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底辺召喚士
ギルドへ入ろう3
しおりを挟むメイリーン、もとい『メイ』はこの状況を冷静に分析していた。
ギルドマスターがあまり騒がなかったという事は、『フレイムアリゲーター』は中級以下の魔物であること。
空間魔法に驚いているという事は、魔力が無いのがバレているか、空間魔法自体に驚いている事。
(うーん、まぁこんなもんかぁ…)
彼女は時々、自分が『有原 芽衣』ではなく『メイリーン・フォルワーズ・ド・ハルバート』だという事を忘れている。
というより考えていない。
まぁ5年も放浪すれば、現代社会では既に成人し、大学なり働きに出ている筈の23歳である。
自分を10歳と思えという方が難しいのは当たり前だった。
「魔力無しで、空間魔法が使えて、腕力が異常に強くて、Cランクハンターでも難しいフレイムアリゲーターの討伐を片手で行う10歳の少女が目の前に.....」
(うちのギルドに欲しいッ!!...成人さえしていれば...!)
ミストリアの成人は男は18歳、女は16歳である。
これは人類の脳の発達に関係している。
しかし、ハンターに年齢は関係無い。完全な実力主義なのだ。
(10歳のBランクハンターがどの国にいるというのだッ!!)
そう、フレイムアリゲーターを難なく討伐できる腕前に、生きたまま捕獲する技術、魔力無しで、しかも無詠唱で発動する空間魔法、それはミストリア中王都から兵士にスカウトされる程の腕前だ。
それこそBランク以上の成人男性であり、30代程度でギルドからの信頼が厚いならばの話。
(絶対に解剖されてしまう...!!!)
そんな前例聞いたことは無いが、こんな特例を目の前にしては、そう思わざるを得ない。
しかも当の本人はそんな凄い事をしたという素振りさえ見せない。
恐らく、その辺の知識が無いのだろう。
先程までは宿の心配をしていたのに、今は処遇の心配をしている。
なんともおかしな話であった。
「あのー…そんなに変な事ありました?」
しばらく黙り込んで居たギルドマスターに、メイは声を掛ける。
「あ、あぁ。すまない。大丈夫だ。いや、大丈夫じゃない。」
ちょっと何を言ってるのか分からないと、首を傾げるメイ。
(さて、どうしたものか.....)
思案するギルドマスター。
悩むには小一時間では足りなそうだ。
*
すっかり暗くなった夜道を一人歩く。
アントランドは栄えているとはいえ、夜になると明るい場所は限られる。
酒場か、宿屋か、歓楽街位なものだ。
「しっかし時間かかったなぁ...。」
ギルドマスターは、緊急会議だからとメイを宿直室へと案内し、くつろがせた。
メイ自体も、ベッドがあると寝てしまう人種である。
何も考えずにソッコーでダイブしていた。
夕飯で一度起こされたが、それは内容が良かったので許容す。
肉や魚類はもちろん、野菜も充実した豪華な物で、乙女の健康体を維持するには文句なかった。
全て平らげた後の皿を見た給仕は「す、すごいですね!」と少し驚いていたが。
「お腹は一杯だし、宿屋を探そっかな。」
フレイムアリゲーターは買い取りして貰った。
生きていると素材には出来ないそうなので、残りの4匹も締めて引き渡した。
素材交換所の鑑定士の引き攣った顔はしばらく忘れられそうにない。
ギルドマスターは、もう何も言わないという悟りの表情でそれを見ていた。
そして、メイは思い出し笑いを零す。
傍から見たら変な少女、もしくは幽霊にでも見られそうだが、そんな事はどうでも良い。
「...学校に行ける!」
そう、学校に行けるのだ。
メイ、もとい芽衣は、高校生であった。
学校内での評価は高く、勉学運動共に上の中位を維持していた。
友人関係も良好で、先生達とも仲が良く、学校生活と私生活共に充実した青春を過ごしてきたのだ。
(途中でこの世界に飛ばされたけど...)
何はともあれ、ギルドマスターの計らいによって入学が決まったのだ。
ハンターズギルドの推薦であれば、最低ランクではあるがハンター証の発行もでき、寮や学費にも困らないらしい。
まぁ、メイをギルドで推薦すれば、上手く行けばギルドの名が上がり、下手をしても卒業後は所属するギルドで働けるのだ。
両者共に損の無い選択だった。
どういう所に入るのかは詳細を後でギルドマスターが通知を送ってくれるらしい。
ハンター達に騒がれると困るからという理由で、裏口から返され、今に至る。
普通は少女を夜道には返さないと思うが、その辺は実力を見て心配無しと判断されたのだろう。
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