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case1 ウツミ・ルイ
ある湖畔にて、透明度140mほど⑥
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ヘッドライトで照らした視界の端に、何か動くものが映り込んだ。頼りない光ではっきりと確認できないが、細長くて平たい物であるようだった。笹の葉に似た形状をしていて、横方向に素早く波を打ちながら、ぼくたちの『潜水艦』の横を通り過ぎようとしている。痙攣しているかのような細かい動きに対して、速度は小さかった。
「ルイ、あっちを照らして!」
エノは暗黒の世界で見えるはずもない指を差しているが、彼女の見ようとしているものはぼくも見えていた。
「魚?」
光が当たると鈍く目が光った。青みがかった色合いと筋肉質なフォルムをしていた。光が反射することでぼくたちは物の形を捉えているんだと再認識する。
メジウ湖にダイブして、ぼくたち以外の生き物に初めて遭遇した。
「でも、何が変だ」
ぼくはそう口にしてから、息が止まった。やっと見つけたと思っていた生命は、気づけば周囲にたくさん存在していて、次々にぼくたちを横切っていった。全てが同じようにゆっくりと湖底へと向かっていく。
ライトを頼りに目を凝らすと、原因が掴めてくる。違和感の正体は、進行方向にあった。
「もしかして、頭と尻尾が逆なのかしら?」
エノは真面目な顔をして、そう呟いた。おかしなことを言っているが、まったく検討外れではない。
「逆なのは間違い無いけど、違うのは魚たちの身体じゃない。彼らは逆走させられているんだ」
エノは水に息を吹きかけてぶくぶくと音を鳴らした。
「おそらく、魚たちは湖底へと引っ張られているんだ。何かしらの力によってね」
背筋に嫌な力が入ってしまう。最悪のケースだって考えられる。
「もしかして、ルイは引き込まれないように堪えているの?」
「今のところ、自覚はないよ。支配能力には関与しない自然の力かもしれない。小さい生き物だから引き込まれてしまっている可能性もある。ただし……」
ぼくが言いあぐねていると、エノはぼくのシャツの袖を掴んだ。
「安全の保証はできないってことね」
ヘッドライトは縦に揺れる。
「戻る? 酸素も残り10分くらいだ。さらに深く潜れば、引き込む力も強くなるんじゃないかな」
精神状態が普段よりも不安定なので、時間は思っているよりも短いはずだ。『潜水艦』が維持できないことも考えられる。
「わたしはルイが平気なら行くよ。メジウ湖に何が起こっているのか、知りたい」
エノは袖を握りしめたままだった。
湖底には必ず水質浄化の秘密があるはずだ。
ぼくたちはさらに深くへと潜る。
「ルイ、あっちを照らして!」
エノは暗黒の世界で見えるはずもない指を差しているが、彼女の見ようとしているものはぼくも見えていた。
「魚?」
光が当たると鈍く目が光った。青みがかった色合いと筋肉質なフォルムをしていた。光が反射することでぼくたちは物の形を捉えているんだと再認識する。
メジウ湖にダイブして、ぼくたち以外の生き物に初めて遭遇した。
「でも、何が変だ」
ぼくはそう口にしてから、息が止まった。やっと見つけたと思っていた生命は、気づけば周囲にたくさん存在していて、次々にぼくたちを横切っていった。全てが同じようにゆっくりと湖底へと向かっていく。
ライトを頼りに目を凝らすと、原因が掴めてくる。違和感の正体は、進行方向にあった。
「もしかして、頭と尻尾が逆なのかしら?」
エノは真面目な顔をして、そう呟いた。おかしなことを言っているが、まったく検討外れではない。
「逆なのは間違い無いけど、違うのは魚たちの身体じゃない。彼らは逆走させられているんだ」
エノは水に息を吹きかけてぶくぶくと音を鳴らした。
「おそらく、魚たちは湖底へと引っ張られているんだ。何かしらの力によってね」
背筋に嫌な力が入ってしまう。最悪のケースだって考えられる。
「もしかして、ルイは引き込まれないように堪えているの?」
「今のところ、自覚はないよ。支配能力には関与しない自然の力かもしれない。小さい生き物だから引き込まれてしまっている可能性もある。ただし……」
ぼくが言いあぐねていると、エノはぼくのシャツの袖を掴んだ。
「安全の保証はできないってことね」
ヘッドライトは縦に揺れる。
「戻る? 酸素も残り10分くらいだ。さらに深く潜れば、引き込む力も強くなるんじゃないかな」
精神状態が普段よりも不安定なので、時間は思っているよりも短いはずだ。『潜水艦』が維持できないことも考えられる。
「わたしはルイが平気なら行くよ。メジウ湖に何が起こっているのか、知りたい」
エノは袖を握りしめたままだった。
湖底には必ず水質浄化の秘密があるはずだ。
ぼくたちはさらに深くへと潜る。
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