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秘書

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「リタ君、このゼル・ガードナーって人知ってる?」

 秘書のリタは狐の獣人だ。人間寄りの見た目だが、耳は狐のそれだし尻尾もある。体毛は狐らしい部分と人間らしい部分と半々といったところか。髪色は狐耳と同じ茶色だ。

 彼女は年下の16歳なのだが、非常に仕事がデキる。僕の命の恩人のユグルドが斡旋してくれた人物で、頼んだ仕事は気づいたときには終わっているし、僕のミスもさりげなくカバーしてくれる。もうリタにおんぶにだっこなわけで、本当はリタ様って呼びたいほどなんだけど、雇ってる側の人間が、年下で従業員の女の子に様付けなのはいかがなものか、ってことで君付けで呼んでいる。それもそれで問題あるんだが、まぁ、慣れてしまったので仕方がない。

「いえ、その方は存じませんが、知り合いにポーションの制作を生業としているものはいます。カイト様がご希望されるのであれば、その知人を通じてゼル・ガードナーとやらを探してみますか?」

 ちなみにこの「カイト」というのが僕の名だ。異世界に来たのだから名前を変えちゃおうと思っていたものの、不意に名前を聞かれたものだから、慣れてる名前で答えてしまった。

「そうだね、せっかくだしゼルって人を探してもらおうかな。リタ君の知人にもわからなかったら無理にとは言わないけど」
「わかりました、知人もこの街に住んでいるので数日中にはカイト様に報告できるかと」

 リタは空になった瓶を手に取った。処分してくれるのだろう。

「ところでリタ君はポーションを飲んだことは?」
「ありますよ、大きめのアウルベアーと…ちょっと…あったときに」

 え?ベアって熊だよな。いや、えっと、なんで濁した言い方?
 勝ったの?熊に?大きめの?
…まぁ今はいいや、話がごちゃ混ぜになる。

「…えっと、味はどうだった?」


「そうですね、父が浸かった風呂の残り湯と同じくらい、飲みたくないですね」
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