上 下
10 / 13

10:夏だ! 海だ! 水着だ!

しおりを挟む

俺は何処にでもいる一般男子高校生。
訳あって現在は
清水・雫というスライム娘JKになっている。

あの一件といい、はちゃめちゃなTSライフを
送っていると時間が
あっという間に過ぎ去っていた。

いつからか、項上部にある
ファスナーのつかみすら消えた。
どうやら俺自身が雫という存在である
事を認めたのであろうか。

この件について淫獣に相談した所、
液体肉体自在で戻りゃいいじゃん。
という至極正論を言われた。

気が付けば夏休みだというのに
今日も今日とて懲りず
ログインボーナスの如く例の端末を開いた。

「やぁ、清水少年。」

ここまでの流れはノルマと言っていいだろう。

「アイツ、最後の最後で
欲望丸出しだったよな。」

「清水少年の暗示が強すぎたんだよ。
ナイス裏方だったね☆」

「いやさ、裏方は良いんだけども。
……つーかこの頃裏方しかしてねぇな。
なんか気分転換になる事ねーかなー。」

ーーバンッ!!

狙ったかのようなタイミングで、
背後の扉が開かれる。

「雫ちゃん! 私と海に行こうよ!」

「海っ!?」

そのワードを聞いた瞬間。
雫が持つ海の思い出が脳裏をよぎった。

なるほど、毎年の恒例行事ってやつか。
そういや裕司と男二人で女探しの旅と称して
行った思い出があったな。

結果は悲惨に終わった訳だが、
それなりに満足な冒険にはなった。

夏祭りというものは全てを
どうでも良くするくらいに馬鹿騒ぎなもんで、
充実感の溢れる幸福を見せてくれるのだ。

そんな回想を浮かべて、
電車の車窓から映る背景に目を遣る。

駆け去っていく景色はどこか
風情を感じさせる。

ぼーっと眺めてる内に停車を迎え姉と降りる。

「んーっ! 年1で来るこの空気サイコー!」

「 そ、そうだねお姉ちゃん。」

ぎこちない返事を返して、
先へと進む優香姉へついてく。

海の家にて一頻り準備を済ませ、いざ浜辺へ!

「うおぉぉっしぃぃい!!
海じゃあ! 水着じゃあっ!
双眼鏡じゃあいっ!!」

「ちょっと雫ちゃん!
イケメンマッチョを見つけるのは
この私なんだからねっ!!」

この妹してこの姉ありと言ったところか。
別に俺の目当てはハンサムボーイではなく、
水着美少女メインである。

うっは! こりゃあ楽園じゃねぇか。
今年は豊作でっせ!
さーて、どの娘から狙おうか。

……ってあれ?
視界が急に暗くなったな。
あまりの幸福視に失明したのか。

「おい、清水。
姉妹揃って下らない事してんじゃねー。
発情期かよ。」

聞き覚えのある声と共に、
双眼鏡が引き離されてとあるカップルが
視界を支配する。

「裕司っ!?」

「清水がなんで俺の名前を?」

「何言ってるのよ。
《私は裕司のセフレよ、当たり前じゃない。
もう5年も突きあってる》のに……ヒドイ。」

「裕司っちぃ? 今のどゆ事ッスかぁ?」

ま、不味いっ!
焦って修羅場を作ってしまった。
修正はいくらでも聞くがな。

「もー、覚えてないの陽菜ちゃん。
《3年前にオッケーだしたじゃん。》」

「あははっ! そうだったー。
私忘れっぽくて困るッスねー!」

「ホント勘弁だぜ……でだ。」

「「「ーー!?」」」

唐突かつ強引に仕切り直してくる
裕司に驚く。
姉と陽菜も同様だ。

「お前ら清水姉妹は危なっかしい。
よって、俺らとのサマーライフに
付き合ってもらう。」

「「へ?」」

姉と陽菜が驚くのは無理もない。
俺は裕司と元親友であるためこの流れは
想定内である。

「いいよ。ね、お姉ちゃん?」

「まぁ、私も賛成かな。」

もうちょっと反抗すると思ったが
話の分かる姉で助かるぜ。

「んじゃあ早速スイカ割りだな。
付いてこい。」

言われるがまま、俺らはついて行き
海の家でスイカを購入した。
ついでに専用バットもだ。

待ってる最中。背後の輩から
ひそひそとした愚痴が耳に入った。

あの男がなんで
大物モデル級美少女3人囲んでんだよとか。
あいつラブコメの主人公かよとか。

気持ちは分からんでもない。

もしあの淫獣と出会っていなければ、
こんな夏など来なかっただろう。

「おい、どうしたボーッと海眺めてよ。
次は雫の番だろ。」

裕司から専用バットと目隠しを手渡される。
俺は静かに頷き、目的地にて
3メートル先へ座すスイカに狙いを定める。

大体12歩って所か。やってやる!
目隠しをキツめに装着しいざ前へ!

ズサっ。

暖かな砂の感触が足底から伝う。
視界が開けてる時よりも鮮明に感じる。
が、その反面。

もう一歩進める。
やっぱりだ。どこを踏んでも同じ床の感触。

少しでも気を緩めれば自分がどこまで
進んだのかなんて把握出来なくなる。
想像してたより難しい催しみてぇだな。

っと、ここらへんかな。

歩を止めて俺は構えた。

「ここだぁぁあ!!」 

力を込めた振りが鉄槌の如き粉砕を見舞うッ!

スカッ!

盛大に空振った。

「ぁぁああっ!!」 

あんだけイキリ散らしといてこの様だ。
あまりの恥ずかしさに、
すでに抑えられた目に手を覆わせて
しゃがみ叫んだ。

すると、肩から温かな手が優しく乗る。

「雫……ドンマイ。」

「慰めないでくれ、どうか敵を頼む。」

「任せろ。
女組の屈辱は全てを俺が果たしてやる。」

まるでバトル漫画のようなやり取りであるが、
相手はスイカである。
当然あちらに敵意はない。

けども、堪らなく悔しいのだ。

「うぉおおりゃああっ!!」

ズシャアンッ!!

