コアラの歩み

三条 よもぎ

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高校生編

第20話 封筒

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高校の入学式も終わり、2人ともすぐに新しい生活に慣れてきた。
高校生になると親の出番は少なくなり、進路については瞳自身で考え、受験勉強を頑張っているようである。

「今日も学校、頑張ってね。いってらっしゃい」
「うん、行ってきます。お母さん、いつもお弁当を作ってくれてありがとう」

受験のプレッシャーから解放されたからなのか高校生になると瞳の反抗期は落ち着き、朋花へ感謝の気持ちを伝えられる素直な瞳に戻っていた。
そんな瞳を学校に送り出して、朋花も出勤するために家を出る。

憧れだった高校に入学して、高校生活を毎日楽しんでいるようで何よりだわ。
私は瞳がどの進路を選んでも応援出来るように働いてお金を貯めるのみね。

これから何かとお金が入用になるため、教育資金を貯めるために朋花はより一層仕事に励んでいた。


そして、歳を取る毎に1年があっという間に過ぎるようになり、気付けば年末である。

「もう今年も終わりかあ。1年はあっという間だね」
「何だか前にもその台詞を聞いたことがあるような……。お母さん、それ、毎年言っているよね?」
「そうだっけ?まあ、今年も楽しく1年を過ごせてよかったよ」

朋花は瞳とそんな会話をしながら実家に帰ると、朋花宛てに封筒が届いていた。

「ただいまー!」
「おかえり、朋花。瞳ちゃんも寒い中、よく来てくれたね。さあ、上がって。あっ、朋花に手紙が届いていたよ」

そう言って母から封筒を渡された朋花は受け取り、一度鞄に入れる。

「へえ、何だろう?荷物を置いてから後で確認するね」

そう母に伝え、先に荷物を部屋に置くために瞳と共に家に上がった。
いつも寝泊まりする部屋に荷物を置くと、朋花は先程の封筒を取り出し、中身を確認する。

「どれどれ……。なるほど、それで実家に届いていたのね」

独り言を呟きながら開いた封筒の中身は中学校の同窓会の案内であった。
40歳の節目である今年、2回目の成人式として同窓会が開かれるという案内である。
どうやら皆が誕生日を迎え終えて40歳になっている3月に開かれるようで、今月中に出欠を返信するように書かれていた。

「お母さん、その封筒、何だったの?」

朋花が独り言を呟いていたのが気になった瞳は、自分の荷物を置いてから朋花に声を掛けた。
質問された朋花は封筒の中身を説明する。

「中学校の同窓会の案内だったよ。3月に開催予定で参加したいんだけど、帰ってくるのが夜遅くなるからこの日は瞳はこのおじいちゃん家に泊まって貰ってもいい?」
「うん、大丈夫だよ。ゆっくりしてきてね」

瞳の承諾が貰えたため、朋花は参加に丸をして出欠を伝える葉書を出すことにした。
そして、朋花の両親に瞳を預かって貰う約束をする。
こうして朋花は久しぶりに地元の友達と出会えることが決まった。
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