ませてくださらない?」
「図書室で聖女が懐妊できない場合、相手を変えることがあると、それが別に問題ないというのは調べてわかったのですが……実際のところ、シュールトさまはどうお考えですか?」
「どう、って?」
「聖女を寝取って次期国王になるつもりはありますか、ってことでふ」
ふぁ、とちいさなあくびをこぼしてヒセラはシュールトを見つめる。
おかしい。毒は入っていないのに、毒耐性を持っているのに、なんだかふわふわする。
ヒセラの身体はほのかに熱を帯びはじめていた。
「ふふ……まさか聖女さま自ら誘いにいらっしゃるなんて、ね」
「しゅーるとさま?」
「兄上も罪な方だ。こんな愛らしい方を隠していたとは……」
ああ、これは毒じゃなくて媚薬だったのかとヒセラは妙なところで納得する。どうせリシャルトの所有印があるのだ、そう簡単に犯されることもない……そう思っていたヒセラを裏切るように、彼は側近の名を口にして、ヒセラを惑わせる。
「ホーグ。彼女のもてなしを頼む。兄上の所有印がついていようが、魔法で上書きできるだろう?」
「うわ、がき?」
――え、そんなことできちゃうの? 所有印を上書きされたら、リシャールさま以外の異性にも身体を明け渡せるってこと……?
「仰せのままに、シュールトさま」
どこからともなく現れた黒衣の男に横抱きにされ、ヒセラは身体を強張らせる。けれど、男がヒセラを抱き上げた瞬間、身体の奥がジンと疼くような錯覚を覚えてしまう。結婚初夜のときに身体に塗られた媚薬よりは緩やかだけど、下腹部がじんじんと疼く感覚に、ヒセラは呻き声をあげる。
「これ、いやっ……」
「抵抗なさらない方が身のためですよ。聖女、ジゼルフィア」
「あな、たは?」
ホーグと呼ばれた黒衣の魔法使いは男性だった。彼は苦しみ悶えるヒセラを見て、どこか嬉しそうな顔をしている。
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「だ、れ」
「忘れちゃったなんてひどいなぁ。だけどその方が好都合かもしれないね」
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