110 / 191
第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》
ふたりきりの歓楽街 04
しおりを挟む唇を塞がれ、舌先で歯列をなぞられた音寧は与えられる快楽から逃れようと彼の胸を叩くが、両手首を掴まれて、抵抗できない状態に追い詰められてしまう。カタカタと揺れる俥の上で、日傘に隠れながら濃厚な接吻を仕掛けた資に、いつしか音寧も溺れてしまう。銀糸のような涎が唇の端からつぅと垂れているのを目ざとく見つけた資に舐め上げられて、音寧は真っ昼間の歓楽街にいるにも関わらず、甲高い喘ぎ声を零してしまう。
「ひぁーんっ……」
「外で見られているかもしれないと思いながらする接吻は、気持ちいい?」
「! た、たすくさまっ」
「顔を真っ赤にして、俺の名を呼んでくれる姫を独り占めできるなんて、夢のようだよ」
「はぁんっ、そ、そっちはだめっ……」
執拗に服の上から乳首を責め立てていた彼の指は、いつしかスカートの下に潜り込んでいる。すでに湿り気を帯びている下着にふれて、資は勝ち誇った表情を浮かべる。
「布の上からでもわかるよ。濡れているね」
「いぁあっ」
「そんな声を出すな。脱がせたくなる」
「うぅ……」
濡れた下着の線をなぞり、秘芽が隠れている突起を指先でぐいぐい刺激して、資は泣きそうな音寧に甘い疼きを与えていく。
俥の揺れも相まって、まるで酔っているかのような感覚に陥った音寧は、いつしか身体をだらりと弛緩させていた。
「はぁ……ぁっ」
「あとでゆっくり堪能させてもらうぞ。せっかくの浅草でえとだ、ふたりで日暮れまで楽しもうではないか」
「こ、こんな状態ででえとなんて……日が暮れる前に動けなくなってしまいます」
「この程度で腰が砕けるとでも? 大事無い、そうなったら俺が介抱してやるから」
「っ、その介抱が怖いです……」
悪戯っぽく微笑む資に俥のうえでさんざん唇を貪られ愛撫に翻弄された音寧は、もはや観光どころではないと涙目になりながら俥を降り、ふらつく身体を彼に支えられながら、おそるおそる歩きだすのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
67
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる