4 / 19
第1章 落葉襲来 編
第4話「魔力回路」
しおりを挟む尾鎌さんに布団を運ぶのを手伝ってもらい 話しながら帰宅する。
時間は午後の2時ほどで暑くなってきている。そんな中、俺達3人は話が盛り上がっていた。
「でさ、その時尾鎌さんが、私のお友達に手を出さないでくれるかしら?
ってどこからともなく取り出した鉄パイプを振ってキめたポーズがカッコ良くてさ」
「も~航ちゃんたら~。恥ずかしいじゃないの~」
「尾鎌さんは友人想いなんですね」
「紅葉ちゃんまで~。そんなに褒めても何も出てこないわよ~」
3人で俺の話す尾鎌さんとの思い出話で盛り上がっていた。帰り道に尾鎌さんについて知りたいと言ってきた宮瀬さんの要望に応えて話していたら次第に盛り上がっていき、尾鎌さんの武勇伝まで話すことになっていた。
なんとなくこんなたわいない話をするのが好きだ。平和な日常を感じとることができるというのもあるかもしれないが、正確なところは分からない。
だができるだけこんな時間を続けたい、それは確かな気持ちだった。
「ここが航ちゃんのマンションだったわね。」
しかし、いつまでもは続かない。
尾鎌さんもこの後予定があるらしく、長々引き止めるわけにはいかない。
二人でお礼を言って布団を受け取る。
受け取る際にすっと尾鎌さんが俺に顔を寄せる。
「そうそう。紅葉ちゃんを大切にしてあげるのよ。あれじゃ狙うのは多いはずよ。」
布団を受け取る時にそう耳打ちされる。やはり三木田と違いイラつかない。茶化した風ではなく真剣に考えてくれているのが伝わる。
まあ、彼女っていうのは尾鎌さんの勘違いなんだけど。
受け取り終わると尾鎌さんは、お二人ともまたね~と陽気に自転車に乗って去っていく。
「とりあえず運ぼうか。」
「はい。今日はありがとうございました。」
枕を気持ちよさそうに抱き抱える宮瀬さん。その姿が子供のようで可愛い。
部屋があるのはマンションの一階なので楽に運び終えて二人でゆっくりとリビングの椅子に腰をかけて休む。
「お疲れ様」
「あ、ありがとうございます」
持ってきた冷えた緑茶を二人で飲む。一口飲み終えて一息つく。外を歩いてきて火照った体に緑茶が染みる。
「あれ、宮瀬さんこの飲み物大丈夫?緑茶って言うんだけどさ」
「はい。似たようなものがエデンにもありました。」
「なら、良かった」
そんなたわいない話をしながら二人でお茶をゆっくりと飲む。
時刻は15時近いがこの季節はまだ温かい。そんな中、二人でお茶を飲んでいるとなんだか老夫婦のような感じがしてきて少し照れくさい。
「後で暗くなる前に服でも買いに行こうか」
「はい。甘えちゃいますね」
いつもとは違い素直に返事を返し、微笑む宮瀬さん。
宮瀬さんも大分こちらの気持ちを素直に受け止めてくれるようになって気が楽というか嬉しい。
本人の中で納得いく結論が出たからだろう。俺達はその後、ショッピングモールに服を買いに行ったわけだが、ファッションセンスのフの字もない俺は宮瀬さんがあれこれ持ってきて意見を求めてきても何も言えずにいた。
結局、店員さんのオススメから選び、買うことになったのだった。
ショッピングモールから家に戻ると随分と暗くなってきてしまっていた。ほとんど日没だ。
時刻を確認すると18:11。この時期なら日没でおかしくない時間だ。家に着くと二人で息をつき、椅子に腰をかける。やることは山ほどあるが、まずは……
「夕飯どうしようか」
まだ作り始めても遅くはない時間。
だが、今日は二度も外出して疲れてたので、できるだけ作りたくない。
そんな中、宮瀬さんは目を輝かしている。
「今こそ家政婦さんの出番です!お料理作ります!」
「あ、いや……」
どうもあのパスタのことを思い出すとまだ任せるのは怖くて歯切れが悪くなってしまう。それを受けて宮瀬さんの表情がしょんぼりしていく。
「あ、いや!嫌じゃない!疲れているから頼みたいくらいだ!頼んじゃおうかな!うん!」
「はい!お任せ下さい!」
とは言えどまだ料理を任せるのは怖い。少し待つように制止し、スマホで料理サイトを開く。宮瀬さんはきっと料理が下手ではないはずだ。
パスタは一応やわらかかったし…。
レシピ通りにはちゃんと作れるはずだ。何がいいだろうか。ご飯の炊き方と……野菜炒めがいいかな…。
「宮瀬さーん」
「なんでしょうか?」
キッチンの棚の調味料を見ていた宮瀬さんがこちらにとことこやってくる。
「これ作ってみない?」
「………なるほど。これもエデンで似たようなものを見たことがあります。」
「よし、じゃあ実行だ。分からないことがあれば聞いてくれ」
「はい!今日こそやってみせます!」
両手で握りこぶしを作って、気合を入れる宮瀬さん。不安しかないが、ここは祈る気持ちでいよう。
「調味料使うときは勝手に使わないように…。調味料にラベル貼っといたから間違えないようにね……」
「……がんばります」
苦笑いしながらキッチンへ向かう宮瀬さん。スマホの使い方は多少は教えたから扱えているはずだ…。
調理は思っていたより順調に進んでいてご飯のタイマーをかけて、すぐに野菜炒めの調理にかかる。
リズムよく……という程ではないが包丁で野菜を切る音が聞こえてくる。
しばらく課題をこなしていると、フライパンで炒める音が聞こえてきて、胡椒を効かせたいい匂いもしてきて、そのせいか急に食欲が湧いてきた。
「できました!」
目を輝かせてフライパンごとリビングの俺の所にそそくさと持ってくる。
「いい匂いだな…」
「はい!今日はちゃんとできたはずです!」
鍋敷きも持ってきていてフライパンを鍋敷きの上に置く。俺はご飯のタイマーが終わるまで課題をやるか。
……………視線で集中できない。宮瀬さんの視線だ…。こちらをじっと見ている。
「どうした?」
「あ、いえ、そちらが気になって」
宮瀬さんの視線は俺の数学の課題に向いていた。何の変哲もないただの学校の課題だ。
「ああ、課題のことか」
今週は課題が沢山出ていたが、何かと忙しくてやる暇がなかった。とはいえ、提出まで日があるので今からでも地道にやれば終わる。
「これは学校で出ている数学の課題……数字を扱う勉強なんだ」
「これがこの世界の学問……」
視線は課題に吸い込まれるばかりで、しばらくにらめっこしていた。
「あ、学校で思い出したんだけど、明日からまた学校なんだけど宮瀬さんはどうする?」
「5日間ですもんね……」
「ん?前々から思ってたんだけど随分とこっちのことに詳しいね」
「どうやらエデンと共通する部分が多いらしくてつい……憶測で」
随分な偶然だが都合がいいと言えば都合がいい。宮瀬さんもこちらに順応しやすいし悪いことはないはず。
「いや、いいんだ。だけど学校来るのは無理だからといって家に一人というのも……」
「あ、ならこうしてはどうでしょうか?」
宮瀬さんは何か一言だけ何か呟くと……あれ、宮瀬さんが薄くなっていく!?戸惑っている間に宮瀬さんは完全に消えてしまった。微かに宮瀬さんがこの場にいるという感覚を感じられるくらいだろうか。
「み、宮瀬さん!?」
「はい。なんでしょうか?」
「うわっ!」
後ろから唐突に聞こえた声に咄嗟に振り向いて尻餅をついてしまう。こちらを見てクスクスと可愛らしく笑う宮瀬さん。随分と距離が近くなったというか遠慮がなくなったというか。
まあ、そちらの方が嬉しいのだが。
「いったいどこから……」
「これは……認識阻害系統の魔法ですね。周囲の人は術者を認識できなくなります」
胸を張る宮瀬さん。つまり魔法を使ってから回りこんで術を解除したのか。
「なるほど。これで学校にくるわけか。だけど消費魔力は大丈夫なのか?」
「はい、そんなに多くはありませんから。私は補助系魔法の鍛練を積んでいてこの系統は得意なんです。それに使わねばならないのです」
「使わねばならない?」
魔力を溜めなければならないのではないか?。お兄さんがくるまでの一ヶ月、よくて半分しか回復しないのだから。
「はい。例えば健常者が体力温存するからといって運動を全くしないのは不健康ですよね。それと似たようなもので体内の魔力もある程度使わないと循環が悪くなってしまい、かえってよろしくないのです。私の魔力も1/30くらいまでは回復してきていますし、そろそろ循環させてもよろしいかと。」
「なるほどね。だいぶそっちの事情もわかってきたな」
「しかし、この魔法だけでは循環させるには足りません。そこで、です。
毎晩私とするのはどうでしょうか?
