『追放された私ですが、異世界では最上級の愛を授かりました

カブトム誌

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——レオニス・ヴァルグレイは、無駄を嫌う男だった。

辺境領を任されて五年。
貧しい土地、荒れた村、逃げ出す領民。
それでも彼は、感情を切り捨てることで領地を立て直してきた。

「情は判断を鈍らせる」

それが彼の信条だった。

その日、村の巡回中に違和感を覚えた。

「……あれは?」

井戸の周囲が、異様に整っている。
土嚢で囲われ、水は濁らず、滑り止めまで施されている。

「誰がやった」

問いかけると、村人たちは視線を逸らした。

「追放されてきた娘です……」
「名前は……ミサキとか」

追放者。
普通なら、放置される存在。

——だが。

「連れてこい」

小屋の前に立つと、扉が開き、
小柄な少女が顔を出した。

「え……?」

怯えた瞳。
だが、逃げない。

「貴様が、この村を変えたのか」

「……変えた、ほどでは」

少女——ミサキは、ぎゅっと手を握った。

「危ない場所を、少し直しただけです」

言い訳のような口調。
だが、その目は真っ直ぐだった。

(怯えているのに、芯が折れていない)

「名を」

「ミサキ・サクラです」

「なぜ、そこまで動く」

彼女は少し考え、答えた。

「……生きるためです」

一瞬、言葉を失った。

(生きるため、か)

誰かに認められたいでも、
感謝されたいでもない。

ただ、生きるため。

それは、レオニス自身がこの地で選んできた理由と同じだった。

「追放された理由は?」

「役立たず、だそうです」

自嘲するように微笑む。

(役立たず?)

井戸の改良、村の動線、
無駄を減らす工夫。

これを“役立たず”と呼ぶ王都の目は、
相当腐っている。

「この村に留まれ」

思わず、そう言っていた。

「……え?」

「代わりに、俺の管理下に入れ」

それは保護であり、監視でもある。

「……はい」

即答だった。

逃げも、駆け引きもない。

(危ういほど、真っ直ぐだ)

レオニスは踵を返しながら思った。

——この少女は、
この領地に必要な存在になる。

そして同時に、
自分の心を乱す存在になるかもしれない、と。
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