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王都の門を出た瞬間、私は現実を突きつけられた。
「ここから先は、お前の責任だ」
兵士はそれだけ言い残し、門を閉じる。
重厚な音が響き、私は完全に外の人間になった。
——所持金、ほぼなし。
——地図、なし。
——知り合い、ゼロ。
(詰んでない?)
日本で一人暮らしをしていたときでさえ、
最低限のインフラとスマホがあった。
それが今は、何もない。
歩き出すしかなかった。
舗装されていない道。
照りつける日差し。
薄いワンピースのような服は、風を通さず汗がこもる。
途中、すれ違う人たちの視線が痛かった。
「追放者だ」
「関わらないほうがいい」
そんな囁きが、はっきり聞こえる。
(……日本なら、こんな露骨じゃなかったのに)
でも、不思議と泣く気にはならなかった。
泣いても、助けてくれる人はいないと分かっていたから。
夕方近く、ようやく小さな村が見えてきた。
木造の家が数軒。
畑と、井戸。
「……人がいるだけ、ましか」
私は意を決して村に入った。
最初に声をかけたのは、井戸端で水を汲んでいた中年の女性だった。
「あの……泊めていただける場所はありませんか」
女性は私を見るなり、困ったように眉を下げた。
「……追放された子でしょう?」
否定できず、私は黙ってうなずく。
「ここは辺境だから、余裕はないの。
でも……」
少し迷ったあと、彼女は一軒の小屋を指差した。
「倉庫代わりに使ってた小屋があるわ。
掃除は必要だけど、雨風はしのげる」
「本当ですか……!」
思わず声が震えた。
案内された小屋は、確かに古かった。
埃だらけで、床も軋む。
でも、屋根がある。
扉がある。
(住める……)
それだけで、胸がいっぱいになった。
「食べ物は、働いた分だけね」
「はい! なんでもします!」
私が即答すると、女性は少しだけ笑った。
その日の夜。
干し肉と固いパンを口にしながら、私は考えていた。
——魔法も使えない。
——特別な能力もない。
でも。
(生活をよくする方法なら、知ってる)
掃除の仕方。
食材の保存。
効率のいい段取り。
日本で「当たり前」だったことが、
この世界では、まだ知られていないかもしれない。
「……生き延びてみせる」
小さな小屋で、私はそう呟いた。
その選択が、
この地を治める“孤高の領主”の目に留まることになるとは——
まだ、このときの私は知らなかった。
「ここから先は、お前の責任だ」
兵士はそれだけ言い残し、門を閉じる。
重厚な音が響き、私は完全に外の人間になった。
——所持金、ほぼなし。
——地図、なし。
——知り合い、ゼロ。
(詰んでない?)
日本で一人暮らしをしていたときでさえ、
最低限のインフラとスマホがあった。
それが今は、何もない。
歩き出すしかなかった。
舗装されていない道。
照りつける日差し。
薄いワンピースのような服は、風を通さず汗がこもる。
途中、すれ違う人たちの視線が痛かった。
「追放者だ」
「関わらないほうがいい」
そんな囁きが、はっきり聞こえる。
(……日本なら、こんな露骨じゃなかったのに)
でも、不思議と泣く気にはならなかった。
泣いても、助けてくれる人はいないと分かっていたから。
夕方近く、ようやく小さな村が見えてきた。
木造の家が数軒。
畑と、井戸。
「……人がいるだけ、ましか」
私は意を決して村に入った。
最初に声をかけたのは、井戸端で水を汲んでいた中年の女性だった。
「あの……泊めていただける場所はありませんか」
女性は私を見るなり、困ったように眉を下げた。
「……追放された子でしょう?」
否定できず、私は黙ってうなずく。
「ここは辺境だから、余裕はないの。
でも……」
少し迷ったあと、彼女は一軒の小屋を指差した。
「倉庫代わりに使ってた小屋があるわ。
掃除は必要だけど、雨風はしのげる」
「本当ですか……!」
思わず声が震えた。
案内された小屋は、確かに古かった。
埃だらけで、床も軋む。
でも、屋根がある。
扉がある。
(住める……)
それだけで、胸がいっぱいになった。
「食べ物は、働いた分だけね」
「はい! なんでもします!」
私が即答すると、女性は少しだけ笑った。
その日の夜。
干し肉と固いパンを口にしながら、私は考えていた。
——魔法も使えない。
——特別な能力もない。
でも。
(生活をよくする方法なら、知ってる)
掃除の仕方。
食材の保存。
効率のいい段取り。
日本で「当たり前」だったことが、
この世界では、まだ知られていないかもしれない。
「……生き延びてみせる」
小さな小屋で、私はそう呟いた。
その選択が、
この地を治める“孤高の領主”の目に留まることになるとは——
まだ、このときの私は知らなかった。
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