クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也

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17:そしてダンジョンへ

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 「【ネクロマンス】!!」

 死神に向かって放たれたスキルは、いつもの様にパキリと砕けた。
 この世界に来て5日、毎朝の日課になっている。

 「駄目ね。まだレベル不足」
 『……レベルも大分上がりにくくなってきておるな……効率よくレベルを上げるにはスキルレベルを上げる必要がある……なんとももどかしいことだ……』

 現在、灰田さんのレベルは744。明らかにレベルの上がるスピードは落ちてきている。

 「といってもコレばっかりはね。今日も頑張って日課をこなしますよっと、【ネクロマンス】」

 灰田さんが鹿に【ネクロマンス】を使用する。

 「……ん?今何か違和感があったような」

 小首を傾げながら何やら考える灰田さん。その様子を見た死神がすぐさま灰田さんに【鑑定】を使った。

 『……ほう……スキルレベルが2になっているな……ユニークスキルは通常のスキルと比べるとレベルが上がりにくい傾向にある筈だが……これは嬉しい誤算だ……』
 「え、本当?それじゃ今日からダンジョン踏破に挑むのね!」

 最近、動物の死骸にスキルを使うだけの毎日に嫌気がさして来たと言っていた灰田さんは嬉しそうだ。

 『……うむ……レベル744もあれば並みのダンジョンならば問題はないだろう……試しにここから近い深森のダンジョンに向かうぞ……』
 「ちょっと待って。私、確かにレベルは高くなってるけど、戦闘経験とかないんだけど?スキルも【ネクロマンス】だけだし、武器とか防具とかも持ってないんだけど?」
 『……それも含めてのレベル744だ……戦闘経験が無くとも問題なく勝てるレベルだと判断する……武器は……適当に現地調達だ……ダンジョンに潜れば宝箱か魔物からドロップする……今まで1つもドロップしなかった事は……記憶にある限りはない……』
 「大雑把ね。その腕輪の中に何か武器とか無いの?」
 『……無いな……少なくとも……人間に扱える武器はな……後は……魔物を【ネクロマンス】でアンデッドにして使役するぐらいだが……スキルレベル2では無理だろうな……』
 「一応レベルは足りてるみたいなのよね。ちょっと試してみましょう?アンディ、悪いけどその辺で手ごろな魔物を狩って来てくれないかしら?あ、もちろん魂喰いの大鎌ソウルイーターは使わないでね」
 『わかった。ちょっと待ってて』

 拠点から離れると直ぐに手ごろな魔物が見つかった。
 赤い熊の様な魔物で手が4つあり、太い尻尾が生えている。

 「【シャドウエッジ】」

 スキルレべル1の【シャドウエッジ】で槍を作りそれを熊の心臓目掛けて突く。

 「ぐぅお!!」
 
 熊は一瞬暴れて、直ぐに動かなくなった。
 槍に熊を刺したまま、それを拠点まで引きずって戻る。

 『ただいま、これで良い?』

 僕は熊を灰田さんの前まで引きずっていき、槍を消した。

 「ありがと。それじゃ、早速試すわね。【ネクロマンス】」

 いつもの様に魔法陣が現れて、パキンと砕けた。

 「あ~、やっぱり駄目か。レベルは足りてるけど、スキルレベルが足りないって。どうせだからスキルレベル幾つでスキルが通るのか教えてくれれば良いのに。気の利かないメッセージウインドウね」
 『僕の時みたいに弱い状態で使役して、経験値共有で進化させる?』
 「お!それだ!アンディ天才!」
 『……経験値共有はあくまで主人とアンデッド間の共有であって……アンデッド同士での共有は出来んぞ?……武器も無い小娘がここの魔物を倒して経験値を稼ぐのか?……それならばダンジョンでも戦えるだろう……ちなみに……ダンジョンの浅い階層ならば……ここらの敵よりは弱いぞ?……』
 「何よ、いいアイデアだと思ったのに。しょうがない、私も覚悟を決めるか。案外入ってすぐに良い武器が手に入るかも知れないしね。アンディ、宝箱の【鍵開け】はお願いね」
 『任せて』

 武器は現地調達、なんて行き当たりばったりな計画をたてて、僕らはこの世界での初めてのダンジョンに向かう事にした。
 
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