これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

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前略、回想と勘違いと

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 その日は珍しく、星のキレイな夜でした。

「やっぱり冷えるよね、この時期は」

 本来であればこんなにキレイな星空があるのなら、意中のあの人を誘って、2人静かに星をみて、ロマンチックな雰囲気を楽しみたいところですが。

「現実はそんなに薔薇色じゃないか」

 実際はそんな人は隣にいないし、外出の理由だって、ロマンチックとはかけ離れたレンタルビデオの返却の為だし、補導もされかけた。

「そりゃ、独り言も多くなりますよ」

 コンビニでプリンを買って外に出ても、空では星がキレイなまま。少しだけゆっくり歩こうかな、来るときは急いでてあまりみれなかったからね。

「それにしても本当に星がよく見える、吸い込まれそう…いや、落ちてきそう…」

 どう表現したらいいのか、上手く言葉にできないまま歩いていく。
 時折、星に手をかざしたりしながら。吸い込まれないように、落ちてこないように。
 さて、なにかぴったりな、いい言葉はないかな?

「…んんん?」

 …あの星、なんかさっきより大きくなってない?気のせいかな?いや、気のせいじゃないなぁ!

「ちょっと待って!ちょっと待って!落ちてきてる!」

 一際キレイなその星はあたしを目掛けて加速度的に大きくなっていく、静かだけど明らかに意思をもって。
 あぁ…そうだ……

「降ってくるような……」

 ようやく、しっくりとくる言葉で星空を例えることはできたけど、なにか他に大事なものを失った気がする。

 プリンとか命とか。ここであたしの意識はなくなる。

「もしもーーし」

「ん……」

「そろそろ起きませんかーー?」

「んん……?」

 誰だろう、あたしを起こそうとするのは、悪いけど朝は目覚まし時計以外に、起こされる気はないのです。
 スカッ、スカッと目覚まし時計を探す。
 でもなんだろう…なにか大事なことを忘れてる気がする…

「仕方ないですねぇ、ではこの2分の1でぶっ殺ハンマーで疑似ロシアンルーレットでもしますかね」

 えぇ~っと………そうだ!

「いきますよ~~~~」

「DVD返さなきゃ!!」

「あ」

「~~~~~~~~~っ!!!」

 あまりの痛さに声がでない………!
 どうして、起きてそうそうにこんな目にあうの…
 頭を抑える……よかった、大事ないみたい、あたしの頭が固くてよかったよ。

「あ、起きたんですね、おはよーございまーす!」

「はい…?おはようございまする」

 なんだろう、突然のこと過ぎて理解が追いつかない、頭が痛い、物理的にも痛い。
 というか、このいろいろと白い女の子は誰だろうか?

「まず謝って、あたしの頭に謝って」

「2分の1でぶっ殺ハンマーで殴ってごめんなさい」

「謝って!あたしの命に謝って!」

 星に撃たれて死んで、その上ハンマーでも死んでたまるか!
 ……ん?星に撃たれて?

「あ、プリン!………じゃなくてあたし、流れ星に撃たれて!」

「はい、死にました、正確には消滅しましたね。」

 白い女の子はグッ!っと親指をたてる。
 いや、消滅しましたねって………

「大丈夫です!私たち天使は無闇に人を消滅させません!」

 今までの感じだと、あたしは無闇に消滅させられた感がスゴイんだけど……

「時浦刹那さん、あなたを異世界、ネオスティアにいろいろな特典と共に転生させてあげましょう!」

 白い女の子…天使……いや、エセ天使は楽しそうに語る。
 今のところ、そのパタつかせている羽以外は、天使ではなく流れ星を扱う殺人者である。

「これでもうなんの喜びもなく、人に疎まれるだけの人生とはおさらばですね!」

 喜びもなくっていやいやいやいや…

「天使から見て、あたしの人生ってそんなに酷いの?」

「そりゃあもう!天使新聞にも載ってますよ!いまトレンドのやべぇ人間はこいつだ!って、読み上げますね。」
 
 エセ天使はどこからか新聞紙を取り出す。
 天使新聞って……胡散臭いなぁ

「時浦刹那  男  41歳  無職(25年間)
高校中退後、1度も働かず体の弱い両親から毎日のギャンブル代と酒代をもらい続ける生活
また重度の癇癪持ちであり、家族は生傷が絶えない。
痴漢による逮捕歴が2度、現在は強盗未遂にて服役中」