心地の良い炸裂音が砂辺に響く。
どうやら本当に果たしてくれたようだ。

「おーしっ! お前ら食うぞっ!」

「「「ラジャー!!!」」」

そんな流れで。
4人並んで座り、スイカ食いタイムに入る。

その視界の先にあるのは、
各々の夏を満喫する賑やかな老若男女達の姿。

砂城を作る子供。浜辺駆けるリア充。
波上を華麗に滑るサーフィン男達。
どれも写真に収めたら思い出の一枚だろう。

無言なれど、穏やかに進んでく皆との
食事タイムは充実したものとなった。

「なぁ、お前ら。
スイカじゃ腹膨れねぇだろ。
そろそろ本当に飯にすっか。」

「賛成ッス!!  清水シスターズは?」

俺達は同時に頭を縦に振って了承した。



海の家にて。

ピーク時より早く入れたおかげか、
並ばずに済んだ。
それでも席は8割くらい埋まっている。

これが夏休みパワーの力か。

「ねーねー! 雫っちは何にするッスか?」

「ほわっ!?」

「急に驚かないでよ、
ここずっと気が抜けてるッスよ。」

確かにそうだ。

無理もあるまい。
こんな夢のような面子で一夏を過ごすなど
以前の俺ではあり得ない奇跡なのだから。

そんな心中など彼らには通じないので
心の中に留め、俺は話題転換に乗り出す。

「ね、ねぇ皆は何選んだの。」

「俺は特盛海鮮カツカレーだな。」

「私は海鮮天丼で!」

「お姉ちゃんは海鮮焼きそばかなぁ。」

流石海の家、海鮮尽くしのメニューだらけと
いったところか。

「どしたよ、そんなに悩んで。
お前の料理だけ遅れると
今後の予定がずれっぞ?」

「むむむ。」

裕司の言い分は分かるが
どれも魅力的なんだよなぁ。

「鮮度でも気にしてんのか。
事前に調べておいたけどよ。

どうやらここの海鮮は、
現地点から反対の港で
捕れた新鮮な魚介を使ってるらしい。
……だから安心しろ。」

そういう事じゃないんだよなぁ。

もう無難にこれで行くか。

「アジフライ定食で。」

「オッケー。これで皆決まりだな。」



「お待たせしました。
アジフライ定食でございまーす!」

元気のある男性店員が
テーブルへとそれを置く。

これにて全員の食卓が揃った。
皆して箸を進めずに待ってくれたのは意外だ。

「じゃあそろそろ……」

裕司が仕切るように両の手を合わせる。
ひと呼吸置いて、一同は同時に口を開く。

「「「いただきます!!!」」」



食事と何気ない雑談で
時は一刻と過ぎていく。

店内のガラス越しから覗く水平線は
太陽を半分ほど飲み込んでいた。
もう夕方か。

楽しいと時間を忘れるって
こうゆう事なんだな。

「陽菜、清水先輩。悪いけど先
近くの神社で祭りに行っててくれねぇか。
雫とちょっと話したい事があるんだ。」

言われた二人はなんら疑いをかける訳でもなく
快く承諾して店内から去った。

俺、裕司に対して気に障る事を
無意識にやらかしたのだろうか。

「理由は分かんないけど、
気に障る事をしたのならごめんなさい。」

「いいや、謝りたいのはこっちの方だ。
雫、お前が今日ずっと放心状態になった理由。
俺なりに考えてたんだ。」

「え?」

「俺も最近少しばかり、陽菜を優先し過ぎた。
その件については本当に申し訳ない。
お前は俺の大事なセフレだ。

なのに俺は……どこかで間違っていた。
これで許して貰えるとは思っちゃいねぇが、
これから始めねぇか。」

顔を少し赤らめて、髪を片手で掻く裕司。
甘酸っぱい演出なんだけども歪んだ青春だな。

イケメンなのでこんなでも
絵になるのが面白い。

ここ最近セックス三昧であるのは
変わりないが、
どれも雫自身のセックスではない。

だけど、今回は違う。
純度100%の雫としてのセックス。
こんなチャンス中々ねぇぞ。
逃す訳にゃいかねぇな。

「その返事、待ってましたよ♡」

そのまま俺は旅館の二人部屋へと
連れ出された。

「本当は陽菜の為に予約した二人部屋
なんだか……この際しょうがねぇ。
さっさと始めっぞ。」

「待って裕司君。」

「おいおい、
もうお互い裸なのに何があるってんだ。」

「散々私を待たせたんだからさ、
今回のセックス主導権は私でいいよね?」

「分かった。」

クク、話が早くて助かるぜ。

「いきなりで悪いけど、
そこのベットに寝そべって。」

「こうか?」

「うんうん。やればできるじゃん!
じゃ……私も。」

一毛も纏わぬ雌筋が
裕司の視線を釘付けにする。
無理もない、
それは視界の一寸先にあるのだから。

「この姿勢って………」

どうやら裕司の方も察したようだ。

「そうだよ。
正しく裕司君が想像してるプレイ。
相互の秘所をぺろぺろし合うんだよぉ。」

以前の俺では知ってはいても絶対に
行動に移さないプレイ。
だけど今の俺なら好き嫌いさえも
支配できる。それがプロンプトの力。

「《私ね、おチンチンが大好きなの》」

「知ってらぁ、こちとらお前に
毎回フェラされまくってんだからな。」

やべぇ、言ったそばから
咥えたくて堪んねぇ。
分かってはいるのに、
好意の衝動がそれを勝る。

これがチンコ墜ちしたTS娘の心情か。

はぁむっ。
くーっ! いいねこの我慢汁の風味。
そして温もりと程よい硬さ大きさ。

隅から隅までたっぷり堪能しなくちゃ♡
俺の口は高まる感情と共に肉棒を貪る。

「くっ………俺も負けてらんねぇな!」

「んんっ!? んむむぅ♡♡」

ぷしゃああっ!

フェラに夢中で唐突に来る
あまりの快楽と衝撃に反応が間に合わず
海老反りして潮を吹いた。

その勢いで肉棒から外れた
俺の顔に目掛け放射される白濁液。

ぬめりと独特の香りが雌としての性欲を
更に掻き立てる。
この勝負、互角のようだ。

「今回も互角かよ。
久々だからセックス頻度多めの俺に軍配が
あると考えたが誤算だったな。

一度覚えたテクは忘れねぇってか。
最高だぜ……雫。」

「ふんっ、この程度で勝ったと思わないで。
主導権は私だって事、
身を以て教えてあげるわ♡♡」

ーー騎乗位。
それは、女性が優位に立つ絶対的体位。
分からせてやんぜ、裕司。

ぬぷぷと音を立ててゆっくりと昂ぶる
肉棒を膣内に収める。

「どうよ。」

「絶景だ。」

「まだナメられてるみたいね。
ま、そんな減らず口もすぐに消えるわ。」

俺はエロ漫画やエロアニメで培った
騎乗腰フリテクを全力で体現する。
しかし、見誤った。

「くふぅっ♡♡♡」

「どうした、さっきまであんなに
動き良かったのに大人しくなりやがって。
もしや雫……軽くイッたか。」

「はぁ? 図に乗らないでよ。
腰が疲れたからちょっと休憩しただけ。」

「ふぅーん。」

なんだあの余裕綽々な態度は、
男根の膨張と噛み合ってねぇぞ。

咄嗟に言い訳をしたが、裕司の図星だ。
この頃は液化憑依によるメスイキしか
してこなかった。

それが今回、裏目に出た。
純度100%である雫の女体が生み出す快楽は
憑依による分割的快楽ではない真正面の快楽。

男根玩具でもここまでの快楽は得られない。

そういや淫獣が言っていたな。
魔物は狩られやすい性質上、人間や動物よりも
子孫繁栄に特化した進化を遂げてると。

特に快楽神経が
人間の約100倍とかなんちゃら。

イカないようなんとか耐えてるが
どれほど保つかは分からない。
やりようは無いわけでもないがな。

要するに裕司を先にイカせる手段など
とっくに練っている。

スライム娘ならではの強み、液体肉体自在。
今まで憑依してきた女体全ての快楽を 
押しつければ
いくら裕司といえど耐えれまい。

そうだな、1ピストン毎に膣内構造を
ランダムチェンジとかな。

「ほらほら、どうだどうだぁ♡♡」

「どっ、どうなってやがる?
お前の膣内一々変わってねぇか。
こんなんずりぃだろっ!」

「あっれぇー裕司ぃ。
ヤリチンでもないのに何で分かるかなぁ?
んんっ♡♡ ひゃうんっ♡♡」

やっべ、予想以上に諸刃の剣だわこれ。
一々膣内構造が変わるという事は、
俺に来る快楽も一々変わるっつー訳で。

そうだ、一旦降り出し。
雫の膣に戻ろう。よし戻ったぞ。
あっ♡ 戻ったのハズレだったわ。

「「イクッ!!」」

びゅるるるるるるるぅぅうううう!!!

