これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

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前略、失敗と悲しいと

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 こうやって意識の消失から目覚めるのは、何度目だろうか。
 少なくとも元の世界にいた頃は、1度も経験したことはなかったはずだ。

「起きましたか」

 視界が安定し、白い天井とリリアンの顔。
 あたしのせいで作戦は失敗して、ここに連れ戻されたことがわかった。

「次に会うのは地上で、という話だったのでは?」

「……ごめん」

 結果として約束を破ってしまった。
 うまくいかないのはいつもの事だけど、あそこは失敗しちゃいけない場面だった。

「……かく言う私も、追っ手を倒しすぎて捕まったわけですが」

 思いついたように言うリリアン。
 それがあたしの為の嘘だってことくらい、考えなくてもわかった。

「うん……ありがとう」

「お礼だなんて、変な人ですね。相変わらず」

 気が重い……それでも何か行動を起こさなくちゃ……
 焦る気持ちを押し込み、口を開く。

「それじゃ、次はどうしようか!また強行突破しちゃう?」

 明るく、明るく、あたしの恐怖を知られないように。

「それは無理です、あまりの脱走者の多さに、警備が増員されました」

「えっと……えっと……」

 ダメだ、焦る。考えろ!考えろ! 
 なにかなにかなにかなにかなにかなにか……

「なにかなにかなにかなにか……」

「落ち着いてください」

 気がつけば、焦りから呟いていた、リリアンの声で少しだけ落ち着く。

「今だけは、わたしのことを凝視しても怒りません」

 そう言うとその場でくるりと回るリリアン、元気だせってことかな?でも……

「今回も諦める気はないのでしょう?」

 そうだ、諦めなければ………

 諦めなかったらまた、あんな怖い思いをするのかな……
 
 言葉にはだせない、でもあたしの顔をみてリリアンは、苛立ちを隠さずに。

「はぁ……腑抜けたあなたには、言っても意味がないみたいですね。正直、大変不愉快です」

「弱くなりましたね、あなたは」

「わかってるよ!あたしが弱いことくらいさ!」

 こんなこと言っちゃいけないのに止まらない。
 だって、こんなに辛いのに!こんなに怖いのに!

「リリアンはもっと、わかってくれてると思ってたよ……」

「わかってないのはあなたです」

 あたしの言葉に、間髪入れず返すリリアン。

「私はあなたが弱いことなんてどうでもいいんです」

 どうでも良くない、それは大事なことだ。
 だってあたしは……

「私は、あなたが弱くなったことが不愉快だと言っているんです」

 リリアンがなにを言ってるのかわからない。それは同じ意味じゃないの?

「あたしは強くなったよ!みんなの為に主人公になろうって!」

 また言葉が強くなる。
 さっきから、いやこの街にきてから思考も言葉もめちゃくちゃだ。
 それでも言葉が止まらない、止まれない。

「みんな格好いいって!主人公だって言ってくれた!だからその期待を裏切らないような主人公になろうって!」

 宴会の日、リリアンに言った言葉は決して嘘じゃない。
 そうあれたらいいな、そんな気持ちは日増しに大きくなっていった。

「あたしが主人公の物語なら、誰にも悲しい思いはさせない!」

 そうだ、あたしの物語は誰も悲しまない!

 沈黙。あたしの荒くなった息づかいだけが聞こえる。
 リリアンはしばらくあたしを見つめて、ゆっくりと口を開いた。

「あなたは何を怖がっているんですか?」

 あたしのすべてを見透かしたような目でそういった。
 それは、あたしが1番聞きたくなかった言葉で、
 1番考えないようにしていた言葉だ。だって…

 あたしは、あたしが何に恐怖しているのかがわからない。
 
「本当はこんなこと、言いたくないですけど」

 リリアンは何も言い返せないあたしに背を向けて。
 
「私は今、とても悲しいです」

 付き合いは短いが、1番近くで過ごしてきたリリアンの言葉。
 それは、あたしが主人公なんかじゃないと突きつけるには、十分すぎるほどだった。
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