Messiah~底辺召喚士の異世界物語~

小泉 マキ

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開闢の始まり

炎の山脈

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翌朝。
メイ達5人はワンズの商隊と合流していた。
アンスウェイ社からはワンズの他に3人の社員、4台の荷馬車と御者が来ている。

「いやー、嬉しいね!こんなに早く合流出来るとは思わなかったよ!」

先頭の荷馬車の座席に座ったワンズは、嬉しそうに横を歩くメイにウィンクをした。

「メイ君のパーティーって事はこの旅も安泰だなぁ。」

「油断は禁物ですよ!ワンズさん!」

乾いた笑いを漏らしながらも、メイはワンズの身を案じている。
何故ならば、あの炎の山脈を通るからだ。

炎の山脈は、簡単に言えば四六時中山火事が起きている様な状態で、魔物も過酷な環境に適応した一筋縄ではいかない強さに育っている。

代表的な例を挙げれば、フレイムアリゲーターという魔物。
アントランド王国のギルドに入る際に、メイが持ち込んだ物だ。
常に背中全体から炎を吹き出している火属性の魔物である。

( フレイムアリゲーターもそうだけど、あそこのモンスターまぁまぁ強いんだよなぁ...。)

フレイムアリゲーター以外にも、なかなか骨のある魔物が多いのだ。
いくらメイが強くても、護衛対象が油断しているとなると任務に支障が出ることもある。

「まぁそんなに硬くならないでくれ。私は年に1度は炎の山脈を通っているから危険性は十分に解っているつもりだよ。」

先程の笑みとは違って真剣な眼差しだ。

「毎年何かしらイレギュラーも起きるしね。」

今度は溜息。

( イレギュラー?)

メイは首を傾げる。
以前メイが来た時はそんなに大変な事は起きてなかったはず。

( フレイムアリゲーターの大量発生なんかもイレギュラーの内に入るのかな?)

たしかあの時は通常の倍近くのフレイムアリゲーターが道を塞いでいて、倒しきるのに苦労した気がする。

「とりあえず何か起きれば私達が全力で護りますからね!」

今回の旅路の布陣はこうだ。
まずはワンズが乗っている荷馬車を1番の戦力であるメイが護衛する。

そして2番目はフェイリスとテンニーン。
一応、炎獄龍に成りたてのテンニーンと補助のフェイリスだ。
2人ならば盗賊や魔物程度であればどうとでもなる。
それに、メイが近い分フォローもしやすい。

3番目はスプリウェル。
4番目はデミドラン。
こちらも互いにフォローしあえる布陣であり、隙はない。

そして今回は更に、秘策がある。

メイの右耳にあるのは白いBluetoothイヤホン。
これが『五月雨』全員分あるのだ。
背面を押すとスイッチのON/OFFを切り替えられ、ONの間だけ全員と通話出来るという物。
現代のイヤホンの機能とまではいかないが、今回の任務では役に立ち得るだろう。

「ところでワンズさん、めちゃくちゃ大所帯ですけど何の荷物を運んでるんですか?」

メイはふと気になって聞いてみた。
前回と違って4台の荷馬車だ。
物資であれば相当な量になるだろう。

「気になるかい?年度末のエキスポ用の品物なんだよね。」

エキスポ。
テンニーンとメイが出会った場所。
正式名称は『魔法技術博覧会』。
通称『エキスポ』だ。
5年毎にミストリア中の会社や組織が己の最新魔法技術を世に初公開する場になる。

( そういえば今年はあるのね、エキスポ。)

『有原 芽衣』がこの世界に来る前に、『メイリーン』が1度参加していた。
こうなってからは、初めてだ。
なかなか楽しみではある。

今運んでいる荷物が、アンスウェイ社が手塩をかけた魔法技術の商品なのだろう。

( なおさら気合い入れて守らなきゃね!)









領国ドレイムを出発してから何時間経ったのだろうか。
夕日傾く中、目の前には轟々と燃える山々。
昼間かと錯覚する程の明るさに、思わず目を瞑ってしまいそうだ。
炎の山脈に着いたのである。

「ここからは気合い入れて行きますよ!!!」

ワンズの掛け声に、御者も頷き馬に鞭打つ。
先程よりも早いスピードで、山道へと突入した。

炎の山脈は山道の脇が最早火の海。
肌を照らす熱は、体中の水分を持っていく。
早々に切り抜けなければ不調を来してしまう。
護衛のメイ達も小走りで着いていくが、これは最低限身体強化を使えなければ直ぐにへばってしまいそうだ。

山腹から時々、轟音を奏でながら炎が吹き出している。

( 前来た時は気づかなかったけど、これってガスが燃えてるって事だよね。)

メイは走りながら一抹の不安を覚えていた。
永遠に消えない炎の山脈、その実態はガスの塊。
安心して行軍出来る訳が無い。

横を見ると、ワンズも滴る汗をハンカチで拭いながら険しい表情をしている。
そりゃそうだ。
商人にとってはこの暑さは地獄の様だろう。

「ちょっと暑いですね。」

メイが指を鳴らし、清涼魔法をワンズ達にかけてやる。

「いやぁ、助かります...!」

ワンズも御者も、メイに微笑みかけた。









「やっと着いたぁ!!!」

山道の頂上。
広場になっていて、この付近では炎も燃えていないため、道中よりは暑さも穏やかだ。

「ここで今日は休みましょう!!」

ワンズの掛け声で、商人達と御者達が協力してテントを張っていく。
メイ達もいつものテントを出して、中へ入る。

「何かおかしいと思わねぇか??」

口を開いたのはデミドラン。
椅子に座りながら呟いた。

「ランさんの言う通り、変だと思いますね。」

テンニーンも同意する。

「確かに、魔物が少ないな。」

フェイリスの言う通り、魔物が少ない。
というよりも、居ない。

炎の山脈は誰もが知る魔物の巣窟のはず。
それが、道中1匹たりとも居なかった。
全員が魔力感知を発動しても、何も感じ取れない。

「俗に言う嵐の前の静けさだねっ!」

スプリウェルの言葉に、メイは溜息を吐いた。

「...それにしても嵐が来るの早すぎない?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ


地響きが足元を揺らす。


ドカァアアアンッッッッ


メイ達がテントを飛び出すのと同時に、炎の山脈の頂上が爆発した。


吹き出す巨大な炎柱。
噴石が、これでもかと言う程大量に爆散している。

メイがとっさに張った結界によって被害は無いが、ワンズ達は腰を抜かしている。

「こ、今年のイレギュラーはヤバい...!!」

まぁ、分かっていた。


( フラグ建てすぎだよね...。)



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