28 / 34
肆 その六
しおりを挟むまだ薄暗い明け方。
静が目覚めたとき、既に腹心の侍女の姿はあとかたもなく消えていた。
まるで雪がとけてしまったかのように。
褥から起き上がった静は義経から事情をきいて、はらりはらりと音もなく涙を零す。
静の瞳から溢れだす涙を、義経は舌先で舐めとり、せっかく起床した妻を再び押し倒す。
言葉数少なく、大切なひとがいなくなった現実に耐えるように、ふたりは身体を求めあう。
その様子を禅が黙って見つめている姿すら、気づかずに。
……慰めあうふたりの姿はなんて果敢なげで美しいのだろう。
嫉妬、という醜い感情は不思議と生まれない。
いつ敵からの襲撃を受けて生命を散らすかわからない瀬戸際にいるからか、ふだんなら目を背けたくなるような愛するひとが別の女性とまぐあう姿すら、神々しく見えてしまう。
義経の隣にいるのが静だからなのかもしれない。
彼女もまた、運命に翻弄されてここまで流れ着いてしまった。堕落していく義経を見捨てず、一途に想い続ける彼女の姿は禅が持つ義経への想いとは似ていて非なるものだけど。
共感した。
ちいさな乳房に顔を埋めて義経は静を貪る。
静は喪失の悲しみを快感へと塗り替えられていく罪深さに溺れながら、彼の楔に貫かれていく。
堪えていたものがあふれ出てくるかのように、幼な妻の蜜壺から飛沫が奔る。
「よ、義経様……禅が、見て、ます」
意識を飛ばして現世に戻ってきた静は、禅が自分たちの性交を凝視していたことにようやく気付いたらしい。
義経はそんな静の髪に口づけを落としてから、くすりとほほ笑む。
「お前も欲しいか?」
「……ッ!」
赤面している静を褥に横たわらせ、義経は禅の方へ身体を寄せる。
下半身は一度精を放ったにも関わらず、屹立を保ったままだ。
新たな獲物を発見したかのごとく、全裸の義経は禅を抱きしめる。
汗と精液に塗れてた雄の匂いに、禅は身体が疼くのを抑えられない。
「義経っ」
こんなのおかしい、間違っていると心の奥では思いながらも禅は義経の誘惑を拒めずにいる。
静は自分の夫が禅に襲い掛かる姿を見て、目をまるくしている。
「いちど、やってみたかったんだよな。さんにんで」
「……莫迦」
「静も見ていないでおいで。アイツの手技はとても気持ちがいいんだ」
夫の掛け声に静はハッとして立ち上がり、義経の傍へ侍る。禅の横を通り過ぎた際に、ふわりと花の香りがした。
「俺ってどうしようもない男だろう?」
禅の夜着をするりと脱がしながら、義経は嗤う。
真っ白な陶磁のような肌とふるふる揺れるふたつの果実が静の前へ現れる。
「綺麗な、カラダ……」
恍惚とした表情で静は禅のおおきな乳房に手を伸ばす。義経よりもちいさな手が、禅の身体を興味深そうに探っていく。義経は静のちいさな尻を掴んだかと思えば、そのまま滴り落ちる愛液をじゅるじゅると舐めとっている。淫靡な音が響く都度、はぁん、と静がうっとりした声を漏らす。その瞬間、禅の乳首をぎゅっと抓られ禅もまた、甘い声で啼く。
禅も彼女のすべらかな腿に手を伸ばし、仕返しだとばかりに静の秘芽を剥く。
自分で自分を慰めたときのように、彼女が気持ちよくなるように。
義経はふたりが乳繰り合う姿に興奮して陰茎の嵩を更に膨らましている。
「禅、だめ、おかしくなっちゃう!」
義経と禅によって静の身体は三度の絶頂を繰り返す。
気づけば夫によって姫壺へ楔を再び打ち込まれ、褥の上に磔にされた静は抵抗する暇も与えられず、義経によって右乳首を吸われ、秘芽を虐める手を止めない禅によって左乳首を舐めしゃぶられ、未知なる快感の波に揺さぶられていた。
「静が達く姿、素敵よ。もっとあたしにも見せて」
快楽に酔うちいさな身体を義経と手籠めにして、禅は静の身体を隅から隅まで暴いていく。
義経よりも繊細で丁寧な禅と、夫の大胆な攻めに静は息を荒げ、激しく啼きつづける。
やがて子宮の奥に向けて白濁を爆ぜた義経は身体を震わせたままの静から標的を禅へ移す。
「次はお前だ……お、もうぐしょ濡れじゃないか」
静の乱れた姿に興奮したからか、義経に触れられていなかった禅の蜜壺からも、じわりと愛液が湧いている。
禅は嬉しそうな義経を見てくすりと笑う。
「今度はあたしが上に乗ってあげるわ、義経サマ」
義経に飛び掛かり、自ら腰を楔へ打ち付ける禅を、絶頂に打ちひしがれる静が呆然と見つめている。
たくさんの女の人と関係を持った義経。女の人を抱く方法は千差万別。
自分だったら、こんな風に義経を操縦できない。
腰をくねくねと上下に動かして、婀娜っぽく微笑む姿に静の胸もときめきの焔を灯す。
「ああ、最高だよ……」
禅の桃尻に手を伸ばし、義経ががつんがつんと腰を突き上げる。
激しい熾火のようなふたりの交わりを、静は美しいと感じる。
禅が静と義経が交わる姿を美しいと心底感心していたのと、同じように。
「イクっ、あっ。義経サマっ!」
「俺もだ……お前の胎に、出すぞ……!」
狂宴は義経が果てたことで終わりを告げた。
禅の胎のなかにも静と同じくらい、たっぷりと白濁が注がれた。
「――朝、だ」
慌てて夜着を羽織りながら、静は呟く。
秀足、三郎に会えた……よね?
愛するひとを追いかけて姿を消した侍女を想いながら、静は自分の夫と愛妾とともに朝陽を拝む。
夜の帳もいつしか完全に消え、お天道様が不健全な三人を知らん顔で迎えてくれた。
8
あなたにおすすめの小説
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる