Messiah~底辺召喚士の異世界物語~

小泉 マキ

文字の大きさ
67 / 85
開闢の始まり

四大学園対抗戦 予選9

しおりを挟む




一瞬でシュリの目前まで迫るメイ。
しかし、彼女は動じない。
何故ならば、そこには障壁があるから。

「なにこれ?」

メイは指でちょんちょんと障壁をつついていた。
その障壁は弾力があり、ラップの様に伸びる性質を持っているらしい。
これには流石にシュリも動揺を隠せない。

障壁は無色透明。
もちろん無臭でもあるし、無詠唱で出せる最強の盾だ。
何らかの素早い武術でフェドールを戦闘不能にしたと読んだシュリは、このトラップを使ったのだ。
目にも見えない速さで衝突すれば、勿論ただでは済まない。

しかし目の前の彼女は、しっかりと手前で止まり、つついたり伸ばしたり凹ませたりして見えない筈の障壁を観察しているのだ。

「なら、これはどうかしらッッ!?」

もう一つ、隠し持っていたナイフを取り出して、二つを擦り合わせる。
チンッという音と軽い火花が出た。


「あっ...。」


メイともあろうものが、ミスを犯した。
無意識にナイフを目で追い、火花を見てしまった。
目が眩むとかそういう類の物では無く、これは催眠術又は幻術だ。
相手の無意識に働きかける魔法の様な物。

その証拠に、会場に居たはずのメイは、今は見ず知らずの場所にいる。
しかし気持ち良い位に綺麗に決まった技に、メイは感心せざるを得なかった。

「私とした事が...。」

そう呟きながら、周りを見渡す。
ボロボロの教会。
見覚えは無いが、何処か懐かしい匂いがする。

正面にかかる大きな十字架。
そして、朽ち果てた教壇に、参拝者用の木製の長椅子。
天井も一部崩落していて、そこから陽が差し込んでいる。

コツコツとローファーを鳴らしながら、身廊を歩く。
床も木製で、大分古いのか時折ギシギシという音が鳴る。

内部は朽ち果てている他は、何もおかしい箇所は存在しない様だ。
この催眠から抜け出す方法を早く見つけなければ。

振り返り、教会の入口を見据える。
木製だがしっかりとした造り。
そこに向かって歩き出す。

バンッッ

勢い良く開いて外へ出た。

(良く出来てるなぁ。)

ボロボロの教会は小高い丘に建っているらしい。
それも、まるで未来都市かの様な街の中心だ。
見渡す限りの青空。
足元の芝生。
吹き抜ける爽やかな風。
眼下に広がる発展都市。

街の中央を通る煉瓦敷のメインストリートが、ここからでも良く見える。
しかし、人っ子一人いない。

街へ降りる為の道に立っている背中を除けば。

黄色のコートに黒いブーツ。
そして、見覚えのある金髪パーマ。

「広斗...さん?」

「よっ。久しぶり。」

ニッと笑いながら顔だけ振り向いた彼。
吸っていたタバコを地面へ落とし、踏み消す。
そして、メイに向き直った。

「いつかはこういう日が来ると思っていたよ。」

大河オオカワ広斗ヒロト
『芽衣』を『造った』者の一人。
その笑顔も、襟足を弄る癖も、変わっていない。

「な、なんでっ...!!」

言いかけて、メイは止める。
しかし、広斗は笑いながら続けた。

「この世界は紛れもなく、幻術の世界だよ。」

( そんなの、分かってる。)

懐かしい。
会えて嬉しい。
そんな感情がメイの心を支配する。

メイにとって、広斗は親同然。
しかし、目の前の彼は幻術による幻覚なのだ。
恐らく深層心理に働きかける幻術なのだろう。

「でもな、『これ』は俺達がお前に『残した』魔法だ。」

「えっ...!?」

理解が追いつかない。

「お前が幻術の類の魔法をかけられた時に発動する、俺達の魔法だよ。」

「つまり...?」

「あぁ、俺は俺の意思で喋っているし、ここに居る間の俺は本物だ。」

腕を広げて笑顔を向ける。
メイは迷わず飛びついた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

いずれ最強の錬金術師?

小狐丸
ファンタジー
 テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。  女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。  けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。  はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。 **************  本編終了しました。  只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。  お暇でしたらどうぞ。  書籍版一巻〜七巻発売中です。  コミック版一巻〜二巻発売中です。  よろしくお願いします。 **************

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...