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chapter,5
05. 聖女ジゼルフィアの誤算(後編)《1》
しおりを挟む――ジゼルフィア・マヒ・デ・フロートをハーヴィック第一王子リシャルトの花嫁聖女候補とする。
王城からマヒ・デ・フロート家に届けられた封書には要請となっていたが、これは王命だとジゼルフィアは確信する。第一王子リシャルトの花嫁となってハーヴィック王家の後継者を生める人間は限られているからだ。
書面では“候補”となっていたが、自分以外に該当するマヒの人間は現段階でほぼ皆無であろう。銀髪碧眼という妖精王の血を色濃く引き継いだ第一王子リシャルトの莫大な魔力は他者を寄せ付けないほど強く、それこそ魔力酔いしない体質の人間でなければ四六時中そばにいられないのだから。
ジゼルフィアは自分の魔力酔いしない体質が花嫁選びに強く関わるとは思ってもいなかった。だが、王家はリシャルトの魔力を中和できる能力を持つ女性のなかから選別することを優先したのだ。マヒの一族のなかで突出した加護と魔力酔いしない体質を持つジゼルフィアに白羽の矢が立ったのはおかしなことではない……彼女が子を生めるだけの体力を持っていないことを除いて。
「え」
「十八歳になったら嫁ぎ、次期聖女として、ハーヴィックの国母になれって……」
「おめでたいことじゃないの? 王家にジゼの魔力が認められたってことだよ?」
乾いた笑みを浮かべるジゼルフィアを、ヒセラがきょとんとした表情で見つめている。彼女はまだ、ジゼルフィアが言っていることを完全に理解していない。ジゼルフィアは不思議そうな顔をしているヒセラの前で小声で呟く。
「わたしは加護精霊ミヒャエルによって寿命を削られているのよ。それに、前世で“取引”したであろう妖精王との代償として心臓に爆弾を抱えている。いくら魔力に耐えられるからって、出産に耐えられる身体なんかじゃないのよ」
「だ、だけどそれだって結婚して公爵家を出れば加護が外れるわけだし」
「寿命が削られることはなくなるけど、妖精王との“取引”はわたしの生命が尽きるまで続くの。すでにこの心臓は十分働いている。十八歳まで生きることなど、とうてい無理よ」
「そのことは王家に伝えたの?」
「お父様もお母様も隠してわたしを第一王子の花嫁にしようとしてる。婚約さえしてしまえば公爵家の“時”は栄えるんですもの」
「そんな」
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