桃華の戦機~トウカノセンキ~

武無由乃

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西暦20??年

桃華と藤原のTRA講座~モモカトフジワラノTRAコウザ~

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藤原「本編をご覧の読者諸君は、いまいちTRAという兵器について理解が追い付いていない者がいると思う。
そこで今回は、一話を使ってTRAに関する解説を、桃華と俺の会話形式で行っていこうと思う」

桃華「それは、いきなりな話ね――。まあやれというならやるけど」

藤原「まあ、お願いいたします。お姫様――」

桃華「それはいいから」

◇TRAの歴史=RAの誕生:

藤原「TRAが生まれた経緯については知っているかな? 桃華君?」

桃華「そんな事――、日本政府がGF計画、要するにボーテック機関搭載型巨大義体を生み出そうとした研究を流用した、減価版GFがTRAっていう話でしょ?
知っているわ」

藤原「生の情報を知らない情報社会人らしい、マニュアル通りの回答ありがとうございます」

桃華「なんかカチンとくる言い方ねおじさん――」

藤原「TRAという兵器がGF計画からきているのは事実だ、そしてそれによって生まれたGFの減価版として、ボーテック機関の機能に制限がついて現在のTRAとなっているのもね。
でも、それの一つ前に外国に輸出されていたRA(=Ride Armor)という作業機械が実は存在しているんだ」

桃華「それは知ってたけど……」

藤原「うむ。作業機械、特に重機と呼ばれるものは、それを操縦できるようになるために、専門知識や操縦訓練をしなければならない。
さらに、操縦技術を身に着けても、現場経験がないと細かい失敗で大事故を引き起こしたり、せっかくの作業が台無しになったりすることもあるんだ。
それだけ、過去のキャタピラ式や装輪式重機は扱いが難しく、どちらにしろ現場に出る以外にそのスキルをアップすることができなかった。
そんな、作業機械の世界に革命を起こしたのがRAという汎用人型作業機械だった」

桃華「そんなに革命的だったの?」

藤原「当然だよ。普通、人で持ち上げられない重量物を、重機で持ち上げるのにどれだけのステップを踏む必要があるか知っている?
そう言った”比較的簡単な行為”ですら、細かく精密な準備と動作が必要だったのが、RAであるならそこまでの精密さは必要なかった」

桃華「そうかな? 適当に動かしたら危ないのはRAでも同じでしょ?」

藤原「もちろんそうだが、その精密動作に係るオペレーターへの負担は、RAの方がはるかに小さかったんだ。
なぜなら――、RAは人が人レベルで行う作業行為を、そのままクラスアップして重機レベルまで簡単に強化できたからだ。
ようは、重量物を持ち上げるなら、両足で踏ん張って両手で持ち上げるだけで済むという事。
細かい位置調整を行うためのレバーやハンドル操作が、RAという作業機械では全くの不要だからね――」

桃華「まあ、そうだね……。もの持ち上げるだけのことに、そんな下準備とか普通はしないもんね人間って――」

藤原「人の手では再現できない作業は、手持ちの道具を使えば、各種重機と全く同じことが小さな負担で行うこともできる。
さらに、そういったRAに搭乗するための訓練は、通常の重機よりもはるかに少なくて済み、そもそも作業自体は人間が人間クラスで行っているものの拡大だから、わざわざ現場に出てスキルアップを目指す必要もない」

桃華「そうか――、今回の作業をどうするか一度人間で再現してみて、それをもとにRAで本番作業を行えばいいってことだよね?」

藤原「まさにその通り――。結局、重機っていうのは巨人ではない人間の各部位の働きを、機械で拡大して作業に生かしているものだから、人間そのものが巨大化すれば一般重機に勝るのは当然のことと言える」

桃華「なんか、わかってきた気がする――。それって現在のTRA戦術と同じだよね?」

藤原「その通りだ! TRAは歩兵をそのまま拡大して、歩兵戦術で生まれる対応能力を単純に拡大することを前提にしている。
ようするに、歩兵が歩兵小銃を撃つより、TRAが20㎜小銃を撃つ方が、火力は単純に十数倍になるよね? ――ってこと。
そしてこれこそ、TRAがかの国で生まれた、原因の一つだったんだ――」

桃華「かの国?」

藤原「かつてRONの侵攻を受けた小国、フラメス共和国だよ――」

◇TRAの歴史=TRAの誕生:

藤原「フラメス共和国は、現在進行形でRONと休戦状態にある小さな軍事国家。――にならざるおえなかった国だ」

桃華「藤原の生まれた国ね?」

藤原「そうだ――。そして、そこで世界初のTRAは生まれた」

桃華「機動装甲歩兵シリーズだよね?」

藤原「現在の戦術”機装”義体という名前の元ネタでもある。
RONに対し、過去の紛争からくる歩兵戦術で勝るフラメス共和国は、その優秀な歩兵をRAによって戦力拡大し現場に大量投入したんだ。
無論、それだけでRONに対抗できたわけでもないが。歩兵を簡単に対戦車クラスまで強化できるRAは、小国であるフラメス共和国にとっては最強の武器であったと言える」