互いに溜めに溜めた複数の快楽が
爆発し、子宮へと強く放たれる精子と快楽。
TSメスイキって最高だな。

あぁ、でもみっともねぇ。
あまりの快楽に痙攣して裕司の胸板に
おっぱい乗せて倒れるとか。

つーか結局またお相子かよ。

「これで2対2か。
でもその姿勢っつー事はよォ、
もうお前に俺を犯す体力は
残ってないって意味だよなぁ。」

「そういう裕司こそ、残ってるの?」

「日頃から鍛えてんだ。当然だろうが。」

そのまま裕司は俺の身体を持ち上げて
正常位へと持ち込む。

「ふぅ、やっぱ可愛く蕩けた雫の顔が
一番見れるこの姿勢が……俺は好きだ。」

「み、見るなぁ。」

反射的に顔を手で覆う。
しかしこれも悪手のようで。

「ひゃんっ♡♡  おっぱい吸わないでよ。」

膣イキ後に乳首イキとか完全に
しょぼいセフレじゃねぇか。順番逆だろ。

「顔をちゃんと見せたらいいぞ。」

コロコロと巧みに踊る舌技に
限界の声を漏らす。

「わ、分かった。顔見せるからヤメて!」

「おうよ。」

行動移すの早いなオイ。
次は狙われないようにこうしとくか。

「オイオイ、いくら吸われたくないからって
露骨に胸を手で隠すとか可愛い過ぎんだろ。」

「うっさい! 
ヤるならとっととやんなさいよ!」

そうだ。もう俺の敗北は決した。
さっさと煮るなり焼くなり好きにしやがれ。
それが敗れた者に対して勝者がすべき筋。

正直言うと。
これ以上長期戦になると俺自身が
どうにかなりそうだから。

「わかってるって!」

ずんっ!
2発撃ったのに関わらず萎えるのを知らない
男根が勢いよく入り、子宮までをも刺激する。

「なぁ、雫。
本当の振りってヤツを教えてやるよ!」

パンッパンッパンッパンッ!

くっ! 知ってはいたが。
見様見真似とモノホンプレイボーイじゃ
振りの質が明らかに違う。

俺より断然振るの上手いし、
何より……さっきよりめっちゃ気持ちいい。

「あんっ♡ あんっ♡ 
コレ気持ちいいよぉ♡♡」

「ハッ! 
ようやく雌らしく喘ぐようになったなぁ!
前半のイキり具合は何処行ったよえぇ!?」

「べ、別にイキってなんかないしッ♡
私は只……んんっ♡」

私は只? 俺は一体何を言おうとした?
いいや、問正す必要なんかねぇな。

答えは一つだ。

「良く聞こぇねぇなぁ。
もう一度言ってくれないか。」

「私もっと気持ち良くなりたいの♡♡
だから、ありったけのおちんぽミルクを
私の中に頂戴、裕司君♡♡」

「お望み通り、注いでやんよ。
しっかり受け取れよ!」

「うんっ♡♡」

びゅるるるるるるるるぅぅぅううう!!!


***

短いようで長いプレイを互いに満喫した後、
俺と裕司は浴衣に着替えて祭りへと向かった。
そして、
鳥居で律儀に待つ姉と陽菜に合流した。

「いやぁー、お二人共準備長いッスねぇ。
暇すぎて私ら……んぐむむっ!?」

「ごめんねぇ、なんでもないよぉ。
雫ちゃん、裕司君。行こっか?」

「待たれぇい!!」

俺らの背後から大声と駆け足が迫る。
振り向くとそこにはフリフリの浴衣が似合う
合法ロリ美少女が息を切らして歩を止めていた。

「厚田先生!!」

「裕司、プライベートでその呼びは
やめろといっただろ!」

「 ごめん、彩良。」

「んもぅ~♡ しょうがないなぁ♡」

体育系の熱血漢教師だったとは
思えないチョロさだ。
容姿相応のチョロさと言っても過言ではない。

「すまんな皆。
彩良とは昼の内に合流する予定だったけど。」

「私は職業柄予定がズレ易いんだ。」
 
「いいよぉ。だって夏祭りって
多くの友達と分かち合った方が楽しいし!」

「私も優香姐さんの意見に賛成ッス!」

「うぉぉーん! 
私は優しい生徒達に
愛されて幸せ者だぁぁあ!!」

そこで熱血漢キャラ出さんでいい。
久々の登場だから張り切ってんのか。

そんな考察を交えながらも、
皆それぞれに夏夜を楽しんだ。

投げ縄、射的、お好み焼き、焼きそば、
たこ焼き、豚玉……分け合って味わった。

打ち上げられる花火景色を共有しあい
静かに感動した。
そうして帰りとなった道中。

「やーだ! 俺は釣れるっての!」

男子供の大声が聞こえる。
俺は一同に断りを入れて
気になる場へと駆け寄った。

その場所は、金魚すくい。
少年の足元には数十個をこえる破損網がある。

「坊や、諦めな。
お前にゃ金魚を掬う才能がねぇ。」

「なんでよ! 皆捕れたのに!
俺だけとれねぇっておかしいだろ!」

「あのなぁ坊や。
お前に変な網を渡す暇があったら
俺は海辺を駆け回った方がマシだ。」

「くっ……でもぉ!!」

「待った!!」

俺の声に二人が顔を向ける。

「そこの綺麗なお嬢様ちゃん!
良い所に来たなぁ。
この坊やを説得してくんねぇか。
じゃなきゃおじさん残業確定だよ。」

悲しい性だな。
流石にお互い可哀想過ぎるし、
ちょっとは手を貸すか。

「分かった! 私が手を貸してあげる!」

「ヤダ! 自分の力で捕りたいッ!」

「じゃあさ、一緒に捕ろ?」

俺は図ったように少年の手首を掴み、
背中に胸を当てる。
こうすれば大抵の男はイチコロだ。

男のツボっつーのは、
元男の俺がよく知ってるんだぜ。

「お姉ちゃん。胸……あたってる。」

恥ずかしそうにモゴモゴ言う少年。
うむ、やはりクリーンヒットだな。

「 当ててんのよ。
ここまで頑張った僕君へのごほーび♡
でもそろそろ私と決着つけましょ?
そしたらぁ♡ 
とびっきりのごほーび……あ♡げ♡る♡」

かつて聞いてたR18のASMRを参考に、
少年の耳元で艶かしく囁く。

が、そこでも更に追い打ちをかける。
もう片方の手を
年相応のテント張るソコに撫で這わせる。

これであちら側はご褒美とやらを
勝手に勘違いするのである。
勿論そう思うよう誘導したまでだが。

「……よろしくお願いします。」

先程の威勢が嘘にも思えるくらい
弱々しく答える少年。こりゃ効果絶大だな。

「んっ♡ そうそこそこ♡
僕君やればできんじゃん♡ あっ♡
もっと奥キてる♡ そう……そこ♡」

「お姉ちゃん……僕、
破いちやったのに出しちゃうよぉ。」

「うん、思いっきり出して♡
僕君の初めて……これで達成だね♡♡」

「出るッ!!」

ぱしゃんっ! 
と、音を立てて椀の上に金魚が飛び込んだ。

「「や、やったー!!」」

歳の離れた男二人が歓喜の声を上げる。
二人とも利害が一致した故の歓声だ。

「おじさん。」

「ん、どうした坊や。」

「この金魚返すよ。」

「いいのか? 
頑張ってとっただろう?」

「ウチ金魚飼える環境じゃねぇんだ!
だから代わりにスーパーボールくれ!!」

「いいぞ、ほらよ!」

いや、あんのかよ。
このおじさん割と用意周到だな。

受け取った少年は俺に感謝の言葉を述べて、
走り去っていった。
それを温かく見守り終えたおじさんが、
続けて口を開く。

「ありがとなお嬢ちゃん。
これでおじさん達、
ようやく満足に逝けるよ。」

満足に行く?
そんなに定時上がりしたかったのかよ。

「こちらこそ。」

「お嬢ちゃんみたいな優しくて綺麗な娘なら、
きっといい彼氏が出来るな。」

「はぁ!? わ、私が!
ナイナイナイっ!? だって私そもそも……」

俺はそもそも男だ。
陽菜の時は成り行きで彼女になってやったが、
俺自身が彼氏を求めるなんてありえやしない。

……って、本当か。なんか、引っかかるな。
俺ってもしかして順調にTS雌墜ちしてる?

「うんうん、おじさん分かってるから。
もう暗いしお友達の所に帰りな。」

誤解されて癪だが、確かに俺は待たせている。

「そうだね。バイバイおじさん!」

「あぁ!」

俺も待ち人達に合流すべく駆け去った。
が。

何者かに肩を掴まれた。
何だよこんな時に。

「あ?」

しまった、素で振り向いてしまった。

「ひぃい。怖いねお嬢ちゃん。」

大柄な男がニヤニヤとしている。
その瞳から窺えるのは、男の欲望。
男である俺はそれをよく知っている。

「あの……通報しますよ。」

「へぇ? 通報。
間に合うと思ってんのか、こんな場所で。」

だったら、あのおじさんに助けてもらおう。

「オイオイ、どこ走ってんだよ。
その先には何もねーぞ。」

んな訳ねぇだろ。
………って、え?

マジで何もねぇ。
つーか、ココって。

「また墓地に戻ってよぉ、
第2ラウンドかァ?  ……唆るねぇ。」

「第2ラウンド、何の話?」

「今更しらばっくれても遅えーよビッチ。
さっき木の影から
お前がショタレイプしてんのは
録音済みなんだよ。」

くっ、コレは困ったな。
どうやら俺は霊体験した挙げ句、
この男に弱みを握られてパコパコ対象と
なってしまったようだ。

墓地で青姦する
ビッチと思われてるなこりゃ。

うーん。こういう
夏のお約束的なエロイベントなんて
中々ないし乗ってみるのも一興かもな。

特に無理矢理犯されるTS娘という
シチュエーション自体が最高に唆る。
あ、また濡れちまってんな俺。

「や、やめて下さいっ!」

柄にもなく、腰を落として後ずさる。

「イイねイイねぇ。
じゃ、さっそくーーぐへぁっ!?」

男の首筋に閃光が触れて倒れた。
これはスタンガンだな。

気絶した背後から現れたのは、
裕司ではなく裕司と肩を並べそうな
イケメン男子だった。

だけどどこか、あの少年と似ている。

「大丈夫か、お前。」

「は、はいぃ。」

さっき襲われそうになった女の子という
体なので、気弱に振る舞う。

てか最高のシチュに横やり入れんじゃねぇよ。

「アンタには感謝してる。
これ位で恩を返しきれてはいねぇが。」

「恩?」

「そうだ。俺の弟を……未練から
救ってくれてありがとう。」

なるほど、そういう事か。
だとしたら俺を助けたのも合点がいく。

「弟は、ずっと夏祭りを望んでた。
特に金魚すくいがやりたいってな。
その願いは、生きてる間に叶えて
やれなかった。」

「………」

「アイツは小さい時から病弱でな。
ずっと院内で、当たり前の夏なんて
知らないまま過ごしてきたんだ。
その未練が、ここに歪みを生んだ。

俺も見えてたさ。弟が金魚すくいに足掻く姿。
助けに行きたいって思いながら。
でも足が進まねぇんだ。」

「…………」

「約束したのに何も果たせない俺が
どんな面して会えばいいんだよ。
我ながらクソ兄貴だよな。」

「ううん。お兄さんは悪くないよ!」

「涼二っ!」

「僕を助けてくれたお姉ちゃんを
守った自慢のお兄さんだから!
だから、最高にカッコイイんだ!
ね、お姉ちゃん!!」

「はっ!? カッコイイ。
私はそんなの全然思ってないし!」

って何赤くなってんだ俺ェ!!
何それっぽくそっぽ向いてんのぉ。

相手は男だぞ。俺も男だぞ。

確かに顔と声も可愛いしおっぱい付いてるし
くびれあるしまんこ付いてるけど俺は男だッ!

ときめく乙女になるなオレぇぇえい!!

「じゃあね、お兄さん!
あと義姉おねえちゃんも!」

ニッコリと手を振って。
少年は光の粒子として霧散した。

というか、コイツ平然と 
俺をアイツの嫁認定してなかったか。

ナイナイナイ……アリ?
…………ナイナイナイ。

やっべ、
俺の雫化が取り返しつかねぇトコまで
来てるなぁこりゃ。

「どうした花占いなんかして。
ほら、手ぇ出せ。
こんなトコさっさと出るぞ。」

手を差し伸べる男に応え
俺も手をとって立ち上がる。
あれ、もう手離していいだろ。

「ね、ねぇ君。
もう手離していいよね。」

「馬鹿か、さっきと同じように
なってもらっちゃ迷惑なんだよ。
いいからお前のツレと合流するまでは
繋いで貰うからな。後、俺の名は涼一。
フルネームは夏之瀬・涼一だ。」

何だ、そういう事かよ。
そーいうんならしょーがねぇーなー。

「何ニヤニヤしてんだ。可愛いぞ。」

「はあっ!? 
別にニヤニヤなんかしてないしっ!
つーか私の名前雫だしっ!」

可笑しい、俺は一体どうなっちまったんだ。

そんな疑問を頭で巡回させながら、
俺は涼一に裕司らの
所まで送られるのであった。

しおりを挟む

処理中です...