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王都へ向かう馬車は、
思っていたよりも静かだった。
車輪が石畳を踏む規則的な音と、
馬の息遣いだけが、
ゆっくりと時間を刻んでいる。
私は、
向かい合う形で座るレオニス様を、
そっと見つめていた。
(……本当に、
戻って来られるのだろうか)
そんな考えが、
何度も頭をよぎる。
「……何か、
聞きたいことがある顔だ」
不意に、
低い声が落ちてきた。
「……分かりますか」
「嫌でもな」
微かな笑み。
それだけで、
少しだけ胸が軽くなる。
「……王都に着いたら」
私は、
言葉を選びながら、
ゆっくりと話し始めた。
「私は、
“追放された女”として
扱われますよね」
「そうだ」
迷いのない返答。
「……怖いか」
「……はい」
同じ問いと、
同じ答え。
「でも」
私は、
視線を逸らさず続ける。
「私は、
もう一度、
自分で立つと決めました」
その言葉に、
彼の目が、わずかに細くなる。
「……王都では、
俺の名も、
剣も、
万能じゃない」
「……はい」
「だから」
馬車が、
少し大きく揺れる。
「最悪の場合、
俺はお前を守れない」
空気が、
張り詰める。
(……それでも)
「……それでも、
私は行きます」
私は、
はっきりと言った。
「ここで降りたら、
きっと一生、
自分を許せないから」
沈黙。
馬車の音だけが、
二人の間を満たす。
やがて。
「……覚悟が、
決まった顔だな」
彼は、
静かに言った。
「……はい」
「なら」
彼は、
少し身を乗り出した。
「俺も、
覚悟を話しておく」
胸が、
小さく跳ねる。
「……王都では、
俺は“領主”として動く」
「……それは」
「お前を、
守るためだけじゃない」
——真っ直ぐな言葉。
「俺自身が、
逃げないためだ」
私は、
息を呑んだ。
「……もし、
全てを失うことになっても」
「……はい」
「それでも、
後悔しない」
その声には、
揺らぎがなかった。
「……私もです」
自然と、
同じ言葉が口をついた。
馬車が、
再び揺れる。
私は、
無意識に体を支え、
その瞬間——
彼の手が、
私の手に触れた。
ほんの一瞬。
だが、
確かに伝わる温度。
「……すまない」
すぐに、
離される。
「……いいえ」
私は、
そっと首を振った。
「……心強いです」
彼は、
何も言わなかった。
だが、
視線は、
外ではなく、
こちらに向けられていた。
「……王都に着いたら」
私は、
もう一度、言う。
「私は、
あなたの後ろに立ちません」
「……前か?」
「……隣です」
一瞬の沈黙。
そして。
「……分かった」
短いが、
確かな返事。
馬車は、
王都へと進み続ける。
罠と分かっていて、
それでも踏み込む場所。
——でも。
今は、
怖さよりも、
覚悟の方が、
確かに重かった。
思っていたよりも静かだった。
車輪が石畳を踏む規則的な音と、
馬の息遣いだけが、
ゆっくりと時間を刻んでいる。
私は、
向かい合う形で座るレオニス様を、
そっと見つめていた。
(……本当に、
戻って来られるのだろうか)
そんな考えが、
何度も頭をよぎる。
「……何か、
聞きたいことがある顔だ」
不意に、
低い声が落ちてきた。
「……分かりますか」
「嫌でもな」
微かな笑み。
それだけで、
少しだけ胸が軽くなる。
「……王都に着いたら」
私は、
言葉を選びながら、
ゆっくりと話し始めた。
「私は、
“追放された女”として
扱われますよね」
「そうだ」
迷いのない返答。
「……怖いか」
「……はい」
同じ問いと、
同じ答え。
「でも」
私は、
視線を逸らさず続ける。
「私は、
もう一度、
自分で立つと決めました」
その言葉に、
彼の目が、わずかに細くなる。
「……王都では、
俺の名も、
剣も、
万能じゃない」
「……はい」
「だから」
馬車が、
少し大きく揺れる。
「最悪の場合、
俺はお前を守れない」
空気が、
張り詰める。
(……それでも)
「……それでも、
私は行きます」
私は、
はっきりと言った。
「ここで降りたら、
きっと一生、
自分を許せないから」
沈黙。
馬車の音だけが、
二人の間を満たす。
やがて。
「……覚悟が、
決まった顔だな」
彼は、
静かに言った。
「……はい」
「なら」
彼は、
少し身を乗り出した。
「俺も、
覚悟を話しておく」
胸が、
小さく跳ねる。
「……王都では、
俺は“領主”として動く」
「……それは」
「お前を、
守るためだけじゃない」
——真っ直ぐな言葉。
「俺自身が、
逃げないためだ」
私は、
息を呑んだ。
「……もし、
全てを失うことになっても」
「……はい」
「それでも、
後悔しない」
その声には、
揺らぎがなかった。
「……私もです」
自然と、
同じ言葉が口をついた。
馬車が、
再び揺れる。
私は、
無意識に体を支え、
その瞬間——
彼の手が、
私の手に触れた。
ほんの一瞬。
だが、
確かに伝わる温度。
「……すまない」
すぐに、
離される。
「……いいえ」
私は、
そっと首を振った。
「……心強いです」
彼は、
何も言わなかった。
だが、
視線は、
外ではなく、
こちらに向けられていた。
「……王都に着いたら」
私は、
もう一度、言う。
「私は、
あなたの後ろに立ちません」
「……前か?」
「……隣です」
一瞬の沈黙。
そして。
「……分かった」
短いが、
確かな返事。
馬車は、
王都へと進み続ける。
罠と分かっていて、
それでも踏み込む場所。
——でも。
今は、
怖さよりも、
覚悟の方が、
確かに重かった。
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