これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

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前略、自己紹介とマジですか?と

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「そういえば、あなたのことをなにも知りませんね」

 広い草原を歩く傍ら、あたしの少し前を歩くメイド服の少女、リリアンはそんなことを言いながら、振り返った。

「え…あ、今?」

 2人で歩き始めて数時間、鍛えると言う彼女の言葉に嘘はなく、どこから取り出したのか、大きなカゴを背負わされている。
 そのカゴの中に彼女が石を気まぐれに放り込んでいくのだ。これは…なかなか鍛えられますね……!

「はい、今思えば、身なりも普通でまるで強くない。特殊な技能も何もない。なんなんですか?」

 それに関しては何割かは彼女のせいなのだが……
 言わぬが花と言うやつだろう。

「しばらくは一緒にいるし、自己紹介しないとね」

 やはり相互理解はいい関係を生むだろう。

「名前は時浦刹那…まぁセツナでいいよ。16歳、身長は3年前から…そうだ、156cmで体重はプリン3個分。好きな食べ物もプリンだけど、この世界にはないよねぇ…それから趣味映画で特技は…」

「あなたの名前、年齢、身長体重、趣味嗜好や特技、その全てに興味はありません。どうして冒険者として、なぜそこまで無能なのかが聞きたいんです」

 身振り手振りとユーモアを交えた、あたしの自己紹介は、バッサリと切り捨てられた。その苛立った顔が怖い…
 どうやらまだまだ仲良くはなれないらしい。
 これ以上怒らせてもアレなので、元の世界で消されてからのことを掻い摘んで話してみる。

「9999ポイントをスキル1つに使うなんて、あなた、バカですね。それも筋金入りの」

 リリアンは呆れた表情でこちらを見る、あたしの方が少しだけ背は高いはずなのに、見下されるように感じるのは、その冷えた声も理由の1つだろう。
 そしてあれは胡散臭い天使に騙された結果である。あたしは悪くない………半分くらいしか。

「しかし9999ポイントなだけあって、きっとスゴイスキルなんでしょう。スキルボードを見せて下さい」

 どうぞ、といわれるがままに、スキルボードを呼び出して差し出す。
 そういえば、具体的にはどんなスキルか知らないな……名前からするに武器を持ち変えれるとかかな?流石にそれだけじゃないよね?

【ウエポンチェンジ】

 現在装備中の武具から所持している別の武具へと、硬直をキャンセルし即座に装備を変更する。

「え……以上?」

「以上ですね」

「ゴミスキルだぁっーー!!」

 なんてこった!普通にゴミスキルだ!普通に使えない!

「これは……」

 考え込むリリアン……まさか、強い人にはわかるのか、このゴミスキルの使い道が……

「ゴミスキルですね、間違いないです」

「本人に今、装備できる武器が低ランクの片手剣しかないのが、ゴミスキルに拍車をかけてますね」

「デスヨネー……」

 ガックリとうなだれるあたし。ツッコミ疲れも相まって足が重いよ……

「他の装備を取ろうにも、最低でも10前後のポイントが入りますからね。ふむ、現在残り2ポイントですか」

「あれ?2ポイントあるんだ」

「はい、強敵と出会うで1ポイント、強敵と戦うで1ポイントですね」

 あれだけ怖い思いして2ポイントか……どうやら本当にこの世界は楽して強くなれないらしい。

「ともあれ、当面はこの【刃物4点セット】を目指してみたらいいでしょう。」

【刃物4点セット】

 ご好評につき1点限り!新米冒険者のあなたもこれでバトルのエキスパートに!?
 Eランクの両手剣、大剣、双剣が同時に手に入っちゃう!?スキルポイント30にて絶賛習得可能!

 ……なにこの通販番組みたいなスキル

「転生者のスキルボードには変なマスがあるんですね。ぴったりです」

 あのバカ天使め、許さん。

 「その天使の自作スキルとききましたが、実際に機能するんでしょうか」

 あ……気になる!

「直接本人に聞いてみようかな」

 あたしはポーチからテレホンカードを取り出す、どうせこれも念じれば使えるやつだろう。
 発信中……あの黒電話に通じてるんだろうか。

「不思議なカードですね、それ」

「なんかだか、一度だけ天使になんでも聞けるらしいよ」
 
 リリアンは少しだけ興味を持ったようだ、あたしにじゃなくてこのカードにだけど…

「は~い、セツナン久々~ご用件はなんです?」

 なんとも間の抜けた喋り方、いろいろ言いたいことはあるが、すこしでも多くのことを聞くために、数々の文句をぐっと抑えてとりあえず。 

「装備変更で硬直キャンセルってマジですか?」

「マジです」

 ガチャ!ツー…ツー…ツー…

 その1言だけで切られる電話。 

 あたしの、いつか絶対に殺すリストにエセ天使の名前が加わった瞬間だった。

「えぇ……と……」

「ドンマイです」

 リリアンの優しさが身にしみた。誰かが慰めてくれるっていいことだね……本当に。

「あたしのこと話したんだからさ、リリアンのことも教えてよ」

 ここぞとばかりに話題を変更、実際彼女に聞きたいことはいっぱいある。

「では、1つだけ質問に答えたましょう」

 ピン、と指を立てるリリアン、意外にもすんなり質問は許された、でも1つか……

「枷と鎖は邪魔じゃないの?」

 迷ったあげく、そんなことを聞いてみた。
 リリアンはとても可愛らしいけど。その両手と両足を繋ぐ鎖だけがとても異質だ。

「これは必要なものです。力を抑える為に、物理的、魔力的に縛っているのです」

「そしてこれは……」 

 そこまで喋って口籠る。

「いえ、喋りすぎですね。なんでもないです」

 残念、続きはもっと仲良くなってからだね。

「それはそうと、ペースが落ちてますよ。最初に私の剣を見切ろうとした、あのぐらいの気迫と動きは最低限みせてほしいです」

「そうはいってもあれは、エセ天使に超強化してもらってたからね。今やったら瞬殺だよ」

 超強化されてても瞬殺されたのは黙っておく。

「全く、不便な人ですね」

 呆れたように、ため息混じりに呟くリリアン。

「仕方なかったんだよ、【奴隷ゾンビアタック】か、これの2択だったんだから」

「強そうじゃないですか【奴隷ゾンビアタック】奴隷をゾンビの如く再生し突撃させる技でしょう。」

「やっぱりわかるよね。最低だよ最低。」

 やれやれ、本当に最低だよ、倫理感や、人間性を疑っちゃう……

「今からでも人間性を捨てて習得してきなさい」

 ……悪魔がここにもいた。

「強さの為には仕方のない、必要な犠牲ですね」

「悪魔かあんたは!」

 思わずツッコミ、許されない。

「そのとおりです。青の領地では黒い悪魔と呼ばれています。」

「違和感ないね!」

 青とか黒とかややこしいなぁ。
 でもなんだ、意外と会話が続くじゃないか。

「さて、ここで質問です」

 突然改まり、立ち止まるリリアン、なんだろう。

「魔物に襲われそうな少女がいます、あなたはどうしますか?」

 遠くに目をこらす……まだハッキリとはみえないけど、確かに誰かいる。

「あのままだと数分後には魔物に襲われますね」

 予定調和のように淡々と語るリリアン。
 そんなの……決まってる!

「助けにいくよ、それはあたしの手と足が届く範囲だ!」

「実践に勝る訓練はありません。まずはそこまで走りましょう」

 あくまで訓練と言い張るリリアン、じゃあその流れで行こうか。

 何かが、間に合わなくなる前に、あたしは少女のもとに走り出す。
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