4 / 8
+ 4 +
しおりを挟む* * *
ひんやりとした空気がリクヒトを襲う。ハッと目を覚ませば、そこには全裸のセツナがいた。なぜかリクヒトもはだかでいる。
「セツナ……?」
「良かった。気がついたのね」
ごめんね、予備電源が切れちゃったんだ、とセツナはヒーターを指さす。寒いと感じたわけだ。セツナは人の肌で暖をとろうと、はだかになったのだろう。けど、雨や雪に降られたわけではないのだからはだかになる必要はないような……それともこれはリクヒトの願望なのか?
小柄なセツナは雪を彷彿させる真っ白な肌を震わせている。ホテルではアップにしていた黒髪も肩までおろされ、鎖骨まで流れている。着やせするタイプなのか、想像していたよりも胸がおおきいのに驚く。蕾の色は桜色。無垢でありながら、アンバランスな体つきを前に、なんだか夢を見ているみたいだとリクヒトは毒づく。
「……ここ、は?」
「藍屑の隠れ家って呼ばれる山小屋よ。山の神ですら立ち入ることの許されない、妻神の生家」
「なんの、こと?」
「かわいそうなリクヒト。うっかり殺人鬼になったばっかりに……」
哀れみと同情が混じったセツナの眼差しに、これは悪い夢のつづきなのだと悟る。
山の神が棲まうといわれる禁域に五人で行った際に、転んですこしだけ血を流した。その血が引き金になったのだろうか。だがセツナは禁域に立ち入る程度なら山の神が人食い熊の姿を借りて降りて来ることはないと言っていた。ほかに思いつくことは……
「リクヒトが追われているのは、獲物を横取りしたからよ。あのふたりも、山の神に裁かれるはずだったの」
セツナは寝台のうえで硬直しているリクヒトの身体を撫でながら、容赦なく告げる。
「山の神はとても嫉妬深いの。禁域に立ち入るだけなら問題ない。けれどそれが夫婦や恋人同士だと……」
「それだけで、食い殺されるってのか……?」
「禁域で睦みあうアベックは格好の餌食よ。だから地元の人間はけして男女一緒に入ることはない」
「知っていて俺たちを送り出したのか?」
「だってまさか禁域まで行くとは思わなかったんだもの。トクノ草はどこにでも生えてるし」
すべては禁域に立ち入ったリクヒトたちが悪いと一蹴して、セツナは問いかける。
「妻神は山の神の嫉妬から逃れ、ここにいたの。殺される前に、間男と抱き合っている姿を見せつけたの。ねぇ、せっかく死ぬのなら、山の神に見せつけてから一緒に逝きましょう?」
気持ちは冷めているというのに、リクヒトの身体は反応していた。セツナの手で雄を扱き上げられ、身体に熱が戻っていく。
外では山の神やその御遣いがリクヒトを狙っているというのに、セツナはそんなことどうでもいいわと性技を施す。
「セツナ……なんで」
「理由が必要? そんなこと、どうだっていいじゃない」
死の危機を感じた際に生殖本能が覚醒するのはいまにはじまったことではないのだから、と。
0
あなたにおすすめの小説
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
放課後の保健室
一条凛子
恋愛
はじめまして。
数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。
わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。
ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。
あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。
幼馴染みのアイツとようやく○○○をした、僕と私の夏の話
こうしき
恋愛
クールなツンツン女子のあかねと真面目な眼鏡男子の亮汰は幼馴染み。
両思いにも関わらず、お互い片想いだと思い込んでいた二人が初めて互いの気持ちを知った、ある夏の日。
戸惑いながらも初めてその身を重ねた二人は夢中で何度も愛し合う。何度も、何度も、何度も──
※ムーンライトにも掲載しています
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる