飾り物の瞳に光

ささゆき細雪

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   * * *


 休み時間。
 暁乃は白坂と二人で廊下に行ってしまったようだ。あの二人は仲がいいのか悪いのかよくわからない。まぁ、女には女同士の会話というものがあるのだろう。
 そのときだった。

「大分、山口の様子、おかしくないか?」

 僕はクラスメイトに言われて暁乃が廊下で白坂と会話をしていたことを思い出し、目を向ける。
 廊下側の窓の向こうで、俯いた暁乃の姿が見えた。その横で、白坂が困ったように彼女の頭を撫でている。
 途方にくれているみたいだった。
 僕は席を立ち、廊下にいる二人のところへ行く。思った通り、暁乃は泣いていた。

「暁乃?」
「……泰介」
「白坂、どういうことだ?」
「大分君には関係ないことよ」
「な……」

 冷たく言い放され、僕はぎこちない雰囲気の中、二人を見比べる。
 アキノとチカゲ。暁と晩。対照的な名前をもつ二人。
 誰といても打ち解けてしまう魅力を持つ暁乃と、どこかミステリアスで人を寄せ付けない白坂。その二人が学校の廊下で呆然と佇んでいる姿は、どこか異様だ。

「何があったんだ?」
「何もないよ、泰介」

 涙をぬぐった暁乃は、いつものようにぎこちない笑みを浮かべて僕を牽制する。君には関係ないことだよ、って。

「暁乃ちゃ……」
「千晩。泰介に言っちゃ駄目だからね。あたしが自分で言うんだから」

 暁乃が何を言っているのか、付き合い始めて半年以上経過するというのに、僕には全然わからない。ただ、暁乃と白坂は言い争っていたわけではなさそうだった。

「大分君」

 白坂は、まるで僕に喧嘩を売るように、冷たい視線を向け、低い声を出す。

「何だ?」

「暁乃ちゃんのこと、傷つけたり、深く追い詰めたりしたら、あたし、許さないから」

 は? 許す許さないの問題なのか?
 混乱している僕を見て、暁乃がくすっと笑う。

「大丈夫。泰介は泰介だもの」
「?」

 二人の会話についていけず、僕はただひたすら首を傾げるばかりだ。
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