義姉を陥れるためのシューベルトピアノソナタ第16番

ささゆき細雪

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 ――そうだ、アキフミだけが、あたしを求めない。





 義姉が双子の義弟とお目付け役の秘書に犯されているというのに、シューベルトのピアノソナタを奏でるのに夢中の義弟。
 彼が、お膳立てをしたのだと神宮寺は言い、双子は彼に未苑が持つ紫葉リゾートの社長という肩書きを譲渡するよう口にしている。
 もしかしたら、不在の父親も関わっているのかもしれない。
 礼文がその気になったから未苑はもう、不要だと。だけど――……
 
「神宮寺もぼくも史也も、みんな未苑姉ちゃんがすきなんだ。仕事のことは礼文兄ちゃんに任せて。未苑姉ちゃんはこのままここにいていいんだよ」
「ああ、閉じ込めて、いつまでも三人で愛しあおう」
「仕事で苦しまれていたお嬢様を悦ばせるのが、私の幸せでございます」

 三人の男たちに好き勝手愛を囁かれ、未苑の足の先がぴんっと跳ね上がる。
 そのまま腰を打ちつけられて、未苑はくぐもった声をあげて、また、意識を飛ばす。
 双子に精液を叩きつけられ、神宮寺に優しく抱かれ、ようやく目隠しを外される。
 どこからつっこんでいいかわからない、義弟たちの理屈。
 だけど、未苑を想うがゆえの行為なのだと、双子は言い切り、未苑の体中にキスマークを刻みつける。
 仕事に蝕まれて神宮寺の想いに気づかなかったから、こんな風にどこか歪んだ形になってしまったのだろうか。
 未苑は瞳を潤ませながら、本日何度目かわからない快楽の渦に飲み込まれ。

「……あげる、あたしが持ってる会社のぜんぶ、アキフミにあげるからっ……」

 やめないで。
 この狂った宴を――……


   * * *


 シューベルトのピアノソナタ第16番を聴くたびに、未苑の身体は疼きだす。
 あれから礼文は紫葉不動産の子会社である紫葉リゾートの社長の座を精神を患い退職扱いとなった未苑から譲り受けた後、家族のことを置き去りにして山奥に篭ってしまった。
 本人いわく、そこの別荘地を買い上げて新たな産業を興したいとのことだが、史也が言うには、その地にこじらせた初恋が隠れているからだとか。執念深い彼は、初恋の君を手に入れるため義姉を陥れ、双子の弟たちに犯させるという最悪な方法で力を奪ったのだ。

 けれど、強烈な悦楽に沈み会社を譲ると口にしたのは未苑だ。あのまま仕事に追われつづけていたら、ほんとうに精神を病んで気がふれていたかもしれないし、最悪過労死していたかもしれない。神宮寺は未苑の危険な状況を察知し、義弟たちに救いを求めたのだろう。その判断は今となっては間違っていない。
 会社との接点を奪われた未苑は、相変わらずホテルの一室で薄衣一枚だけの着用を許された監禁同然の生活を送っている。毎日淫らな気持ちにしてくれるクスリを与えられた結果、仕事漬けの日々だったことも忘れ、いつしか男に抱かれていないと我慢できないいやらしい身体へと調教されてしまった。

 だけど、幼い頃から容姿の変わらない年齢不詳の神宮寺からありったけの愛を囁かれ、やんちゃで可愛い双子の義弟たちに求められる日々は、蜂蜜のように甘く。

「未苑姉ちゃん、ただいま!」
「今日もたっぷり愛してあげるからね」


 かくして義姉は快楽の虜となり、双子の義弟とお目付け役の元秘書に自ら身体を差し出すようになった。
 もはや快楽なしではいられない身体へと作り替えられた女体は、今日も三人の男たちから絶頂を教え込まれて、身体中に白い精液を浴びながら、うつくしくはなひらく――……



~ fin. ~
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