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開闢の始まり
成果報告
しおりを挟む一向は夜明け前にハーユン村へ到着した。
村人達は寝ずに起きていて、メイ達の帰還をお祭り騒ぎの様に喜んでくれた。
「いやはや、流石は我が孫じゃ!」
「いやいや俺は殆ど何もしてねーってじっちゃん!」
酒に、煙草に、豪華な料理。
村人総出の宴会に、村長もご満悦の様だ。
「エドガーは多くの魔物を前にしても怯まず戦い、最後まで全力を出しました。」
「おぉ、テンニーンよ!『龍人会』の期待の星にして我が孫の親友!よくぞエドガーを守ってくれた!」
喧騒の中、メイ達は村長の家の前に置かれた長テーブルで食事をしている。
疲れた身体に配慮して、消化の良い野菜や魚中心の料理が多い。
そんな中、右手でプッタネスカ、左手でアクアパッツァを口に運ぶメイに、デミドランが話しかける。
「んで、これからどうするんだ?」
「ふぉえああ?ふぉいヴぁえづ、ふぉふぉーべふぇっ!ゴホッゴホッ...!」
「オイッッ!こっちに飛ばすな!」
飛んできたパスタの切れ端を避け、持っていたワインが零れない様に守る。
ゴクゴクと水を飲み干し、勢い良くテーブルへ置いてメイは口を開いた。
「んあーっ!ごめんごめん。とりあえずね、今日の夜までには此処を出て、ドレイムまで一直線よ!」
「一直線って言ったって、1日跨ぐぞ?お前のあの瞬間移動で飛べないのか?」
メイが山頂へ行く時に見せた魔法だ。
一瞬で目的地へ行く魔法等、普通は使えない。
それ故に、便利である。
「…成長して欲しいからさ。」
恐らく不要な心配だろうが、メイは思う。
テンニーンとフェイリスは、メイとデミドランに比べると戦闘力も経験も劣る。
特にフェイリス。
彼女はハーフエルフであるが為に、並外れた身体能力と、それに付随する強化魔法を扱える。
しかし悪く言えばそれ以外は人並み。
テンニーンでさえも、『グラナート・クライノート』の力と龍人というステータスが無ければ粗末な戦闘力だ。
まぁそれは本人達が一番解っているのだが。
「なるほどな。一理あるかもしれん。」
その状況を克服するには、本人達に頑張らせるのが1番だ。
メイはこの世界では10歳かもしれないが、元の世界では既に大人。
未だ眠り続けているフェイリスや若き龍人テンニーンを、妹や弟の様にも思っている。
故にそこまで考えてしまうのだ。
「それに、寄りたい所もあるんだ!」
「寄りたい所?」
「ま、それは行ってからのお楽しみで!」
そう言って皿に目を戻すメイ。
次は何を食べようかとキョロキョロしている。
デミドランも手に持つワインに目を落とす。
時折、メイが自分より歳上なのでは無いかと疑う時がある。
長い付き合いであるが、時偶自身よりも思慮深い部分を見せつけられるのだ。
( ...オレ様も、成長せねばな。)
月明かりに照らされた赤紫のワインを、コクリと飲み干した。
とっくに夜が明け、既に太陽は天辺を通り過ぎた。
提供された簡単な朝食を平らげ、メイ、デミドラン、テンニーン、フェイリスはハーユン村を後にする。
「昨日は、本当にすまなかった。」
メイ達に謝るフェイリスを宥めるのに小一時間かかったが、問題なく出発する事が出来た。
ボロボロになった学生服はメイが元に戻して仕舞い、皆持ってきた私服に着替えている。
メイはヒールを履き、白に水色のアーガイルが映える例のワンピース。
これくらいしか持っていない為仕方がない。
デミドランは黒のスーツに臙脂色のワイシャツで、首にはループタイを下げている。
暗めの服装に、白い肌が良く映えていた。
テンニーンは踝丈の黒のチノパンに白いシャツと短めの黒いベストを羽織り、『グラナート・クライノート』が良きアクセサリーとなっている。
そしてフェイリス。
彼女は生まれてこの方私服という物を持ったことがない。
その為にハーユン村で調達する羽目になった。
申し訳なさそうに身を縮めるフェイリス。
黒のレギンスにデニム生地のショートパンツ、白いブラウスの上に茶色の革ベルトを巻き付けている。
「こんな格好、初めてだ...。」
「とっても似合ってるよ?」
メイに真っ直ぐな視線をぶつけられ、少し顔を赤らめているのが可愛らしい。
その微笑ましい空気に、デミドランでさえ笑顔を浮かべていた。
しかし各々心持ちだけは真剣だ。
昨夜の戦闘の余韻は、まだ消えていない。
自分自身に足りなかった物、課題、目標。
全てを胸に仕舞い込み、歩を進めていた。
夕刻を過ぎる頃には、例の野営場所まで来れた。
道中、邪魔する魔物や盗賊等にも遭遇せずスムーズに進むことが出来たのだ。
「さ、ここで1泊ね!」
メイの一声で、前回と同じテントやキッチンまで取り出し、野営の準備を進める。
メイとフェイリスは食事の準備、デミドランとテンニーンは寝床の準備と分担し、作業を始めた。
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