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chapter,7
04. 妖精王の再来と復活の聖女(前編)《2》
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* * *
魔法酔いしない体質のハーヴィック第二王子シュールトは王城騎士団を任されるだけあって魔物との戦いにも慣れている。だが、人間の姿に模した魔物と戦うということはいままで経験したことがなかった。戦場に出現した傭兵然とした魔物は人間のように武器を扱うかと思えば思いがけないかたちで触手を繰り出し、躊躇うハーヴィックの騎士を嘲笑うかのように至るところで足止めしていた。魔法将軍ホーグ・イセニアによる圧倒的な”闇”の精霊魔法が騎士たちの精神まで蝕もうとしている。苦しそうな表情をしながら部下がシュールトを守るように剣を振るう。
「団長、ここは俺が」
「魔物に指示を出している魔法使いがどこかにいるはずだ! 探せ!」
彼らの狙いはリシャルトの子を妊娠した聖女ジゼルフィアが持つ魔力である。王城へ向かう魔物たちを征伐しつつ、彼らに従っていた花鳥の兵士を捕獲しつつ、王城騎士団は埒が明かない攻撃を止めさせるため親玉となるホーグを仕留めようと動向を探っている。
シュールトは自分の傍で聖女を虎視眈々と狙っていたホーグが国ごと奪いに来た現実とも戦っていた。なぜ彼がそこまでして聖女ジゼルフィアを求めているのか。なぜ彼は”取引”で魔物を操る異能を手に入れたのか。ハーヴィックで名を封じられた悪魔の妃がホーグに荷担しているのはなぜか。リシャルトのように”死に戻り”で先の記憶を持たないシュールトは、襲いかかってくる見えない敵に疑心暗鬼に陥りつつあった。
――それが魔物による精神操作だったのかはいまとなってはわからない。
ハーヴィックからいちばん近い冥界への入り口、冥穴のある街ブレーケレ。
色濃い”闇”の気配が魔物の動きを活性化させていた。人間の血のニオイに酩酊としながら、ご馳走にありつかんばかりに魔物は敵味方関係なしに飛びかかり、生き血を啜る。
「うゎっ!」
「団長!」
持っていた剣を弾かれ、魔物の触手がシュールトを拘束する。透明な淡い黄緑色の粘液が彼の顔面から孔と言う孔を封じるように流れ込む。息ができない!
魔力だけなら免疫を持つシュールトだが、魔法による物理的攻撃から逃れることは叶わない。こんなところで無様に殺されてしまうのかと焦りを見せるシュールトの前に、漆黒の魔法使いが姿を表す。
――花鳥の魔法将軍ホーグ・イセニア。公国を乗っ取り聖女を奪おうと戦を起こした張本人だ。
「ずいぶんあっさり捕まったものだな。シュールト殿下。このまま窒息して死ぬのと、僕の手下になるのと、どっちがいい?」
「――!!」
呼吸が止まった状態のシュールトが苦しそうに睨み付けると、ホーグが楽しそうに言葉を紡ぐ。
「そういえば。マヒ様はね、強靭な肉体を求めているんだ。ちょうどいい、殿下の身体を魔法で改造してしまおう!」
――待て、俺の身体に何をする気……ッ!?
シュールトの意識に星が散る。
そこから先の記憶は途絶え、彼の第二王子としての人生はホーグに弄ばれる形で奪われる――……。
魔法酔いしない体質のハーヴィック第二王子シュールトは王城騎士団を任されるだけあって魔物との戦いにも慣れている。だが、人間の姿に模した魔物と戦うということはいままで経験したことがなかった。戦場に出現した傭兵然とした魔物は人間のように武器を扱うかと思えば思いがけないかたちで触手を繰り出し、躊躇うハーヴィックの騎士を嘲笑うかのように至るところで足止めしていた。魔法将軍ホーグ・イセニアによる圧倒的な”闇”の精霊魔法が騎士たちの精神まで蝕もうとしている。苦しそうな表情をしながら部下がシュールトを守るように剣を振るう。
「団長、ここは俺が」
「魔物に指示を出している魔法使いがどこかにいるはずだ! 探せ!」
彼らの狙いはリシャルトの子を妊娠した聖女ジゼルフィアが持つ魔力である。王城へ向かう魔物たちを征伐しつつ、彼らに従っていた花鳥の兵士を捕獲しつつ、王城騎士団は埒が明かない攻撃を止めさせるため親玉となるホーグを仕留めようと動向を探っている。
シュールトは自分の傍で聖女を虎視眈々と狙っていたホーグが国ごと奪いに来た現実とも戦っていた。なぜ彼がそこまでして聖女ジゼルフィアを求めているのか。なぜ彼は”取引”で魔物を操る異能を手に入れたのか。ハーヴィックで名を封じられた悪魔の妃がホーグに荷担しているのはなぜか。リシャルトのように”死に戻り”で先の記憶を持たないシュールトは、襲いかかってくる見えない敵に疑心暗鬼に陥りつつあった。
――それが魔物による精神操作だったのかはいまとなってはわからない。
ハーヴィックからいちばん近い冥界への入り口、冥穴のある街ブレーケレ。
色濃い”闇”の気配が魔物の動きを活性化させていた。人間の血のニオイに酩酊としながら、ご馳走にありつかんばかりに魔物は敵味方関係なしに飛びかかり、生き血を啜る。
「うゎっ!」
「団長!」
持っていた剣を弾かれ、魔物の触手がシュールトを拘束する。透明な淡い黄緑色の粘液が彼の顔面から孔と言う孔を封じるように流れ込む。息ができない!
魔力だけなら免疫を持つシュールトだが、魔法による物理的攻撃から逃れることは叶わない。こんなところで無様に殺されてしまうのかと焦りを見せるシュールトの前に、漆黒の魔法使いが姿を表す。
――花鳥の魔法将軍ホーグ・イセニア。公国を乗っ取り聖女を奪おうと戦を起こした張本人だ。
「ずいぶんあっさり捕まったものだな。シュールト殿下。このまま窒息して死ぬのと、僕の手下になるのと、どっちがいい?」
「――!!」
呼吸が止まった状態のシュールトが苦しそうに睨み付けると、ホーグが楽しそうに言葉を紡ぐ。
「そういえば。マヒ様はね、強靭な肉体を求めているんだ。ちょうどいい、殿下の身体を魔法で改造してしまおう!」
――待て、俺の身体に何をする気……ッ!?
シュールトの意識に星が散る。
そこから先の記憶は途絶え、彼の第二王子としての人生はホーグに弄ばれる形で奪われる――……。
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