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魔法

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「私がいた国ではポーションの製造がほとんどなかったので、正直なところ初歩の初歩から伺いたいのですが…」
「そうかそうか、製造過程で製造者によって変えている部分があっての、全てを話せるわけではないのじゃが、それでも問題ないかね?」
「えぇ、私も学問で研究しているわけではないので、話していただける範囲でかまいません」
「じゃあまずはこれかの」

 ゼルはおもむろに立ち上がると、部屋の隅に置いてある鉢に植えてある植物の葉を数枚ちぎり、こちらに差し出してきた。

「これがポーションの原料『薬草』じゃ」

 差し出された葉を手に取り、まじまじと見つめた。見た目は、言ってしまえばどこにでも生えているような葉っぱだ。

「その葉を少し噛んでみなさい」

 え?まじ?あのポーションの原料なんてぶっちゃけ味わいたくないんだが…。ただ、微笑みながらこちらを見るゼルさんは、いきなりそんな不味いもの食わせるような人には見えない。
 何があっても美味しいとリアクションする覚悟を決め、カイトは葉を噛んだ。

「…甘い」

 意外にもポーションの面影などなく、ほんのりとした甘みが口に広がった。

「フフフ、君はポーションを飲んだことあるかね?」
「はい、そのときは、なんというか…この味とは全然違いましたね」
「そうじゃろう、まぁ味の話はあとでするとして、ポーションの効果を説明しようかのう」

 ゼルは先ほどちぎった葉を見せながら話を続けた。

「薬草自体に傷を治す効果が強くあるわけではない。せいぜい痛み止めと自然治癒の促進の効果があるくらいじゃ。逆にわしら魔法使いが使う『治癒』の魔法は、止血し傷口をふさぐことが出来るのじゃが、完璧に傷を癒そうとなると時間がかかるし痛み止めの効果もない。そこでその2つの良さを合わせたのがポーションじゃ」

 なるほど、作れる人が限られるわけだ。
 この世界では誰しもが魔法を使えるわけではないと聞いた。実際、僕の横でうたた寝をしているアルゴスは魔法が使えない。人族やエルフ、亜人、獣人、といった人型の種族は共通して、魔法が使えるのは4割ほどらしい。モンスターのような人型ではない種族の方が、魔法を扱うことに関しては上だそうだ。僕自身はというと、なんだかぼんやりとした明かりをつけれる程度で、これからに期待といったところだ。

「そして作り方じゃが、まずは薬草を煮詰め、成分を抽出する。そして『治癒』の魔法をその抽出した液体に込めるのじゃ。どうじゃ簡単じゃろう?」

 確かに、魔法を使えれば誰でも作れそうだ。

「そうですね、それだけを聞くと自作した方がコスパが良さそうに思えます」

 この世界のポーションは冒険者御用達とはいえ、決して安売りされているわけではない。この世界ではスタンダードとされている4人パーティにつき、ポーションは2~3本あれば多い方だと聞いたことがある。

「あと、その作り方であれば、私が飲んだポーションの味にはならないような気がするのですが…」
「実際その通りじゃ。『治癒』の魔法は使える者が多くはないが、使えるのであれば自作した方が圧倒的に味も良いし金もかからない」
「では、なぜ…」

 ここが僕にとって一番気になる部分だ。

「それはな、わしらが作るときに『治癒』の魔法を込めると共に、『飲んだ対象にとって嫌な味がする』魔法も込めているからじゃ」
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