『追放された私ですが、異世界では最上級の愛を授かりました

カブトム誌

文字の大きさ
19 / 22

19

しおりを挟む
王都の城門が見えた瞬間、
私は無意識のうちに息を止めていた。

高く積み上げられた白い石壁は、
守るためのものではなく、
逃がさないために存在しているかのように、
冷たい威圧感を放っている。

「……着いたな」

レオニス様の低い声が、
馬車の中に落ちる。

外から聞こえてくる喧騒は、
辺境とは比べものにならないほど騒がしく、
人の多さがそのまま王都の力を誇示しているようだった。

馬車が門をくぐった瞬間、
空気が変わる。

——視線。

好奇。
警戒。
敵意。

それらが、
一斉にこちらへ向けられる。

「……歓迎されている、
とは言えませんね」

私が小さく言うと、
レオニス様は、
苦笑にも似た息を吐いた。

「“見られている”だけで、
十分な圧だ」

馬車は、
王都の中心街へ進んでいく。

道の両脇には、
貴族の紋章を刻んだ兵士たち。

——数が多すぎる。

(……護衛じゃない)

包囲。

「……やはり、
逃がす気はないですね」

「最初から、
そのつもりだ」

馬車が止まった。

目の前に現れたのは、
王都の迎賓館。

だが、
その周囲を囲む兵の配置は、
明らかに“招く”ものではなかった。

扉が開く。

「レオニス・ヴァルグレイ卿、
ならびに——」

使者の視線が、
私に向けられる。

「——ミサキ・カミヤ殿。
王都へようこそ」

その声は、
丁寧で、
礼儀正しく。

だが。

「……歓迎、
ありがとうございます」

私が頭を下げると、
周囲の兵が、
わずかに距離を詰めた。

——歓迎の名を借りた、
監視。

中へ通される廊下は、
広く、豪奢で、
一見すれば申し分のない待遇。

けれど。

窓の外。
曲がり角。
柱の影。

必ず、
誰かの目がある。

「……自由は、
ないですね」

「与えられているように、
見せているだけだ」

迎賓館の部屋に通された瞬間、
扉の外で金属音がした。

——鍵。

私は、
思わず振り返る。

「……やっぱり」

「想定内だ」

彼は、
落ち着いたままだった。

「……ミサキ」

名を呼ばれ、
私は顔を上げる。

「ここから先は、
一手間違えれば、
すべてを失う」

「……はい」

「だが」

彼の目が、
真っ直ぐに私を捉える。

「向こうも、
同じだ」

——それは、
希望だった。

「……再審は、
いつになりますか」

「早くて、
明日」

休む暇は、
与えられない。

その夜。

私は、
窓辺に立ち、
王都の灯りを見下ろしていた。

美しく、
賑やかで、
そして——冷たい。

(……ここで、
私の人生は裁かれる)

でも。

背後に感じる、
確かな気配。

「……眠れないか」

「……少し」

「無理に眠らなくていい」

彼の声は、
不思議と落ち着いていた。

「……ここは、
敵地だ」

「……はい」

「だが」

一瞬、
間があった。

「お前は、
独りじゃない」

その言葉に、
胸の奥が、
静かに熱くなる。

——歓迎という名の包囲網。

それでも。

私は、
前を向く。

ここで逃げれば、
すべてが終わる。

ならば。

——立ち向かうしかない。

王都の夜は、
静かに、
だが確実に、
牙を研いでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

追放された香りの令嬢は、氷の宰相に溺愛されています ~政略結婚のはずが、心まで奪われました~

深山きらら
恋愛
いわれのない汚名を着せられ、王都を追われた香水師の令嬢リシェル。 だが、彼女には「香りで真実を暴く魔法」が宿っていた。 冷徹で有能な宰相バートラムは、政略のため彼女を妻として迎えるが――彼女の香りが、彼の過去の傷を溶かしていく。 やがて二人は、王国を揺るがす陰謀の中心へと巻き込まれ……。 「お前の香りが、俺を生かしている」――冷たい政略結婚が、やがて運命の恋へ変わる。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

処理中です...