正しいアヤマチのおかし方

ささゆき細雪

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 一度子種を吐きだした陰茎はふにゃふにゃで柔らかくなっていたが、僕は気にすることもなく手で掴み、ゆっくりと扱き出す。なんだか自分ばかり気持ちよくなっている気がして申し訳ない。それに、嫁入が一回で満足するとは思えなかったから、フェラチオをはじめた。僕のちいさな口で咥えると、彼の先っぽがぴくっと反応する。
 膣奥に入っていたときは丸太みたいだと思っていたがこうしてみるとそれは嘘であることが理解できる。だって、硬さを持ってはいるけれどこれはあたたかくて、舌先でふれると思っていたよりもやわらかいのだ。

「んぉ……やめ。ろ……そこ」
「さっきの仕返しだ。君も気持ちよくなって何度も子種を出せばいい」

 苦味のある青臭い精液の名残を舌に乗せて僕は笑う。
 彼が僕のなかに吐きだしてくれた子種。もっとたくさん出して欲しい。
 もしかしたら僕は嫁入が言うように「淫乱」の素質があるのかもしれない。

 ちゅぱちゅぱきゅきゅきゅ、と唇を使って雁首と亀頭のあいだを行き来すれば、嫁入が顔を真っ赤にして色っぽい声を出す。それが面白くて、調子に乗って舌の動きも加えてみる。すると、へにゃへにゃだった彼の肉の棒はむくむくと生気を取り戻し、しょっぱい先走り液を溢れ出すまでに回復する。もういちど舌を這わせれば、彼が悔しそうに呻き声をあげて僕の背中を拳でたたく。

「野原、悪役みたいだぞ」
「なんとでもいえ。物足りないんだろう?」
「物足りないのはお前の方じゃないのか?」
「む……なっ、何を」
「ほら、さっきからずっと指を入れていたのに気づいてないなんて……どろっどろのままじゃねーか」
「――くぁんっ!」

 てっきり腰を掴んでいるだけだと思ったのに、僕が嫁入の分身を夢中になって頬張っている間、彼もまた僕の身体に悪戯をしていたようだ。
 彼によってくっぱりとひらかれた秘処には既に指が三本も入っていた。そう、彼は指を入れたまま動かさないで、もう片方の手を僕の背中にまわしてフェラを凝視していたのだ。
 そして愛蜜でどろどろの秘処を僕に意識させるために彼はふたたび上下左右に指をばらばらと動かしだす。達することを覚えた身体は呆気なく陥落する。媚鳴をあげながら腰を浮かせれば、ベッドの敷布に愛液が散る。
 嫁入の陰茎を両手で掴んだ状態で軽く達した僕はそのまま彼のお腹のうえへ倒れこむ。

「ぅあっ……あぁ――ぁあっ」
「欲しいのは、これだろ?」
「……っ」

 悪役みたいだ、といいながら僕に彼の分身を求めさせる嫁入。君のほうが悪役の素質があると思う。
 悔しいが、彼の言うとおり、僕はまだ物足りない。
 ぎゅっ、と肉の棒を握り締めれば、肯定だなと言いたげに嫁入がすこしだけ顔を歪めて微笑んだ。

「今度は、お前が俺の上に乗ってみ」
「え」
「そんなに欲しいなら、自分から腰を沈めて、動けばいいんだよ」

 天井に視線を向ける彼に、僕は顔を赤くする。彼もまた、この部屋の仕組み――おおきな鏡天井――に気づいたのだろう。そしてよがる僕を鏡のなかでも堪能するために、今度は自分が下になると言い出したのだ。

「はじめのうち、やたら上を気にしてたから何かと思ったんだ……こんな風になっているとはね」

 嫁入の指が外へ出ていく。つづきはおちんちんで。そう言いたそうな彼の視線を受けて、僕も観念する。


「わかった――乗ってみる」


   * * *


 楔に貫かれた不安定な状態で、僕の身体はゆさゆさと揺れる。両手は嫁入のおおきな左手にひとつに束ねられ、彼の右手だけが自由に僕の敏感なところを苛めつづける。
 左右の乳首に、クリトリス。時折口での愛撫も織り交ぜ先ほどから甘い疼きを生み出しては、あっちこっちを刺激している。
 奥深くを抉られながら身動きが取れずに腰を振るだけの僕を満足そうに見つめる嫁入。
 ――彼はまだ、自分から腰を振っていない。
 僕がひとり滑稽なまでに腰を振って、よがる姿を眺めている。
 彼の目線は僕と、その向こうにあるおおきな鏡。

「ふぅあぁんっ……するがの、意地悪っ……」
「心臓に負担をかけたら大変だ。まずは自分のペースで」
「だ、だけどこれじゃあ、イけないよぉ……っ!」

 僕の身体は嫁入に占領されている。
 彼の熱い楔を膣奥に穿たれた状態で、蛇の生殺しみたいに、中途半端な快感だけを与えられて。
 気持ちいいけれどじれったい感覚に、僕はもどかしくなって、すすり泣く。

「ねぇ、動いて……僕だけじゃイけないの……お願いっ」

 自分で腰を振って気持ちよくなれる場所を探すのも限界だ。
 予測できない彼の動きが欲しい。もっと、彼に求めて欲しい!

「――ごめん、野原。そんな風に泣かれたら……もう我慢できない!」
「あぁ……いゃぁああ―――あんっ!」

 そこから先は早かった。
 いままで嫁入がセーブしていた諸々を僕が一気に壊してしまったから。
 お互いに声にならない声を上げて、鏡に映っていようが気にすることなく、獣のように交わりあう。腰を高く突き上げられて、僕はふたたび絶頂に辿りつく。そう、これが欲しかったもの……!
 そして彼は僕の子宮口へ二度目の種まきをし、噛み付くような接吻をしながら、三回戦へ。
 心臓への負担が、とお互いに心配していた先ほどまでとは打って変わった性交は、彼が僕の膣奥へ溢れそうなほどの白濁を出し終えたところで、ぱたっと落ち着いた――……
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