Messiah~底辺召喚士の異世界物語~

小泉 マキ

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開闢の始まり

学園生活8

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「コイツぁ驚いた!」

デミドランは素直に感嘆の声をあげる。
降り注いだ水流はドーム内の地面を海へと変え、その中心に水流の龍が出現した。

その背中にサーリフは乗っている。

「こんなのを具現化できる魔力を持つ奴が居るとはなァ!」

水環龍スプリウェル。
しなやかな蛇の様な身体をしている。
それを模した水の龍が大口を開けて水流のビームを放った。

「おっとっと!」

それをデミドランは初めて回避した。

「これが僕の全力だッッ!!」

脇腹を抑えながらサーリフは叫ぶ。
恐らく骨の1本や2本はヒビが入ったかもしれない。
激痛に耐えながらも魔力を放出し続ける。
そしてまたもや水流のビームがデミドランを襲った。

「ハッ、本物はこんなもんじゃねぇぞ。」

デコピンで弾かれた水流は、そのまま縦横無尽に飛び交い、やがて海へと落ちる。

「まるで本物と戦った事があるみたいな言い回しだねッッ!」

今度は大きな魔法だ。
スプリウェルの大口の正面に巨大な水球が形成される。

「フンッ。」

その指摘を鼻であしらい、片手の平を水球に向けて掲げる。

「本物はブレス1つで街を破壊する。」

極太の水流が射出されると同時に、デミドランの掌から極太の紫の熱線が射出された。

熱線は、水流を消し去り、水流で構築されたスプリウェルの頭部を蒸発させ、魔力ドームを貫通し、学園の外壁を少し掠めて夜空の向こうへと消えた。
魔力ドームはすぐさま修復されたが外壁は綺麗な半円形の削り跡を残している。

魔法を維持出来なくなったサーリフは、そのまま地面へと落ちていく。
そしてそれをデミドランがだき抱える形でキャッチした。

「うむ、決まりじゃの。」

理事長の声を火蓋とし、歓声が沸き起こる。
新入生が教師に続いて生徒会長に勝った。
しかも圧倒的な実力差を見せつけて。

追加のドリンクを配り終えた売り子は、茶菓子やツマミ類まで売り始めている。
観客も増え、会場は大盛り上がりだった。

この戦いが後の大波乱を呼ぶとは誰も思っていなかっただろう。


「すまん、降ろしてくれないか。」

恥ずかしさのあまりに顔を赤らめ泣きそうなサーリフ。
それを見て満足そうなデミドラン。
彼を地面に降ろすと、左手を差し出す。

「良い戦いだったぞ。」

「全く、君は新入生なのにどこから目線なんだい?」

それを笑顔で受け取り、握手し抱き合う。
お互いに健闘を讃えた。

期待の新人達の思いも寄らぬ実力に悔しさは残る物の、迫る対抗戦を思うと胸が躍ってしまう。



「残るは1試合のみじゃ。両者、前へ。」


メイとフェイリスはドーム内へ入る。

この模擬戦、メイはかなり乗り気では無い。
元々注目されるのは苦手なのだから当たり前である。

「確かに貴様の周りは化物揃いな様だな。教師と生徒会長が手を抜いたとしか思えんが、そこは認めてやろう。」

フェイリスがスルリと剣を抜き、切っ先をメイへと向ける。

「はぁ...。」

やるしかない、のか。

( こちとら10歳だぞ!大人気ないなぁもう!)

心の中は不満で一杯だが、観客の期待の声は一段と大きくなっている。
それもそのはず。
先の二戦のお陰様で、最後の大トリはもっと凄いのだと思われているのだから。

「両者、準備は良いかな?」

アモス理事長は2人を見て、両手を挙げる。

「第3試合、始めじゃ!!!」




観客のボルテージは最高だ。
フェイリスの戦意も、それに伴って高くなっている。
白銀の一閃が、メイの側頭部を狙った。

ガキンッッ

ダルそうに上げられたエスペランサーの銃身がそれを防ぐ。

「くっ!!これはどうだっ!!!」

フェイリスの連撃。
それを欠伸をしながらダルそうにエスペランサーで受け流す。

ガキンガキンガキンッッ

何分程そうしていたのか。
観客が痺れを切らして罵声を上げる。

「しっかりやれー!」
「つまんねぇぞ!!!」
「やっちまえ銀髪ー!」

メイは心底迷惑していた。
防ぐ度に速くなる剣速、野次が入る程複雑になる剣技。
段々とメイも集中せざるを得なくなってくる。

そして30秒も経つと、メイは必死になっていた。
速い、速すぎるのだ。

これ以上は厳しい。
そう判断して飛び退くが、フェイリスは付いてくる。

「なんなのあなたっ!!」

思わず蹴飛ばし、距離を取る。
守ってばかりではいずれやられる。
今度はメイの番だ。

右で3連、左で3連。
何度も素早く繰り出し、魔弾の雨をフェイリスに浴びせる。
しかし彼女は気にもせず、全て弾きながら前進してきた。

「もう!どんな反応速度してるのっ!?」

今度は太めのレーザーを放つ。
だがそれはヒラリと身を翻して避けられた。

「そこだっ!!!!!」

フェイリスが放つ左上からの袈裟斬り。
普通の人間では反応出来ない速度で一瞬の隙をつき放たれたそれは、漆黒の刃に防がれた。

「無刀、『インビジブル』!!」

金属音を響かせ、フェイリスの剣を弾く。

「なっ!?」

体勢を崩したフェイリスを目掛け、インビジブルを一閃する。
漆黒の衝撃波がフェイリスを襲った。
しかし、その攻撃は通らない。

天空から落ちてきた白銀の盾が防いだのだ。

「我が聖剣はどんな敵も打ち倒し、我が聖盾はどんな攻撃も防ぐ。」

盾を掴み立ち上がるフェイリス。

メイは少し困っていた。
聖剣、聖盾が本物だとすると、単純な物理法則が当てはまらない筈だ。
こうなると、少し本気を出さなければ。

チラリと理事長を見る。
それに気付いたアモスは小さく頷いた。
メイも小さく頷き、フェイリスを見据える。

「フェイリスさん?」

「何だ?戦闘中に雑談を交わす趣味は無いのだが。」

これを聞き、確信した。
彼女は強い。剣技は勿論、武器や防具も上等な物に間違いない。
しかし一番評価出来るのはこの冷静さだ。
先程の魔弾を防いだ時も、今この瞬間にも、それは発動している。
メイはこのまま放置するには勿体無いと考えた。


「フェイリスさん、私が勝ったら仲間に入らない?」



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