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開闢の始まり
四大学園対抗戦 予選16
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第三救護室。
広さは20帖程の部屋。
そこにベッドが12台程置かれ、カーテンで仕切られている。
一部屋に白魔道士と医術師が一人ずつ、看護師が複数人。
第三救護室では、特に酷い状態の生徒が二人。
1人は筋骨隆々な学生。
手足の関節を折られ、立つことすらままならない。
今は痛みで気を失っている。
「どうやったらこうなるんだ...。」
白衣を纏った医術師は生徒の容態に困惑していた。
普通の人間では有り得ない怪我だし、これを躊躇い無くやってのける方も人間ではない。
神官服に身を包んだ白髪の白魔道士も、思わず眉を顰めた。
とりあえず医術師の応急処置で関節を元の位置で固定する。
切開し、粉砕された骨を魔力で吸い取り、ステンレス製の固定器具を取り付け、魔力糸で塞ぐ。
「これでしばらくは大丈夫だろう。後は頼んだぞ。俺は隣を見てくる。」
医術師の言葉にコクリと頷き、杖を翳す。
緑色の魔力が生徒を包み、自然治癒力が高まった。
医術師が向かったのは隣のベッド。
そこに寝ている少女。
その傍らで涙目になりながら手を握る、青髪の付き添いの少女。
「どれ、見せてごらん。」
医術師は明らかに膨れている腹の部分の制服を捲った。
真っ赤に染まった腹部。
拳状に、内出血を起こしている。
「おじちゃん...フェイリスを治して!」
「あぁ、今やってみるね。」
内出血跡に手を添え、目を閉じる。
『透視。』
少女の腹部の内部が網膜に浮かぶ。
そして驚愕した。
内蔵が破裂していない。
この『打撲』の程度からして、内蔵は破裂し、下手すれば背骨まで破壊されていてもおかしくない筈だ。
( 何故だ。誰か治療したのか?こんなにも、完璧に。)
縫った傷口も、切った跡も、無い。
綺麗な腹部。
ただ、拳状に腫れているだけ。
こんな治療が出来る人物なら、中央都で開業医として働いていてもおかしくない。
しかも大人気の病院になる筈。
忙しい中、こんな予選程度を見に来ている訳もない。
つまり、生徒。
学生の中に治癒魔法のスペシャリストが居るんだ。
( 絶対に見つけてやる!!)
医術師は、ミストリアの医療の頂点を担うであろう将来の大物に思いを馳せた。
「おい、カルロス来てくれ!」
カルロスと呼ばれた白魔道士がカーテンを開けて入ってくる。
「このお嬢ちゃんは打撲だけだ。治してやってくれ。」
「え、打撲ですか!?こんなになってるのに...!!」
あぁ、そう言うだろうと思った。
医術師は込み上げてくる笑顔を抑えられない。
「視りゃ、わかる。それだけの実力者が生徒の中にいるってこった。こうしちゃいられねぇ!!後は頼んだぜ!!!」
「あ、ちょ!チャールズさん!!!」
追いかける前に治療しなければ。
大事は無いとはいえ、怪我は怪我。
踏みとどまり、フェイリスの腹部に治癒魔法をかける。
見る見る腫れは引いて、元の白い肌に戻った。
「ありがとうっ!白魔道士さんっ!」
「いえ、職務ですので、失礼します!!」
青髪の少女に一礼し、救護室を出て行く。
「フェイリス...。」
スプリウェルは心配している。
銀髪ハーフエルフの少女を。
齢で言えば50倍くらいは離れているが、今ここで過ごしているスプリウェルにとっては『姉の様な存在』になっているのだ。
甘えさせてくれるし、甘えてくる。
そんな人類との交流が、いつの間にか好きになっていた。
( ついこの間まではずーっと一人だったのにな…。)
メイが来てから、フェイリスと出会ってから、全てが変わった。
何百年も変化に怯えて結界に閉じこもっていた自分が恥ずかしく思えてきた。
スースーと寝息を立てているフェイリス。
その端整な横顔を眺める。
起きる気配は未だ、無い。
遠くから、歓声の挙がる音が聞こえる。
看護師達も慌ただしくなってきた。
( そろそろメイの相手が運ばれてくる頃か。)
しばらく人間共の喧騒に耳を傾けていよう。
そのうち彼女達も来るのだから。
そう思ってスプリウェルもフェイリスの傍らで寝入ってしまった。
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