75 / 85
開闢の始まり
四大学園対抗戦 予選17
しおりを挟む*
予選のトーナメント一回戦。
無事、最後まで終わった。
勿論メイ達『五月雨』は勝利。
フェイリスを失ったものの、進化したメイが負ける筈が無かった。
ほんの数分遡る。
目を覚ましたメイは状況を把握していた。
ナイフを二本持ったシュリが攻撃を『外したと思って』困惑しているが、関係ない。
目の前の伸びる障壁を手を触れて解除。
シュリのナイフを叩き落とし、蹴りを軽く三発入れて救護班の元へ飛ばす。
その時間、わずか一秒。
放送委員の声と歓声を背に、会場を後にした。
救護室へ向かう一向。
デミドランは怪訝な顔をしている。
先程のほんの一瞬。
あれからメイの雰囲気が少し変わった。
今まで抱えていた歪さの様な物が、無くなっているのだ。
( こりゃ何かあったな。)
あの一瞬に詰まった何か。
恐らくデミドラン以外にそれに気づくといえば、理事長くらいなものだろう。
幼くとも凛々しい横顔に、頼もしさを感じていた。
第三救護室。
目当てのカーテンを開け、中へ入る。
「どう?ウェルちゃん。」
「メイ!お疲れっ!」
少し寝ていた様子のスプリウェルは飛び起き、メイに抱きついた。
「フェイリスの身体は異常無しだよ。」
見上げて、笑顔を零す。
身体は異常無し。
つまり、『アレ』は健在か。
メイはフェイリスに近づき、制服のブラウスをはだけさせる。
一同は、その状態に息を呑んだ。
手で目を塞いで赤面しているテンニーンを除いて。
以前から、フェイリスの肩にへばりついていた物。
それが更に移動して侵食していた。
見た目では分からないが、彼女の胸元奥深く。
心臓に近い場所に、『ソレ』はある。
「いったい何なんだ『コレ』は。」
デミドランが思わず吐いたセリフに、メイが笑う。
「ふふふっ、その内わかるよ!」
メイだけは分かっている。
これは『種』なんだと。
恐らく一悶着あるにはあるが、悪い様にはならないだろう。
後はフェイリスの精神力次第かな。
そんなメイの心持ちを知らないデミドランは、彼女の笑顔に恐怖していた。
普通ならこういう『寄生体』の類は切り離すものだ。
しかし、メイは笑顔で『放置』している。
先程まで頼もしく思っていたのを撤回する。
メイはやっぱり怖い。
ブルブルと身を振るわせ、この先の自身の安全を祈った。
*
もうすぐトーナメント二回戦が始まる。
フェイリスと、それを看病するスプリウェルを除いた『五月雨』の面々は、控え室でモニターを眺めていた。
二回戦ともなれば、一度勝った実力者。
レベルも先程の一回戦より上がっていた。
モニターの中では爆発やら噴煙やら上がっているが、メイ達には関係ない。
その目は次の相手に照準を合わせている。
十組のトーナメント、二回戦では五組になる。
当たり前だが。
となると、一組余る。
そこに活用されるのがシード権だ。
一回戦を飛び越え二回戦、三回戦から投入されるチームと戦う。
それが二組、トーナメント表に記されていた。
勿論、最初のトーナメント表には書いて無かった名前だ。
『水環龍の調べ』と『教職員』。
メイ達が、その二組と当たる事になる。
間違い無く、前者は生徒会だろう。
この学園で水環龍と言えばサーリフだ。
そして後者。
これは最早いじめだ。
何故に下級生が、教職員と戦わなければならないのか。
普通ならば有り得ない。
つまり、メイ達だからこうなったのだ。
「はぁ...。」
思わずため息が漏れる。
生徒会も教職員も、相手にするには少々厄介だ。
まず実力者の集まりなのは確かだし、それを倒してしまえば完全に注目の的。
万が一倒されてしまえば、本戦への出場資格が剥奪されてしまう。
メイ達の目的の為にも、理事長との約束の為にも、それはなるべく避けたい。
しかしメイは、その心配が全くの無駄な事には気づいていない。
既に一回戦で注目の的であるし、初任務で利益も出している。
特にアダマンタイトゴーレムの寄付で。
「カカッ。まぁなるようになるさ!」
バシンと景気づけにデミドランに背中を叩かれ、メイは悶絶する。
怒りはしないが、思っていた以上の古龍の張り手は結構効いた。
「もうっ!叩くなら言ってよ!!」
「...なんだそりゃ。」
目を丸くして驚くデミドランを見て、テンニーンは爆笑している。
余りに平和すぎる一時が流れていた。
0
あなたにおすすめの小説
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる