ひとつ屋根の下、殺し愛

ささゆき細雪

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   * * *


 ひんやりとした空気がリクヒトを襲う。ハッと目を覚ませば、そこには全裸のセツナがいた。なぜかリクヒトもはだかでいる。

「セツナ……?」
「良かった。気がついたのね」

 ごめんね、予備電源が切れちゃったんだ、とセツナはヒーターを指さす。寒いと感じたわけだ。セツナは人の肌で暖をとろうと、はだかになったのだろう。けど、雨や雪に降られたわけではないのだからはだかになる必要はないような……それともこれはリクヒトの願望なのか?
 小柄なセツナは雪を彷彿させる真っ白な肌を震わせている。ホテルではアップにしていた黒髪も肩までおろされ、鎖骨まで流れている。着やせするタイプなのか、想像していたよりも胸がおおきいのに驚く。蕾の色は桜色。無垢でありながら、アンバランスな体つきを前に、なんだか夢を見ているみたいだとリクヒトは毒づく。

「……ここ、は?」
「藍屑の隠れ家って呼ばれる山小屋よ。山の神ですら立ち入ることの許されない、妻神の生家」
「なんの、こと?」
「かわいそうなリクヒト。うっかり殺人鬼になったばっかりに……」

 哀れみと同情が混じったセツナの眼差しに、これは悪い夢のつづきなのだと悟る。

 山の神が棲まうといわれる禁域に五人で行った際に、転んですこしだけ血を流した。その血が引き金になったのだろうか。だがセツナは禁域に立ち入る程度なら山の神が人食い熊の姿を借りて降りて来ることはないと言っていた。ほかに思いつくことは……

「リクヒトが追われているのは、獲物を横取りしたからよ。あのふたりも、山の神に裁かれるはずだったの」

 セツナは寝台のうえで硬直しているリクヒトの身体を撫でながら、容赦なく告げる。

「山の神はとても嫉妬深いの。禁域に立ち入るだけなら問題ない。けれどそれが夫婦や恋人同士だと……」
「それだけで、食い殺されるってのか……?」
「禁域で睦みあうアベックは格好の餌食よ。だから地元の人間はけして男女一緒に入ることはない」
「知っていて俺たちを送り出したのか?」
「だってまさか禁域まで行くとは思わなかったんだもの。トクノ草はどこにでも生えてるし」

 すべては禁域に立ち入ったリクヒトたちが悪いと一蹴して、セツナは問いかける。

「妻神は山の神の嫉妬から逃れ、ここにいたの。殺される前に、間男と抱き合っている姿を見せつけたの。ねぇ、せっかく死ぬのなら、山の神に見せつけてから一緒に逝きましょう?」

 気持ちは冷めているというのに、リクヒトの身体は反応していた。セツナの手で雄を扱き上げられ、身体に熱が戻っていく。
 外では山の神やその御遣いがリクヒトを狙っているというのに、セツナはそんなことどうでもいいわと性技を施す。

「セツナ……なんで」
「理由が必要? そんなこと、どうだっていいじゃない」

 死の危機を感じた際に生殖本能が覚醒するのはいまにはじまったことではないのだから、と。
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