【R18】ふたりしずか another

ささゆき細雪

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肆 その六

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 まだ薄暗い明け方。
 静が目覚めたとき、既に腹心の侍女の姿はあとかたもなく消えていた。
 まるで雪がとけてしまったかのように。
 褥から起き上がった静は義経から事情をきいて、はらりはらりと音もなく涙を零す。
 静の瞳から溢れだす涙を、義経は舌先で舐めとり、せっかく起床した妻を再び押し倒す。
 言葉数少なく、大切なひとがいなくなった現実に耐えるように、ふたりは身体を求めあう。
 その様子を禅が黙って見つめている姿すら、気づかずに。

 ……慰めあうふたりの姿はなんて果敢なげで美しいのだろう。

 嫉妬、という醜い感情は不思議と生まれない。
 いつ敵からの襲撃を受けて生命を散らすかわからない瀬戸際にいるからか、ふだんなら目を背けたくなるような愛するひとが別の女性とまぐあう姿すら、神々しく見えてしまう。
 義経の隣にいるのが静だからなのかもしれない。
 彼女もまた、運命に翻弄されてここまで流れ着いてしまった。堕落していく義経を見捨てず、一途に想い続ける彼女の姿は禅が持つ義経への想いとは似ていて非なるものだけど。

 共感した。

 ちいさな乳房に顔を埋めて義経は静を貪る。
 静は喪失の悲しみを快感へと塗り替えられていく罪深さに溺れながら、彼の楔に貫かれていく。
 堪えていたものがあふれ出てくるかのように、幼な妻の蜜壺から飛沫が奔る。

「よ、義経様……禅が、見て、ます」

 意識を飛ばして現世に戻ってきた静は、禅が自分たちの性交を凝視していたことにようやく気付いたらしい。
 義経はそんな静の髪に口づけを落としてから、くすりとほほ笑む。

「お前も欲しいか?」
「……ッ!」

 赤面している静を褥に横たわらせ、義経は禅の方へ身体を寄せる。
 下半身は一度精を放ったにも関わらず、屹立を保ったままだ。
 新たな獲物を発見したかのごとく、全裸の義経は禅を抱きしめる。
 汗と精液に塗れてた雄の匂いに、禅は身体が疼くのを抑えられない。

「義経っ」

 こんなのおかしい、間違っていると心の奥では思いながらも禅は義経の誘惑を拒めずにいる。
 静は自分の夫が禅に襲い掛かる姿を見て、目をまるくしている。

「いちど、やってみたかったんだよな。さんにんで」
「……莫迦」
「静も見ていないでおいで。アイツの手技はとても気持ちがいいんだ」

 夫の掛け声に静はハッとして立ち上がり、義経の傍へ侍る。禅の横を通り過ぎた際に、ふわりと花の香りがした。

「俺ってどうしようもない男だろう?」

 禅の夜着をするりと脱がしながら、義経は嗤う。
 真っ白な陶磁のような肌とふるふる揺れるふたつの果実が静の前へ現れる。

「綺麗な、カラダ……」

 恍惚とした表情で静は禅のおおきな乳房に手を伸ばす。義経よりもちいさな手が、禅の身体を興味深そうに探っていく。義経は静のちいさな尻を掴んだかと思えば、そのまま滴り落ちる愛液をじゅるじゅると舐めとっている。淫靡な音が響く都度、はぁん、と静がうっとりした声を漏らす。その瞬間、禅の乳首をぎゅっと抓られ禅もまた、甘い声で啼く。
 禅も彼女のすべらかな腿に手を伸ばし、仕返しだとばかりに静の秘芽を剥く。
 自分で自分を慰めたときのように、彼女が気持ちよくなるように。
 義経はふたりが乳繰り合う姿に興奮して陰茎の嵩を更に膨らましている。

「禅、だめ、おかしくなっちゃう!」

 義経と禅によって静の身体は三度の絶頂を繰り返す。
 気づけば夫によって姫壺へ楔を再び打ち込まれ、褥の上に磔にされた静は抵抗する暇も与えられず、義経によって右乳首を吸われ、秘芽を虐める手を止めない禅によって左乳首を舐めしゃぶられ、未知なる快感の波に揺さぶられていた。

「静が達く姿、素敵よ。もっとあたしにも見せて」

 快楽に酔うちいさな身体を義経と手籠めにして、禅は静の身体を隅から隅まで暴いていく。
 義経よりも繊細で丁寧な禅と、夫の大胆な攻めに静は息を荒げ、激しく啼きつづける。
 やがて子宮の奥に向けて白濁を爆ぜた義経は身体を震わせたままの静から標的を禅へ移す。

「次はお前だ……お、もうぐしょ濡れじゃないか」

 静の乱れた姿に興奮したからか、義経に触れられていなかった禅の蜜壺からも、じわりと愛液が湧いている。
 禅は嬉しそうな義経を見てくすりと笑う。

「今度はあたしが上に乗ってあげるわ、義経サマ」

 義経に飛び掛かり、自ら腰を楔へ打ち付ける禅を、絶頂に打ちひしがれる静が呆然と見つめている。
 たくさんの女の人と関係を持った義経。女の人を抱く方法は千差万別。
 自分だったら、こんな風に義経を操縦できない。
 腰をくねくねと上下に動かして、婀娜っぽく微笑む姿に静の胸もときめきの焔を灯す。

「ああ、最高だよ……」

 禅の桃尻に手を伸ばし、義経ががつんがつんと腰を突き上げる。
 激しい熾火のようなふたりの交わりを、静は美しいと感じる。
 禅が静と義経が交わる姿を美しいと心底感心していたのと、同じように。

「イクっ、あっ。義経サマっ!」
「俺もだ……お前の胎に、出すぞ……!」

 狂宴は義経が果てたことで終わりを告げた。
 禅の胎のなかにも静と同じくらい、たっぷりと白濁が注がれた。

「――朝、だ」

 慌てて夜着を羽織りながら、静は呟く。
 秀足、三郎に会えた……よね?
 愛するひとを追いかけて姿を消した侍女を想いながら、静は自分の夫と愛妾とともに朝陽を拝む。

 夜の帳もいつしか完全に消え、お天道様が不健全な三人を知らん顔で迎えてくれた。
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