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犬好きだとは言いましたが、犬にしろとは言ってません!
しおりを挟む私の名前は更科(さらしな)ヒナタ。
花も恥じらう17歳の女子高生であり、動物好きである。
どれくらい動物好きかと言うと、家では7匹くらい猫を飼ってるし、犬も飼っているくらいである。
いや、それはお前じゃなくて親が動物好きってのはナシね。まあ、きっちり動物好きは遺伝してるのさ。
そう、つまり私は毎朝お腹に乗った猫の重みで目覚める――そんなことに至福を感じる女なのである。
もっと言うのであれば猫のオヤツを右手に持って家中を練り歩き、大量の猫を引き連れて「猫使いの魔女現る!」とか叫んで、お母さんに怒られるような女なのだ。
さて、そんな私だけど、トラックに轢かれそうな子供を助けたんだよね。
そんでもって、転生の謎空間で女神様と出会った私は「子供助けて徳を積んだから、転生先での希望は動物好きな貴女の属性を最大限に考慮しましょう」との、ありがたい申し出を受けた。
で、それを聞いた瞬間に私のテンションはマックスってなもんよ。
動物好きを考慮した転生っていったらモンスターテイマー?
あるいは、森とかで獣たちと心を通わせるエルフの少女?
いやはや、これは夢が広がっちゃうわよねって感じで私は異世界転生をすることになったんだ。
で、今、私はこの世界で目が覚めたんだけどさ。
薄暗い洞窟みたいなところなんだけど、何か視界が低いんだよね。
それで、手が上まで上がらずに、視線を地面に向けてみると……もふもふとした灰色毛に覆われた足がそこにはあったんだ。
で、何か良くわからないんだけど、どうにも周囲から異常に色んな臭いを感じるんだよね。
はてさてこれは何事か……と、床に座り込んで体を丸めてみる。
体を丸めるという行為は、前の人生を通算しても初めてだったんだけど、どうにもすんなりとできちゃったんだよね。
で、丸めた自分の体が視界に入ってきたんだけど、もふもふのお腹にもふもふの足、そしてもふもふの尻尾――
――どうみても仔犬です。本当にありがとうございました
いや、もふもふの足を見た瞬間に薄々とは気づいてた。気づいてたんだよ。
でも、動物好きを考慮って女神様……。
あくまでも私は愛でるのが好きなわけで、ワンワンやにゃんにゃんになりたいわけじゃないからね。
しかし、これは不味いなー……犬だよ犬、犬に転生しちゃったよと思いつつ、現状確認だ。
とりあえず、ここはどうにも薄暗い。
そして、私と同じ匂いを持つ者が近くにいたので目を凝らしてみると……って、犬だ! 犬がいた!
この子は灰色毛のちっちゃい子供の犬で、つぶらなお目目がとっても可愛い。
歩いて寄ってみると瞳をランランと輝かせて……あ、ペロリとこっちを舐めてきたよ。
よしよし、どうやらこのフレンドリー加減と灰色の毛を見るに、この子はこの世界での私の血縁者みたいだね。
股間を見てみると、物凄い可愛らしいのがついてたので男の子なんだろう。
で、私も気になったので床に座って丸まって確認……あ、良かった。ちゃんと女の子みたいだよ。
ってか、何でか良く分からないんだけど、弟君が考えていることが分かる。
今はお腹が空いてるみたいで、あとは私のことは大好きみたい。今すぐに遊びたくてウズウズしている感じかね。
と、それはさておきこの状況だと、近くにママンかパパンがいるのが相場なんだけど……と、この場所の探索を始めたそこで私は絶句した。
――おいおいマジですか
よくよく見てみると、どうにもこの部屋は牢獄らしい。
樹木の格子があって、目を凝らすと向こう側は調理場みたいなところだ。
巨大な鍋があって、洗い場があって、コックさん担当と思わしきゴブリンがデカい包丁を握っているね。
で、右手に包丁を持ったゴブリンが、左手で掴んで羽をむしっているのは……何か首の長いニワトリみたいな感じの鳥だね。
まあ、ゴブリンのコックは絶賛調理中ということなのだろう。
それで、私はある種の予感と共に牢獄の中を見渡してみたんだけど――はい、いました。
いましたねー。
やっぱりいましたねー。
ゴブリンの調理場とこの場所が直結の時点でそうじゃないかなーっと思いましたが、やっぱりでしたねー。
部屋の隅で震えているあの鳥はどうみても――
――何か首の長いニワトリみたいな感じの鳥です。どうみても調理中のアレの仲間です。
ってことは、私がいるのは食料の貯蔵庫で間違いない。
どんだけ見てもパパンやママンの姿はここに見えないし、これは不味い。
おいおい女神様、いくらなんでもこりゃあシャレになってないんじゃないでしょうか?