桃華「戦場で使われるRAだからTRAってわけね?」

藤原「そうだね――。TRAはもともとの戦術義体より筋肉構成が単純化されており若干整備しやすく、同時に各部位をパッケージ化することで換装しやすくしていた。
そして、GFほどの高価な精密機器も使われておらず、単純に安価で製造もしやすかった。無論、当時の支援国家からの物資支援もフラメス共和国にTRAを運用しやすい土壌を作った」

桃華「結局、RONはその大軍でも攻めきれずに、フラメス共和国との休戦を決めた」

藤原「その通りだよ。これがきっかけで、日本政府もTRAという存在に興味を持ち始めて、現在のようなTRA部隊が生まれる結果となった」

◇TRAと戦術義体:

桃華「TRAの筋肉構成は戦術義体とは違うって言うけど、そんなに違うモノなの?」

藤原「そうだよ――。昔は戦術義体のように筋肉配置を人間と全く同じにして、パイロットとのリンクをしやすくしていたけど。
それらの経験データの蓄積によって、一部の筋肉配置を変更したり減らしたり、逆に増やしたりして、最終的にはヒトと同じ動きができさえすればリンクは容易だという結論で設計されている」

桃華「それって普通の義体が、直接脳からの動作命令を筋肉へと送っているのとは違い、脳と筋肉の間に中間システムを置いて仲立ちをしているってことでいいの?」

藤原「そうだよ。脳からの動作命令をまずヒトの筋肉動作情報へと変換、さらにそこから機体動作情報へと最適化して動作命令を構成し、各部位の人工筋肉を動作させているんだ。
そして、同時にその中間システムは、各操縦桿やフットペダル、コンソールからの命令入力にも対応している」

桃華「普通の戦術義体と違って、TRAに操縦桿とか他の補助入力システムがあるのは、この中間システムによる効果なんだね?」

藤原「当然、その分入力法は複雑化していて、補助入力装置を操作中でも脳と機体のリンクを維持するために特別な精神的才能が必要となってくる」

桃華「私のような存在が生まれたのは、それが原因だったんだね」

◇TRAの現在:

藤原「現在の一般的なTRAは、全長12m前後、全備重量は19t前後が標準となっている。最大起重は約5.5tでそれは各リミッターがついての数値だ」

桃華「TRAの骨格って結構脆いもんね」

藤原「そうだよ。軽量安価な金属に多少の強靭さを加えた合金だからね。それの周りを強靭な人工筋肉で覆って締め付けることで強固な四肢を構成しているんだ。
そしてTRAの頭部は、昔の戦術義体と違って首周りにしか人工筋肉が使われていない、単純なセンサーユニットになっている。
この頭部こそ、製造会社の趣味の傾向が最も反映される部分で、会社によって大きく違ってくる部分だ」

桃華「胸部にはコックピットがあって、ある意味そここそがTRA唯一の弱点なんだよね」

藤原「その通り――。それ以外の部分は損傷耐性がきわめて高く、そうでなくても簡単に交換できるレベルのものだ。
コックピットのサイズはガンシップのものよりさらに小さいくらいで、胸部外観が大きく見せているのも合わさって、ピンポイントで狙うのがとても難しくなっている。
TRAはその性質上、開けた場所での立ち状態での被弾が多くなる傾向にある。しかし、その運動能力による回避性能は別にして、単純に被弾すると危険な中枢部位が小さく、命中させにくいという利点を持っているんだ。
もちろん、最新の主力戦車の火器管制システムは、それでも命中させてくる場合があるので、歩兵戦術を駆使して被弾を回避するのは必須事項となる」

桃華「まあ、戦場でつっ立てるだけのTRAなんて普通はいないもんね」

藤原「日本のTRAは一般的に、骨格の周りに人工筋肉、人工筋肉の周りに柔軟樹脂繊維、柔軟樹脂繊維を覆う形で耐熱布服、耐熱布服を覆うように強化樹脂装甲、――という形になっている。
その外観は強化戦闘スーツを身につけた人間そのものであり、手も甲に装甲素材の甲当てがついているだけで、耐熱布の手袋をつけた状態になっている。
手のひらにはモノがスリップしないように樹脂製のすべり止めがついていて、まさに重装備の作業員そのものの外見をしているんだね」

桃華「足にも実は指があるんだって?」

藤原「その通り――。TRAの脚は、詳細にはヒトの足と同じ構造だ。そして、その上に柔軟に動く靴を履いている、――という構造になっている。
脚は人間特有の極めて繊細な構造物なので、その構成を単純化するのが難しいというのが、そうなっている原因でもある」

◇最後に

藤原「とりあえず、今回の解説はここまでになる」

桃華「暇があったら、二回三回って続ける予定なんでしょ?」

藤原「その通りだ。その時にはまたよろしく!」
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