体が火照って、終わった後は疲労感で大変かもしれませんが……。」
宮瀬さんが真剣な眼差しで何やら爆弾発言をしている!毎晩!?一緒に!?する!?体が火照って疲労感がくるほど!?しちゃうの!?いくらなんでも急接近すぎやしないか!?
「こ、心の準備が!」
「あ、そうですよね…。すみません。したくなったらいつでもいいですからね」
にっこりと微笑む宮瀬さん。普段は天使の笑顔だが今日はサキュバスのように見える。
しかし、いつでも……宮瀬さんと…。
したくなったらいつでも……。つい宮瀬さんの体を見てしまう。
俺のYシャツに宮瀬さんの紺色のミニスカート……あれ?スカート……昨日の夜は俺の私服を一式貸したが、今日1日はYシャツにスカート……下着は昨日の夜か今朝には変えているだろう。
しかし、宮瀬さんは今日下着を買ってきたばかり。
つまりそのスカートの中は……。
いや、下着を魔法で作ったのだろう。………たぶん。
すらりと伸びた脚。そのくるぶしからふくらはぎまでは細くて綺麗な脚であるが太ももは触ればきっと弾力があり、すべすべで気持ち良くて、程よいむっちり具合だ。
部屋の明かりを受けてより一層際立つ白く綺麗な太ももについ目線がいくが疚しいことをしている気になって慌てて目をそらし、視線を上げる。バレたらさすがに気まずい。
しかし視線を上げれば今度は2つのお山が…。Yシャツからでも膨らみが分かる胸。華奢な体に似合わず胸はしっかりと出ており、しかしながらそれでいて不自然な違和感がない大きさ。
ベストなバランスであった。
「あのー、西条さん?」
「あ、いや!」
不意にかけられた声に顔を背ける。
疚しい気持ちバリバリなのでつい顔を背けてしまう。
「大丈夫ですか?先程から視線が安定していませんが」
「ああ、大丈夫大丈夫。なんでもないよ、うん。」
「なら良かったです。でも西条さんがしないとなると私一人でしますね。
できれば西条さんが一緒の方が良かったのですが……」
「あ、うん。なんかごめん!」
いやいやいやいや!平静を装おってるけどこっちは顔真っ赤だよ!さっきから宮瀬さんおかしくないか?ヤバイって!一人でしちゃうの宮瀬さん!?