「う~ん、このクズ」

「それ絶対あたしじゃないよね!?」

「そういえば、41歳の男性にしては小柄で可愛らしいですね」
 
「男の時点で気づいてよ!名前しか合ってないし!てかそんな人と同姓同名なの嫌だよ!」

 なんてテキトーな!天使ってみんなこんななの!?

「というか、なんでそんな人を、特典付きで転生させようとしたの?罪を償わせようよ…」

「いやぁそれがですね、欲望強い奴のがええやろって女神様が」
 
 スパーっと、タバコか何かを吸うそぶりを見せるエセ天使。
 どうやら天使だけでなく女神もちゃらんぽらんらしい。

「できれば元の世界に帰してほしいんだけど…」

「えぇ~、いいじゃないですか、ハーレム作りましょうよ、転生したらハーレム、基本です」

 なるほどね、結構前から流行ってるよね。
 答えは決まってるけど、頭に指を当てて迷う素振りを見せておこう。

「う~ん、少しモテてみたいけど、男の人に囲まれる状況になれてないからきっと疲れちゃうね」

「あ、それなら大丈夫です、大体フラグ建てるのは女の子ですから」

「それは普通に困る!」 

 現在でも異性からモテたことないのに、異世界で同性からモテるとか疲れるどころじゃないよ。

「えぇ~全く、仕方ないですねぇ」

 そう言って天使は後ろに置いてあった黒電話を回し始めた。……なんで黒電話?

「あ、しもしも~あ、うん、天使天使、ちょっとさ時浦刹那をさ、バァーン!とやってやったのよ」

 なんでそんな喋り方なん?

「うんうん、それでさ、なんか同姓同名の人だったみたいで~~そう、マジウケるぅ」

「ウケてないで話、進めて進めて。」

「ちょっと、セツナン!うるさいぃ!あ、うん!ゴメチゴメチ、もうあの子ったらかまってちゃんでぇ~」

 2分の1でぶっ殺ハンマー使おうかな……

「はいは~い、テキトーに丸めこんどくね~」

 もう少し、静かに話すべきだと思う
 
「それでは、時浦刹那さんにお願いがあります。」

「え、どうしたの急に。」
 
 電話を切ったエセ天使はくるりと振り返って、これまでとは違う真面目な表情で話しかけてきた。
 でも……さっきの話を聞いたあとだと、聞きたくないなぁ

「この度は私たちの手違いにてネオスティアにお呼びしてしまい申し訳ありませんでした。ですが今回、我々も異世界の人の力を借りたくて呼び出しました。勝手なお願いではありますが私たちの手伝いをお願いできますでしょうか?」

 そこには、胡散臭さは消え、真摯に訴える天使の姿があった。うん、仕方ない。

「まぁ、あたしにできることならね」

「ありがとうございます。女神様の古い友人にこれを渡してほしいのです。転生者が旅立つ場所は決まっており、そこから少しばかり旅をしてもらうことになるのですが、達成の暁には元の世界にお連れいたします。」

 元の世界に帰れるし、人?助けもできるし、仕方ない、幸い特典付きらしいしなんとかなるか。

「うん、いいよ」

「あ、そすか、じゃあ言質はとったんで」

「え?」
 
 ちょっと待って、さっきまでの天使どこにいったの?

「いやぁ、よかったです、心を良く転生を引き受けてくれて、それじゃあ奥で準備と質問タイムを設けまーす」

 そう言ってエセ天使は奥へと歩いていった。

「えぇ……」

「頑張ってハーレム作ろうぜ!」

振り返って親指をたてるエセ天使、やかましいわ。
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