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第二部 初恋輪舞 大正十二年文月~長月《夏》

強がりな半分の女神のおねだり 01

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「資さま。これで、わかったでしょう? わたしが男の精を受けることで異能を発揮する、いやらしい女だってこと」

 資が寝台に押し倒したはずの身体が軽やかに跳ね上がる。そして音寧は自ら着ていた露草色の涼しげなワンピースを脱ぎ捨てた。
 そしてそのまま資の方へ向き直り、軍服のズボンのボタンを器用にはずして自己主張している分身に手を伸ばす。

「!?」
「資さまがご存知の通り、時宮の女たちがつかう異能は男性の精液を魔力の媒介にしているんです。あやねえさまが破魔のちからをはじめとした魔を退ける異能と、時を翔る召喚能力を扱う原動力。そしてわたしも、男の精がなければ魔のモノを感じることもできないし、払魔の祝詞もつかえない無能です」

 淡々と、事実を口にしながら、音寧は彼のいきり勃った陰茎を撫でつづける。自分からふれたことなどいままでなかったのに、これでこの世界の彼とはお別れなのだと悟ったからか、彼女は愛おしそうに両の手で資の分身を包み込んで、しごいていた。

「くっ……何を、いまさ、ら」
「わたしは男の精が欲しくて、彼方に近づきました。男のひとなら、誰でも構わなかったんですよ?」

 苦悶を浮かべる資の雁首をさすりながら、音寧はゆっくりと顔を近づけていく。海の香りがする、愛しい彼の熱い楔の方へ。
 ちろりと、ちいさな舌が資の亀頭の先にふれる。「やめろ」という彼を無視して、音寧は既に先走りで光っている鈴口へ舌を這わす。

「なんて、冗談ですよ。ね、最後くらい、わたしに資さまを愛させてくださいな。宝物のように大切にしてくださった資さまを、今度はわたしが気持ちよくさせたいです……」
「おと、ね……」

 寝台の上に仰向けになるよう陰茎を舐める音寧に乞われ、資は下半身だけ裸の状態になって横になる。彼女が奏でる淫らな水音が、資を未知なる快楽へ導こうとしていた。怒りのままに彼女を押し倒して乱暴に抱いて、それで終わりだと思っていたのに、あろうことか資が彼女に愛されている。

「ああ、やっぱり男のひとも舐められると気持ちがいいんですね……もっと早く、気づけばよかった」
「え?」
「いいえ。わたしも資さまのことは言えません。未熟なのはお互い様、で」
「ン……ッ!」

 精一杯口をひらいた音寧が、資の亀頭を覆うように、陰茎を咥えこむ。下の口では何度も咥えていた愛する旦那様の陰茎を、今度は上の口で、必死になって愛撫する。
 自分の歯で傷つけないように舌をつかいながら、たどたどしく口腔内で膨れ上がる感触を堪能していた音寧は彼が艶めいた吐息を零していることに気づいて顔をあげる。自分の分身を咥えた状態で微笑む音寧を前に、資の頬が真っ赤に染まる。

「お、おとね……」
「わたしをこんな風に躾けたのは、彼方ですよ?」
「うそ、だ」
「気持ちいいですか?」
「あ、ああ……まるで貴女のなかに挿入いれているみたいだ」

 混乱しながらも、音寧の口淫に感じて悶える資は、思いのままを口にして、頬を膨らませる。

「……が、俺はそんな風に奉仕させたいわけではない」
「資さまなら、そうおっしゃると思いました。だけど、わたしがしたかったんです」

 魔力の媒介となる精液は口から飲んでも有効だと資が言っていた。与えられるばかりだった自分が、彼に快楽を与えて、その証に精液を体内に蓄えることができれば、きっと強い魔力を生み出せる――……
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