それをきっぱり言っちゃうとか意外とエロい!?もしや俺にもチャンスが!なんてついらしくないほど思考が暴走してしまう。
「あ、ご飯が炊けたみたいです。」
俺の心情など知らず、炊飯器のタイマーの音を聴いた宮瀬さんはご飯をよそいに行くが、俺の一物は膨張しきってしまい、立ったらまずい。
宮瀬さんの脚と胸を見ていて、そしてあの言葉ですっかり妄想が膨らんでしまい悶々……ムラムラしていた…。
宮瀬さんがご飯をテーブルに並べても視線は胸に行くばかり。脚は見ただけでそのやわらかな肌触りが伝わるほどであったが、胸は見えない。だが、見えないだけに妄想は捗り、まさに宇宙のようにその妄想は広がっていた。
「食べないんですか?」
胸から顔に視線が向かうと不安そうに見つめる宮瀬さんがいた。相変わらず透き通るような綺麗な青い目だ。
「あ、いや。食べるよ。いただきます!」
ふむふむ。野菜炒めは多少胡椒が少なめだがうまい。
熱々のごはんと併せれば中々……。
宮瀬さんも俺が食べ始めてから食べ始める。
「美味しいね」
「ありがとうございます。今回は味見しましたから!」
胸を再度張る宮瀬さん。前回はしなかったのね。いや、したらあーはならないか…。あっという間に俺達は食べ終えてしまう。食欲が満たされたらなんか性欲も収まってきて一物も平常運転だった。
宮瀬さんはよし、と少し気合いを入れて立ち上がる。
「じゃ、しますね…。」
宮瀬さんは先程買ってきた布団をリビングに広げそこに正座する。
「え!?ちょ!宮瀬さん!ここでするの!?」
「え、ええ。ダメでしょうか?」
「いやいや!ダメでしょ!普通に人前でしちゃうの!?」
「いえ、人前でなくても良いのですが……」
「なら、止めよう!あ、でも外に行かないでね!うん!」
「外ではしませんよ。見られたらまずいですし」
苦笑いで当然じゃないですかと返す宮瀬さん。うん、エロいけど恥じらいはある。いいぞ、うん。
いつの間にか俺は先程から宮瀬さんをエロい目でしか見れなくなっていたがしょうがない…。俺だって年頃の男子。むしろこの三日間よくほとんど欲情しなかったものだ。と言い訳をしながら宮瀬さんの正座した太ももを堪能する。
「でもそれならどこでしましょうか……」
「せめてトイレか脱衣場!」
「狭い場所だと充満してしまい、後々困るのですが……」
充満!?そんなににおいがこびりつくほどやっちゃうの!?宮瀬さんの清楚なイメージが崩れるんだけど!
「なら静かに少しだけやるというのは……」
「少しだけでは体に悪いですし……」
「そんなに!?」
え、性欲ヤバイとかじゃなくて、しないと体に悪いの!?
「エデンの人は大変なんだね…」
「エデンでは日常的に魔力を使って生活用品を扱ったり、料理にも使いますから困らないんですけど、こちらの物に魔力を加えたらどうなるかは定かではないので下手にはできないですね……。ですからこうして出すわけですが」
ん?魔力?唐突になんの話なんだ?
「えと、話が飛んでない?なんで魔力?」
「え、ですから魔力を循環させるために一人で魔力を出す作業をすると。西条さんが一緒にしてくだされば、西条さんにとっても良いかもしれませんが、まだ決心がついてないとのことでしたので…」
………………完璧な勘違い!?
「なんかごめん……」
「あ、はい?」
宮瀬さんからすれば何がなんだか分からないだろうが、罪悪感がとてつもない。つまり勘違いのみで宮瀬さんを汚してしまったのだ。最低だ……。勘違いとはいえそんなことをしてしまうなんて…。
「えと、でも俺にできることってあるのか?」
せめてもの罪滅ぼしで弱々しくではあるが聞いてみる。
「そうですね。私が時空魔法で他次元の方と西条さんを接続させていただきます。前回は西条さんも力の使い方が分からず戸惑っていたようですから使い方を覚えていただこうかと。」
「なるほどね。もしかしたらカマイタチとかが出せたり?」
ついワクワクしてしまう。男子なら皆こういった話には胸を踊らせるものではないだろうか?