と、その時、首の長いニワトリみたいな感じの鳥を調理し終えたゴブリンが、包丁を持ったままこちらに向かって歩いてきた。
牢屋のドアは押して開けるタイプで、こっち側からは開けられないように向こう側で棚で塞がれているんだよね。
で、ゴブリンは棚を動かして入ってきたんだけど……。
あ、ヤバい。
ゴブリンは舌なめずりしながら、鼻歌混じりだ。
これは完全に今日の飯は何にすっかなー的な、ちょっとだけウキウキ混じりのノリだ。
そんなゴブリンを見て私は固まってしまったけれど、弟君(仮称)は事態を呑み込めてないらしく、尻尾をフリフリして喜んでいる。
何となく意識が覚醒する前の私もゴブリンにエサと水を毎日貰っていたのは覚えているから、弟君はゴブリンに懐いちゃってるんだろうか。
っていうか、不味い。
不味い不味い! これは不味い!
目測でゴブリンの大きさは私の5倍以上あるし、体重に至っては十倍とか二十倍もありそうな感じだ。
戦って勝つのは無理な話で……捕まえられた場合、そのままゴブリンの胃袋直行パターンだろうし……ああ、どうしよう!
こんな時、異世界転生モノならステータスオープンとか念じればスキルやら何やらで戦う力を発見とかが相場なんだろう。
けど、いきなり調理場っていう難易度高そうなこの世界では、そんなイージーモードは見込めない。
そもそもアレはネット小説や漫画のお約束なだけであって実際にそんなもんできるはずがない――
【ステータスを表示します】
できるんかい!
突然頭の中に響いた神の声にツッコミを入れてしまったけど、ここは素直にありがたい。
さあ、時は一刻を争う! カモンカモン! ステータスカモン!
名称:ヒナタ
種族:フェンリル(幼体)
と、そんな感じの情報が頭に流れ込んできたんだ。
ってか、お? お? おおおおおお!?
キタ! フェンリルきたあああ! 強種族きたよコレ! 転生ガチャ成功!
いやー、やっぱ女神さまはお約束分かってんじゃん。
いやはや、いきなり調理場スタートだから……難易度エクストリームかと思ってドキドキしちゃったよ。
さて、それはさておきワンワン界最強と名高いフェンリルのステータスはどんな感じかな? 続きの情報カモン!
名称:ヒナタ
基礎レベル:1/5
種族:フェンリル(幼体)
職業:小魔狼(進化段階1)
HP:12/12(チワワ並)
MP:3/3(小魔狼並)
攻撃力:5(小型犬並)
防御力:2(愛玩犬並)
敏捷 :7(柴犬並)
SP:0
チワワ並って何じゃーい!
っていうか、弱いじゃん! 私、くっそ雑魚じゃん!
異世界で生き抜くとかじゃなくて、現代日本での野良犬ライフすら無理っぽい感じじゃんコレ!
いや、でも……スキルなら、スキルならきっとこんな私でも何とかしてくれるはずだ! はい、スキルの情報カモン!
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