「どうでしょうか…。接続した相手にもよりますが…。とにかくやってみます?」
「そうだね。もしかしたら儀式の手がかりになるかもだし、俺が強くなればお兄さんに対抗できるし。」
布団の方に俺も向かい、宮瀬さんの指示に従い正面に入り、お互い正座する。
「本当に何から何まで背負わせてすみません…」
「いいんだ。俺の意志だからさ」
「ありがとうございます。では前回より接続は弱くしますが、暴れないようにお願いしますね。あと、体に魔力回路……魔力を流すための回路がないのに魔力を長時間も流すのは危険ですから1分程で切りますね。」
「ん?ちょっと待って。俺には回路がないのになんで接続して力が供給されるんだ?。シナンとやった時はちゃんと魔力が通って接続されたみたいだけど、そもそも魔力が通る道が無いんじゃないか?」
「そういえばそうですね…。確かに危険すぎるものかもしれませんが……止めておきますか?」
「いや、前回は確かに疲労感が凄かったけど大して影響もなかったしやるよ。ただ長時間は怖いかな」
正直、こんなにワクワクする展開なのだからやってみなくては損だ。
前回で最低死にはしないことは分かっているわけだし。
「では失礼します」
宮瀬さんは左の手の甲に右の手の平を重ねてこちらに手の平を向ける。
あの時のように次第に力が湧いてくる。
なんだろうか、よく意識すると体が熱くなってきて……あの時より確かに弱いがみなぎってきた!緑のオーラのようなものも、あの時よりは弱いがゆらゆらと出てきていた。
「接続完了です。まずはその状態を維持する練習をしてみましょう。手を合わせて体の中心に熱を溜める感じで集中してみてください。」
「分かった」
指示通りに手を合わせて熱が集まっていくのを実感する。静止し、静かに時を過ごす。時々集中が少しでも切れると熱が漏れそうになるが、なんとか熱を留める。時計の針と外の車の音だけが聞こえる空間。心は静かだが、なにやら感情がぐちゃぐちゃになるような感覚を受ける。外から入ってくる感じだろうか。感覚的なものだからアバウトにだがそう感じる。それを繰り返すこと1分。
「はいお疲れ様でした。接続を切りますね。」
宮瀬さんの声と共に熱は抜けていき脱力感が押し寄せてきてその場に手を着く。
「だ、大丈夫ですか!」
「あ、うん。大丈夫。脱力感があるだけ。」
「なら、良かったです。でもしっかり魔力を留めてられましたね」
「え、そうなのか」
できるだけ漏れないようにはしていたが、実感として確かなものはなかった。
「はい。これなら次のステップに行くのも早いかもしれませんね。」
「これは期待だね」
ふたりで笑いあい過ごす。物騒なことに首を突っ込んでいるのは確かだ。
だけどこうやって過ごす時間をもっと噛み締めていたかった。
お風呂をお借りして湯船に浸かりながら考える。西条さんはなぜあんなに一生懸命になってくれるのか。命懸けになるのはシナンとの戦闘で分かっているはずですし、今回の鍛練だって何が起こるか分からない。
なのに私にここまで構ってくれて、守ってくれる。西条さんは楽しんでいる………のでしょうか。何やら先程の鍛練は少し楽しんでいるように見えました。
よくわかりません…。西条さんのことばかり考えていたらこの湯船は西条さんが入った後だということを意識してしまいます。嫌ではないです。しかし意識はしてしまいます……。
いけません。思考が逸れていました。
西条さん………しかしなぜ魔力回路がないのに魔法を…。
そして自分の情けなさも感じる。
でも死にたくはない。まだその恐怖を味わったことはないが、死という曖昧な恐怖が私を無責任にし、西条さんを巻き込んでいる。本当に西条さんを巻き込んでいいのか、本当にここにいるべきなのか。西条さんといたからこそ迷惑をかけたくないという気持ちも強くなっていきます。
分からないことだらけすぎて混乱してきました。お湯をすくい、顔を洗う。少しさっぱりしましたが長いこと湯船に浸かっていたので酔ってきました。
分からないことだらけですが、今は生き抜きましょう。恐怖から逃げるためという情けない理由かもしれませんが西条さんに今は甘えてもいいかもしれない。無責任ですがそう感じ、西条さんといると安心するのです。その理由は分かりませんが、今はその気持ちだけでも大事にしたい。
湯船から上がり、ドライヤーなるもので髪を乾かす間も西条さんのことばかり考えてしまい、不安になります。
果たして私はまだここにいていいのか、一度割り切ってもすぐにまたぶり返してしまう。割り切れるような人間ならきっとこんな状態にはなっていないのでしょうが。
今はそれでも西条さんのご厚意により家政婦のような契約をさせていただき居候させていただいてます。早くお役に立てるようにならないと。髪を乾かし終わり買ってきたパジャマを着ます。
上下薄いピンクのパジャマは定員さんに勧められたものですが私自身も気に入っています。リビングへ戻ると西条さんが自分の布団も私の布団から離れた場所に敷いてスマートフォンを使っていました。
「お待たせしました」
「あ、出てきたんだ。じゃあ、寝ようか。」
二人とも布団に潜り、西条さんがリモコンなるもので電気を消すとすぐに眠気が来て寝てしまいました。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる